2007年の数々の演劇賞を総なめにした野田秀樹さんの『THE BEE』の再演です(⇒初演レビュー)。English Versionが3月に終了し、Japanese Version(日本人キャスト・日本語上演)が昨日開幕しました。東京、大阪、福岡、長野、静岡を回るツアーです。⇒静岡公演に向けての野田秀樹さんのビデオメッセージ(書き起こし)
野田さんがカッコよすぎて見とれてしまいました…!初演より演技の精度がさらに増しているように思います。上演時間は約1時間15分。上演時間が短いのも良かったです。刺激が強いので…。
前売り完売ですが、当日券は毎回発売されます。当日券の劇場での販売はありません。当日券の入手方法は、各公演日前日のチケットぴあ当日券専用ダイヤルでの電話予約のみ。⇒当日券詳細
⇒CoRich舞台芸術!『THE BEE Japanese Version』
紙、ゴムなどを使った演出および舞台美術は初演と同じスタイルです。シンプルだけれど動きがあって、先の予想がつかないのが刺激的です。
静かに、そして急に凶暴化する井戸を、野田さんは全身を使った激しい動きで表現されますが、常に冷静さを保っているのがわかります。セリフも動作もとても細やかに作ってらして、その緻密さが積み重なって、どうにも目が離せない高密度の存在感になるのではないでしょうか。あまりにかっこ良くて…(自粛)。初演同様、『2001人芝居』を思い出しました。
野田さん演じるサラリーマン井戸は、あるタイミングで被害者から加害者になってしまうのですが、その変化が私にも起こったように感じました。井戸に向かって「殺っちまえ!」とけしかけたくなるような暴力的な感情が、むくむくと自分の中から湧きあがってくるんです。しかも快感なんですよね…恐ろしいことです。
宮沢りえさんの細くて長い生足が、ちょっとどうかと思うぐらい露出してて、目のやり場に困りました(笑)。「そんなに見たいならここぞとばかりに凝視すればいいじゃん私!」「いやいや、これは見ちゃダメ!ダメダメ!」と脳内で自問するぐらいキレイでした…♪(←馬鹿)
池田成志さんのコミカルな演技が、抜群のタイミングで場面を引き締めているように思いました。貪欲な演技、というのでしょうか。シェフが一番好きでしたね。
ここからネタバレします。
巨大な蜂(BEE)が飛び回る映像の時は、照明が青白くなり、俳優の顔色も姿もガラリと変わります。出しゃばり過ぎない映像演出と照明の効果で、俳優の演技をひきたてているように思いました。紙の裏側からシルエットで浮かび上がる像も非常に効果的でした。
三面鏡を開いた井戸を、小古呂の妻(宮沢りえ)が銃で狙う場面は、鏡に反射する光が移動するのがかっこ良かった!
最後は無数の蜂の群れが舞台全体を覆います。照明が消えて暗くなり、井戸と小古呂の妻とその息子(近藤良平)は紙の下敷きになります。というより、男(池田成志)が3人の上に紙をかぶせて行くんです。大きな紙の塊に大量の小さな蜂がたかって、やがて暗転。池田さんは警部やリポーターを演じてらっしゃいましたので、この事件が警察やマスコミによって隠蔽され、大衆から忘れられていくというイメージが浮かびました。
初演でも使われていた「剣の舞」(by 尾藤イサオ)という曲は、やはりすごいインパクト。こちら↓に収録されています。
≪東京、大阪、福岡、長野、静岡≫
出演:宮沢りえ 池田成志 近藤良平 野田秀樹
原作:筒井康隆~「毟りあい」(新潮社)より~/共同脚本:野田秀樹&Colin Teevan/演出:野田秀樹/美術:堀尾幸男/照明:小川幾雄/音響・効果:高都幸男/映像:奥秀太郎/舞台監督:谷澤拓巳/プロデューサー:鈴木弘之/企画・製作:NODA・MAP 主催:NODA・MAP/東京芸術劇場(公益財団法人 東京都歴史文化財団)
【発売日】2011/02/25 一般 7,500円 / サイドシート 4,000円※ ※25歳以下の方は、東京芸術劇場でのみ、サイドシート2,000円でご購入いただけます。(入場時要身分証) 高校生割引 1,000円
http://www.nodamap.com/productions/thebee/index.html
http://www.geigeki.jp/saiji/036/index1.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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