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2012年07月28日

松竹・Bunkamura『コクーン歌舞伎第十三弾「天日坊(てんにちぼう)」』06/15-07/07 Bunkamuraシアターコクーン

 1994年に始まったコクーン歌舞伎はなんと18年目になるんですね。約150年前の歌舞伎台本を宮藤官九郎さんが新たに脚本化し、串田和美さんが演出・美術を手掛けます。
 タイトルロールの六代目中村勘九郎さんはじめ、メインキャストには若手がずらり。白井晃さんら歌舞伎俳優ではない方々が、かなり重要な役で出演されていました。上演時間は約3時間25分(途中休憩20分を含む)。

 チケットはそれなりのお値段ですが、全く舞台に触れたことのない方に迷いなくお薦めできる演劇というと、今ならコクーン歌舞伎かな~と思います。⇒昨年のレビュー
 ※私が観るのは基本的に首都圏の現代演劇が中心で、伝統芸能やミュージカルはあまり観ないんですけどね。

 途中休憩中はロビーでおそうめんをいただきました。美味しかったです~♪ 客席でも食べられるんだけど、シアターコクーン内で飲食するのは緊張しちゃうので(苦笑)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『コクーン歌舞伎 天日坊

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。
 鎌倉時代。木曽義仲が将軍・源頼朝の命令によって討たれた後、都で化け猫騒動が起こる。義仲に娘を嫁がせていた猫間中納言が謀反の疑いを掛けられ自害、その怨霊が帝の愛猫に乗り移っていたのだ。北条時貞と修験者・観音院の力で化け猫は退治された。観音院の弟子、法策は「生き延びよ」という化け猫の不思議な一言を聞く。法策はふとしたことから、飯炊きのお三婆さんの死んだ孫が将軍・頼朝のご落胤であることを知った。証拠の品は頼朝自筆の御書と三条小鍛冶の短刀。拾われた子であり、身元も知れず、親族もいない法策は、ご落胤になりすますことを決意し、お三を殺して証拠の品を奪う。悪事を重ねながら鎌倉へ向かう途中、盗賊・地雷太郎やその女房で女盗賊のお六たち一味と出会い、殺されそうになるが、開き直って、自分の素性と企みを明かし、加担しないかと持ちかける。その時、お六が法策の本当の素性を見抜いた。驚く法策だが、その素性ゆえに盗賊たちも結束し、法策は天日坊と名を変えて、一同は、鎌倉へ乗り込むのだった――
 ≪ここまで≫ 

 箱型の演技スペースが山車のように移動して場面転換。箱の中の大道具、小道具とともに箱の奥の壁全体に掛けられている布の絵が変わるのが面白いです。書き割の役割を果たしているんですね。絵には「~~の段」といった文章が書かれていて、その場面で起こることの説明がされています。

 化け猫の怨念、捨て子の正体、源氏と平氏の因縁など、興味をそそられるエピソードが続々と盛り込まれていきます。物話は複雑になり、歌舞伎ならではのセリフも多いのですが、わかりやすい!この“わかりやすさ”に感動します。宮藤さんの脚色と串田さんの演出は幅広い客層に開かれているんですよね。そして歌舞伎俳優がプロの技でそれに応えています。

 タイトルロールの中村勘九郎さんは堂々たる、華のある主役でした。この大舞台を背負って、なんて立派なんだと勝手に感心しきりでした。
 中村七之助さんの女形は美しいだけでなく、声も動きもキレがあって心奪われます。特に機敏かつ重みのある殺陣にゾクゾクしました。

 勘九郎さん、七之助さんのお父様である中村勘三郎さんの、初期の食道がんの手術は成功だったそうです!ゆっくり静養なさって、また舞台に戻ってきてくださいますように。

 ここからネタバレします。

 動きが驚くほど遅いおばあさん(片岡亀蔵)は強烈でしたね(笑)。腰が直角に曲がったまま。セリフに体が追いつかないところは本当に笑ってしまった。勘九郎さんはボケつっこみもお上手。

 天日坊を名のった法策(中村勘九郎)は、お六(中村七之助)と地雷太郎(中村獅童)とともに戦うことになります。勘九郎さんが困ったような、怖がったような表情で、心に大きな迷いがあるまま必死に剣を振り回すのは、お六と地雷太郎とは対照的でした。むせび泣くようなトランペットの音色が響く中、「俺は誰なのか」と激しく自分に問いながら走る姿が、心に痛くて、強く印象に残りました。

 カーテンコールで出演者を見ていて、若い俳優がずらりと並んでいることに、いい意味で、軽いショックを受けました。歌舞伎界はこうやって世代交代を仕掛けてきたんですよね。

≪東京、長野≫
【出演】法策 後に天日坊=中村勘九郎 人丸お六=中村七之助 猫間光義=市村萬次郎 お三婆/赤星大八=片岡亀蔵 北條時貞=坂東巳之助 傾城高窓太夫=坂東新悟 越前の平蔵=近藤公園 観音院/鳴澤隼人=真那胡敬二 久助=白井晃 地雷太郎=中村獅童 
坂東橘太郎 中村小三郎 澤村國久 中村蝶紫 片岡正二郎 三松明人 内田紳一郎 大月秀幸 中村仲之助 中村いてう 中村仲四郎 中村獅一 中村獅二郎 坂東大和 坂東彌風 土橋慶一 梶浦昭生 山岡弘征 三上剛 本田悟司 三原伸之 川守田政人 斎藤皓允 小谷真一 沢村恭輔 井上象策 押見啓太 岸本康太
トランペット:平田直樹 茶谷将彦 上石統 湯本淳希 田中充 田沼慶紀 エレキギター:佐藤純朗 ドラム パーカッション(交互出演):熊谷太輔 関根真理
原作:河竹黙阿弥「五十三次天日坊」 脚本:宮藤官九郎 演出・美術:串田和美 照明:齋藤茂男 音響:市来邦比古 音楽監督:平田直樹 音楽監督助手:片岡正二郎 立師:坂東橘太郎 田尻茂一 前田悟 狂言作者:竹柴彰三 竹柴潤一 竹柴康平 技術監督:センターラインアソシエイツ 演出助手:神野真理亜(神の左は示) 美術助手:原田愛 附打:山﨑哲 舞台監督:藤森條次 大道具:ステージフォー 美術工房拓人(松本邦彦) リンペット(林正) 小道具:藤浪小道具(関慶人) 衣裳:三茶小町(中野かおる) 松竹衣裳(高橋孝子) 日本演劇衣裳 かつら:日本演劇かつら 床山:東京鴨治床山(川口知昭) 光峯床山(谷山しほ) 造型制作:ゼペット(福田秋生) 特殊効果:アトリエカオス(田中義彦) 協力:渋谷ステージセンター 制作:岡崎哲也 山根成之 橋本芳孝 住井浩平 谷口さやか [主催]松竹株式会社/Bunkamura [製作]松竹株式会社
【発売日】2012/04/22 1等平場席\12,500 1等椅子席\12,500 2等席\9,000 3等席\5,000(税込)
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/12_kabuki.html
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/12_kabuki/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年07月28日 21:00 | TrackBack (0)