庭劇団ペニノはタニノクロウさんが作・演出される劇団で、海外公演も行っています。劇団アトリエ「はこぶね」のあるマンションは今年中に取り壊されるとか。もう見おさめかもしれないと思い、なんとか千秋楽に伺いました。※2月は病気療養中でした。
いつもながら、タニノさんのフェティシズムが凝縮された、贅沢な小空間。私自身の中にある、他人には言えない欲望や妄想を、優しく温めたい気持ちになりました。
⇒ネタバレですが舞台写真あり
⇒CoRich舞台芸術!『誰も知らない貴方の部屋』
≪あらすじ≫ 当日パンフレットより
受験生の弟とその兄、彼ら二人の部屋が舞台のお話。
その日は兄の誕生日、弟は一週間後に控えた大事な入学試験の勉強をそこそこに、
愛する兄のために一生懸命奇妙なオブジエを作っている。
一方別の部屋では弟の妄想で生まれ出た分身、豚と羊の化け物も同じく兄の誕生日のための準備を手伝っている。
そこに兄が仕事から戻ってくる。
兄への偏愛に満ちた誕生日パーティーが始まる。
≪ここまで≫
おかしな世界です。不気味だけど、のどかで滑稽。幕が開いてあらわれた空間、人(怪物?)、そしてそれを眺めるごく少数の観客と、会場であるマンション…と、一気に想像すると、ますます奇妙な感覚になります。
ここからネタバレします。
男性器だらけ、でした。ドアの取っ手もチェスの駒も、みーんな。大きな白いオブジェからは、映画『時計じかけのオレンジ』で女性を殴る鈍器として使われたものを連想。知人がツイッターで「ちんこすぎた」と書かれていて爆笑。そう、ペニスというよりは“おちんちん”と言う方がふさわしい形状と存在感でしたね。
主人公(山田伊久磨)は学生服の青年で、兄の首のオブジェ(その首自体もペニスの形です)が並ぶタイル貼りの部屋で、どうやら受験勉強をしているようです。優秀な兄(飯田一期)を尊敬して愛していると言いながら、主人公は殺意も抱いています。いわゆる思春期の(タニノさんご自身の)妄想だと受け取っていいのだと思います。目に入るのはおちんちんばっかだけど(笑)。
豚と羊の部屋の窓からは森林も見えます。森は人間の深層心理を表している気がしました。BGMとともに子供の声が聴こえたり、たて笛の四重奏があったり。幼少期の無邪気で残酷な想像、欲望を、そのまま舞台にしたのだと考えると、とてもリラックスできました。常識やタブーなど、後から人が作り出したものなんて放り出して、人間の本能、野生、想像力をそのままの姿で肯定し、愛でる時間だったように思います。
出演:飯田一期 島田桃依(青年団) 瀬口タエコ 山田伊久磨
脚本・演出:タニノクロウ 構成:玉置潤一郎・山口由紀子・吉野万里雄 特殊造形:小此木謙一郎(GaRP) 宣伝美術:奥秋圭 演出助手:森準人・仮屋浩太郎 制作助手:北澤芙美子・丸山立 制作:小野塚央
【休演日】2月14日(火)、2月21日(火) 前売り2500円 当日2800円
http://www.niwagekidan.org/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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