新国立劇場演劇研修所第6期生のはじめの試演会です。『抱擁家族』は1965年に谷崎潤一郎賞を受賞した小島信夫さんの小説で、八木柊一郎さんによって脚色されて1971年に青年座で初演されました。
1960年代の日本の家族、というか夫婦を描いていますので、2012年の今だと首をかしげるエピソードも多々あるのですが、最後まで観て、ああ、アメリカと日本のことだったのかと、腑に落ちました(公式サイトの解説にすでに書いてありましたね…)。
ダブルキャスト公演で、初日は“チーム抱擁”を拝見しました。“チーム家族”は千秋楽に伺います。上演時間は約3時間弱(途中休憩1回を含む)。
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≪あらすじ≫ 公式サイトより
中年夫婦と2人の子供に家政婦という中流インテリ家庭の三輪家。
妻が年下の米兵と関係をもったことから物語は展開する。
家の新築、乳がんにおかされた妻、そして妻の死。残された夫は……。
≪ここまで≫
黒(もしくは灰色?)を基調とした暗い目の抽象的な空間です。上手にはダイニングと台所、下手奥にはベッドルーム、中央はリビングだったり喫茶店だったり。舞台中央奥に柱のようなものがあって、上部に小さな家の模型がポツンと置かれています。模型は屋根の上から眺める角度で設置されているので、観客は登場人物らが暮らす家を空から俯瞰するような視点も得られます。
3時間弱という上演時間の長さ自体には不満はないのですが、いったい何を見せたい(表現したい・伝えたい)お芝居なのかが、わかりづらかったです。3時間もかけて、やりたいことは何だったのかなと考えてしまいました。
選曲がなんとも不思議で…鳴る度に「なぜこのような曲を?」とひっかかりました。舞台下手でパーカッションらしきものやキーボードでの生演奏があり、効果音としてもかなりの活躍。曲と演奏が交ざるのが良かったです。それにしてもラストの曲の意図はいったい…奇抜すぎるように思いました。
演技も全体的に固かったですね。細かいことですが、場面転換がスムーズだとは思えない箇所も散見されました。ざっくり言ってしまうと、初日はまだ完成していなかったのかな~という印象です。
なぜ若い研修生15人のためにこの戯曲を選んだのかしらと考えちゃいましたね。高校生ぐらいの子供が2人いる中年夫婦(夫は45歳)が主人公で、独白も会話も含め、基本的に夫がしゃべり続けます。膨大なセリフ量で大変な役だと思いました。もちろん、どんな役でも「大変」でしょうけど、比重があまりに高いんですよね。発表会で役者さん1人が背負う責任が大きすぎるというか。
最後の15分で「ああ、そうだったのか」とやっと受けとめられたような気がしました。女性についての考え方があまりに古風、というか懐古趣味というか、昔の話だなと受け取らざるを得ないのですが、家庭のあり方については、もしかすると今も同じかも…と感じたんです。ということは、40年変わってないってことでしょうか…?
ここからネタバレします。
アメリカ兵のジョージ(梶原航)は片言の日本語しか話せないという設定ですが、舞台上では常に日本語で話します。英語の時は英語でしゃべっちゃって良かったんじゃないでしょうか…どうにも居心地が悪かったです。
自宅で妻と寝たジョージと再び会ってみたり、新居ができたら招待してみたり…「オマエラ(夫も妻も)気持ち悪いんだよ!」と叫びたくなります(笑)。
妻の死後、三輪宅には10年アメリカに住んでいたという若い男性山岸がいそうろうし、息子の友人も転がり込んで、あつかましい家政婦も復帰します。死者である妻と夫が話すシーンが並行するのは面白いですね。それにしても、一体、この三輪俊介という男性は、何者なのか…「魚の目をしてる」と言われてもしょうがないです。彼が「日本」なんでしょうね。
良かったのは三輪家の人々とジョージが「間を埋めるために笑う」シーン。そして終盤の、黒いワンピースの挿絵作家(落合千恵)に主人公の三輪俊介(木村圭吾)が電話するところ。自分のことしか考えていないから周囲が見えておらず、必死ゆえにあまりに無粋。笑ってしまいました。
Aキャスト(チーム抱擁)・20日(金)18:30開演・21日(土)13:30開演
Bキャスト(チーム家族)・21日(土)18:30開演・22日(日)13:30開演
【チーム抱擁 出演】三輪俊介(英文学者・翻訳家):木村圭吾 時子(俊介の妻):西井裕美 良一(俊介の息子):野口雄作 ノリ子(俊介の娘):杉山みどり みちよ(あつかましい家政婦):沖田愛 ジョージ(時子と浮気をするGI):梶原航(5期修了生) 山岸(アメリカ帰りの若者):細川慶太 木崎(良一の友人):玉田裕太 老婆(時子と同時期に入院してた):南名弥 老いた尼僧:南名弥 若い尼僧:森川由樹 付添婦:池田朋子 若い女1(百貨店の店員):森川由樹 若い女2(百貨店でガウンを売る店員):横山友香 医者:田部圭介 芳沢ちか子(俊介と見合いをする挿絵画家):落合千恵
原作:小島信夫 脚色:八木柊一郎 演出:西川信廣 音楽:後藤浩明(生演奏) 美術:小池れい 照明:佐々木朗 音響:黒野尚 衣装:山田靖子 ヘアメイク指導:我妻淳子 演出助手:梶原航 舞台監督:村田明 演出部:鈴木政憲 板倉麻美 安田美和子 (第8期生 池田碧水 滝沢花野 西岡未央 今野健太 永澤洋) 制作助手:吉田友香 長川秀美 大道具:俳優座劇場舞台美術部 森島靖明 小道具:高津装飾美術 宮沢洋一 研修所長:栗山民也 制作:新国立劇場
【発売日】2012/06/03 A席 2,500円 B席 1,500円
http://www.nntt.jac.go.jp/training/20000659_training.html
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/30000116.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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