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しのぶの演劇レビュー
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2012年07月25日

ワンツーワークス『みんな豚になる-あるいは「蠅の王」-』07/20-26吉祥寺シアター

 古城十忍さんが作・演出される劇団ワンツーワークスの再演公演です。ウィリアム・ゴールディング作「蠅の王」を現代日本の会社を舞台に脚色された作品です。初演の情報はこちら。上演時間は約2時間弱。

 新国立劇場演劇研修所5期生(修了生)が2人出演されているので観に行きました。古城さんは新国立劇場マンスリー・プロジェクトのリーディングの演出と、昨年の5期生シーンスタディの演出もされていたんですね。

 この作品とは関係ないですが、ロビーで販売されていたジョン・パトリック・シャンリィの戯曲本を購入しました。シャンリィ戯曲は『お月さまにようこそ』も『ダウト』も持っています。

マンハッタンの女たち
ジョン・パトリック シャンリィ
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 ⇒CoRich舞台芸術!『みんな豚になる-あるいは「蠅の王」-

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 パワーハラスメントの実態に迫る
 ある会社の新規プロジェクトに各部署から8人の社員が集められる。元企画推進局次長はリーダーとして意欲に燃えるが、営業三課から配属された女性幹部も「リーダーを任されている」と言う。かくして、プロジェクト・チームはたちまち2分され、徐々に対立が起こり始め、やがて仕事の捗らない者、コミュニケーションのうまくとれない者への、執拗な言葉の暴力が横行するようになる。果たしてチームの面々は無事にプロジェクトを達成することができるのか――。
 ≪ここまで≫

 会社内のパワハラ、というか、いわゆるいじめを描いていました。タイトルどおり“豚”を登場させるのが面白いです。腕をカク、カクと素早く動かしたり、ピタリと息の合ったストップモーション、スローモーションなどの身体表現を採り入れて、ストーリー・テリングだけに終わらない演出も良かったです。
 いかにもな差別発言や悪口が飛び出しますが、デフォルメした演技で見せてくれますから、いじめがリアル過ぎなくていいですね。客観する視点を持ったまま観続けられたのも、私には良かったです。

 ずらりと並ぶ業務用デスクが学校の木製の机にも見えてきました。会社内で大人が経験していることは、子供が通う学校でも起こるものだと思います。

 下記に内田樹さんのブログ「いじめについて」(2012年7月12日)から一部抜粋して引用します。

 私の見るところ、「いじめ」というのは教育の失敗ではなく、むしろ教育の成果です。  子供たちがお互いの成長を相互に支援しあうというマインドをもつことを、学校教育はもう求めていません。むしろ、子供たちを競争させ、能力に応じて、格付けを行い、高い評点を得た子供には報償を与え、低い評点をつけられた子供には罰を与えるという「人参と鞭」戦略を無批判に採用してる。  であれば、子供たちにとって級友たちは潜在的には「敵」です。同学齢集団の中での相対的な優劣が、成績評価でも、進学でも、就職でも、すべての競争にかかわってくるわけですから。  だから、子供たちが学校において、級友たちの成熟や能力の開花を阻害するようにふるまうのは実はきわめて合理的なことなのです。  周囲の子供たちが無能であり、無気力であり、学習意欲もない状態であることは、相対的な優劣を競う限り、自分にとっては「よいこと」だからです。  そのために、いまの子供たちはさまざまな工夫を凝らしています。「いじめ」もそこから導き出された当然の事態です。  「いじめ」は個人の邪悪さや暴力性だけに起因するのではありません。それも大きな原因ですが、それ以上に、「いじめることはよいことだ」というイデオロギーがすでに学校に入り込んでいるから起きているのです。

 ここからネタバレします。

 出世したいがためにプロジェクトで成果を挙げようとしますが、結局は会社が倒産してしまいます。そのプロジェクトの目的は在庫処分なので、集められた社員全員が最初から「棄て石」だったんですね。いじめる人も、いじめられる人も含め、そのプロジェクトメンバー全員が社内では“悪い見本”だったのでしょう。舞台上で行われていたコミュニケーションを反面教師にすればいいんだなと思いました。

 女性幹部(武田竹美)とその恋人であろう若い男性部下(片桐レイメイ)が、一瞬だけイチャつく場面があって、そこが可笑しかったです。オフィスでこっそり年上の女性に甘えてみたら、ピシっときつい言葉を返されて、かえってその若者はデレデレと喜ぶんだもの(笑)。


 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 テーマ:「いじめっ子?いじめられっ子?」
 出演:奥村洋治×越智哲也×林田航平


出演:奥村洋治(ワンツーワークス) 藤敏也 武田竹美 関谷美香子(ワンツーワークス) 越智哲也(ワンツーワークス) 増田和(ワンツーワークス) 片桐レイメイ 林田航平
脚本・演出:古城十忍(ウィリアム・ゴールディング「蠅の王」より)  美術=礒田ヒロシ  照明=磯野眞也  音響=黒澤靖博  舞台監督=尾崎裕  衣裳=加島博美  演出助手=谷本健志  小道具=日暮一成 イラスト=古川タク デザイン=西英一 スチール=富岡甲之  票券=ぷれいす 協力=タクンボックス  アイズ  バックステージ  Gプロダクション 一般社団法人 職場のハラスメント研究所 制作=藤川けい子   製作=(株)オフィス ワン・ツー
【発売日】2012/05/28 全席指定 前売4,000円  当日4500円  高校生以下2,500円
※受付開始および当日券販売開始は開演の1時間前、開場は30分前です。 ※10歳未満の児童はご入場いただけません。
http://www.onetwo-works.jp/nextstage_buta.html


※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年07月25日 14:06 | TrackBack (0)