REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2012年07月18日

SPAC・静岡県舞台芸術センター『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』06/02-23舞台芸術公園・野外劇場「有度」

 「ふじのくに⇔せかい演劇祭2012」(⇒記者発表の写真レポート)参加のSPAC15周年記念作品。『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~』はク・ナウカで2003年に上演された時に拝見して以来です。パリの劇場のこけら落とし公演として招聘されるなど、演出家、宮城聰さんの代表作の1つだと思います。

 野外劇場「有度」での上演で、小雨の中、雨ガッパを着て鑑賞。いつもは舞台になっているところに客席が作られていたので、嬉しくなって前の方に座っちゃいました。上演時間は失念。すみません。

 ⇒CoRich舞台芸術!『マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~

 ≪あらすじ≫ パンフレットより (ムーバーの役者名)を追加。
 絶世の美女ダマヤンティ姫(美加理)と勇敢な王子ナラ(大高浩一)。ふたりは、神々に祝福されて盛大な結婚式を挙げる。ナラの治める王国は栄え、二人の暮らしは穏やかに続くかと思われた。しかし、ナラを妬む悪魔カリ(横山央)の呪いによって、その幸せは打ち砕かれる。カリにとり憑かれたナラは、賭博に狂い、全ての財産を失ってしまう。とうとう、国までも弟プシュカラ(牧山祐大)に奪われ、ダマヤンティを伴って流浪の旅に出るナラ。しかし、呪いによって来る彼は、ダマヤンティすらも打ち捨ててしまう。離れ離れになったふたりは、それぞれに数奇な運命を巡り、互いを探し求める…。
 ≪ここまで≫ 

 王様とお妃様、そして神様や悪魔が出てくる祝祭劇です。色を白に統一し、日本の着物をもとにした立体的なデザインの衣裳がすっごくかっこいい!
 中央から客席下手へと伸びるL字型の舞台になっており、中央前方の席に座った私は、前方と左側を交互に眺めることになりました。役者さんや演奏者がとても近くて楽しかったです。

 登場人物の動きを担当するムーバーと、セリフを語るスピーカーに分かれる、2人1役というスタイルです。ク・ナウカ時代から宮城さんと創作してきた俳優が出演されていて、安定感、重量感は抜群。美加理さんがカクンと首を曲げて立っている姿が美しかったな~。

 失踪した王を探して、妻のダマヤンティが森の中をさまよいます。実際に原始林の中で上演されていることが、とにかく贅沢!色んな動物が登場するのですが、自然の風と雨の中ゆえの臨場感があったように思います。舞台の床が雨で濡れているので、激しい動き(ジャンプなど)はちょっと心配でしたが、水蒸気のスモークがいい効果になっていました。

 ここからネタバレします。

 語りは阿部一徳さん。何もかも阿部さんがしゃべっていると言っていいぐらいのセリフ量でした。「レバ刺し食べたい!」には笑ったな~。とはいえムーバーがセリフをしゃべることもあり、たまに阿部さんと会話をするのがいいスパイスになってました。

 悪魔カリが三枚目のポジションを担っていて全然“悪魔”らしくなかったり、「シェー!」と昭和のギャグをかましたりするのは、好き嫌いが分かれるところかもしれません(笑)。私は人も動物も悪魔も神も、全部含めて、命を寿ぐお芝居なのだと受け取りました。あまり頭で考えずに、ただそこにある豊かな営みを浴びた感触です。とても贅沢で、幸せな時間でした。


 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:長谷川逸子氏(建築家)+宮城聰 聴き手:大岡淳
 
 長谷川さんは2度目の鑑賞だったようです。最初は中央から、2度目は舞台上手の客席から鑑賞し、残念ながらこの回は声が聞こえづらかったとのこと。座る場所によって感想が違うのかもしれません。

 『マハーバーラタ』はパリのケ・ブランリー国立博物館内クロード・レヴィ=ストロース劇場のこけら落とし公演として招聘されました。宮城さんは同劇場の建築家の意図どおりには、空間を使わなかったそうです。日本での祝祭というと、盆踊りのやぐらのように、聴衆が演者を仰ぎ見る構造が一般的かもしれません。でもヨーロッパでは、演劇の起源がギリシア劇だと考えると、すり鉢状の劇場でステージに立っている演者を、観客が上から見下ろす構造になるんですよね。その違いについてのお話が興味深かったです。


SPAC15周年記念作品 ふじのくに⇔せかい演劇祭2012
出演:阿部一徳(語り)、赤松直美、泉陽二、いとうめぐみ、伊比井香織、大内米治、大高浩一、大多和芳恵、日下範子、黒須芯、桜内結う、鈴木麻里、鈴木真理子、大道無門優也、たきいみき、寺内亜矢子、中野真希、仲村悠希、前田知香、牧山祐大、美加理、山下ともち、山田裕子、山本実幸、横山央、吉植荘一郎
演出:宮城聰 台本:久保田梓美 音楽:棚川寛子 空間デザイン:木津潤平 照明デザイン:大迫浩二 照明:小早川洋也 音響:水村良 小嶋純真 山﨑智美 衣裳デザイン:高橋佳代 衣裳:駒井友美子 岡村英子 大岡舞 畑ジェニファー友紀 大内智美 小道具:深沢襟 小道具製作助手:佐藤洋輔 ヘアメイク:梶田キョウコ 古城雅美 早川夏未(アシスタント) 舞台監督:村松厚志 内野彰子 舞台:山田貴大 和田沙緒理 演出助手:中野真希 字幕翻訳:スティーブ・コルベイ 字幕操作:西尾祥子 バンドミストレス:寺内亜矢子  制作:大石多佳子 尾形麻悠子 製作:SPAC-静岡県舞台芸術センター 後援:インド大使館
【発売日】2012/04/15 一般大人:4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
☆SPACの会特典のほか、ゆうゆう割引、早期購入割引、みるみる割引、ペア/グループ割引料金があります。
http://www.spac.or.jp/f12mahabharata.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2012年07月18日 11:55 | TrackBack (0)