山本卓卓さんが作・演出(出演も)される範宙遊泳の新作のテーマは“夢”。谷賢一さんが芸術監督をつとめるアトリエ春風舎のプロデュース公演第2弾です(⇒第1弾)。上演時間は約1時間30分。
「CoRich舞台芸術まつり!2012春」審査員として拝見しました(⇒110本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載しました。
⇒CoRich舞台芸術!『夢!サイケデリック!!』
■空間の使い方が巧みな実験的要素の強い演劇
くらげのようなテーブル、イス、バス停の看板など、天井から吊り下げられオブジェは現代アートのような鮮やかな存在感。照明器具そのものも装飾品のようでした。舞台奥の透明ビニールのカーテンも含め、空間の使い方が巧みだと思いました。奥の階段は当たる照明の色や具合で表情を変え、作品中の意味も変化していました(出入口、結界など)。
アイデアやイメージは個性的だと思いましたし、役者さんも一人ひとりが魅力的でしたが、1時間30分のお芝居を“夢”という1つのテーマで突き進むのは難しかったんじゃないかと思いました。
ここからネタバレします。
夢だとわかって展開を追っていくので、血液が脱脂粉乳になった女が病院に行くとか、ピンポン球の成人式といった各エピソードにはあまり興味が持てませんでした。女以外の役者さんが冷蔵庫やトイレになるのは、現実と夢との接点だったのでしょうか。
夢から現実に戻ったかと思わせて、実はまだ夢だったという仕掛けにわくわくできたのは、役者さんの演技が巧みだったからだと思います。大橋一輝さんのトイレに熊川ふみさんが座ったところが可笑しかったな~。
2役を素早く演じ分けたり、物になったり、役者さんは自分に課された役割を十分以上に果たされていたと思います。何度も繰り返される華やかなアリアの尺に合わせた演技も、稽古のたまものだろうと思いました。
大量のピンポン球が降ってきたのには興奮!しかも生きてると思って球を見るとゾクゾクしますね(笑)。踏まれてつぶれる度に「あ、死んだ!」と思ったり。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演(左から):木元太郎、山本卓卓、谷賢一
山本「保育園児のころから、自分の存在を疑ってきた。それは夢に近い。たとえば地球の裏側のブラジル人にとっては、僕の命は生きていないのと同じ。誰かに語ってもらえれば、僕が生きた心地がする。」
山本「ピンポン球は6000球あります。」
「CoRich舞台芸術まつり!2012春」最終選考作品
出演:大橋一輝 熊川ふみ 埜本幸良 山本卓卓 福原冠
脚本・演出/山本卓卓 美術監督/たかくらかずき 照明/山内祐太 音響/高橋真衣 舞台監督:石川大智 演出助手/菅原和恵 制作助手/鈴木猛丸 制作/坂本もも
アフタートーク
25日(水)【19:30】谷賢一(DULL-COLORED POP/アトリエ春風舎芸術監督) × 木元太郎(青年団/アトリエ春風舎支配人)
26日(木) 【14:00】杉山至(青年団/舞台美術家)
26日(木)【19:30】 KENTARO!!(ダンサー/振付家/東京ELECTROCK STAIRS)
28日(土)【14:00】 範宙遊泳
28日(土)【19:30】 武田俊(KAI-YOU代表/編集者)
【発売日】2012/03/15 予約:2,500円 当日:2,800円 平日お昼の回割引:各料金より500円引き 高校生割引:1,000円(全日程共通・要学生証提示) 「範宙遊泳のつくり方」ご参加コース:3,500円(一般)/2,000円(高校生以下)
http://hanchu-yuei.com
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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