野木萌葱さんが作・演出されるパラドックス定数の代表作の再々演です(⇒初演レビュー、再演レビュー)。タイトルどおり、ずばり東京裁判とはどんな裁判だったのかを、男たちの会話劇で教えてくれます。ご覧になったことにない方はぜひ。上演時間は約1時間50分。
初演は「CoRich舞台芸術アワード!2007」のグランプリに選ばれています。再演時にはメルマガ号外を発行しました。今回の公演は、きたく子ども劇場の中高生部例会に選ばれています。
初演、再演そして再々演の3度とも同じ劇場にこだわった作品です。1Fは通常席、2Fは傍聴席となっています(料金は同じ)。傍聴席は天井側から出演者を俯瞰できる特別な席です(枚数限定)。チラシ表面がちょうど俯瞰した時の舞台写真になっています。
⇒CoRich舞台芸術!『東京裁判』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。改行を一部変更。
おそらくあと一時間もすれば、
此処は傍聴人で溢れ返るだろう。
煌々と照らされたその空間の片隅に、彼ら五人の席がある。
弁護団主任弁護人。
「人類の知る最重刑」を求刑する検察団を相手に、彼らは真っ向から勝負を挑む。
個人の尊厳をかけた、言葉の戦い。
1946年、東京、市ヶ谷。
極東国際軍事裁判所本法廷。
祭りの落とし前をつけるべく、世紀の裁判が開廷する。
≪ここまで≫
脚本が改訂され、上演時間も長くなっています。演技の方法にもずいぶん変化が見られました。特にオープニングは、役者さんの表情が豊かで全体の雰囲気も変わっていて、驚くと同時に引きこまれました。
中盤で、ある登場人物が演技とセリフでしめす意味がわからなくなり、少々長く感じましたが、終盤ではそれぞれの熱弁で東京裁判の正体を暴いてくれました。※この作品はフィクションです。
ここからネタバレします。
鵜沢(西原誠吾)が何をしたいのかがよくわからなかったです。コロコロと態度も言うことも変わるのに、その根拠が見えなくて。私が観たのは3ステージ目でしたので、今は良くなっていることと思います。
東京裁判の正式名称は極東国際軍事裁判。日本人戦犯らの主任弁護団5名は、この裁判自体が裁判の体をなしていないことを証明しますが、全く受け入れられません。そもそも戦勝国が戦敗国を裁く不公平なものだからです。
ヒットラーが自殺して無政府状態になってから首都を占拠されたドイツは、無条件降伏をしました。そのドイツが裁かれた裁判がニュルンベルク裁判です。戦勝国はこの東京裁判で、日本は“平和に対する罪”、“人道に対する罪”を犯したと訴えるのですが、それらはニュルンベルク裁判で生まれた罪なので、事後法です。また、日本はポツダム宣言を受諾して降伏したのでいわゆる“無条件”の降伏はしていませんから(解釈は分かれます)、ドイツと同じに扱うのも間違いです。
戦勝国もまた“人道に対する罪”は犯しています。たとえば広島、長崎への原爆投下などがそうです。
私は「当時の日本はドイツほど悪くない」などと言いたいわけではありません。ただ、私たちはあまりに東京裁判および戦後処理について関心がなさすぎたのではないかと思います。井上ひさしさんの「東京裁判三部作」でも学ばせていただきました。今はこの本↓を読んでいます。
パラドックス定数 第29項 東京バビロン提携公演
出演:植村宏司 西原誠吾 井内勇希 今里真 小野ゆたか
脚本・演出:野木萌葱 照明:伊藤泰行 小道具:櫻井徹 撮影:渡辺竜太 反則:副島千尋 制作部:たけいけいこ 今井由紀 提携:東京バビロン 企画製作:パラドックス定数
【発売日】2012/06/24 【先行予約】6月24日(日)0時から23時59分まで パラドックス定数公式HPにて ・1F通常席・2F傍聴席ともに、2500円 【一般予約】7月1日(日)より ・1F通常席・2F傍聴席ともに、 前売3000円、当日3200円 未就学児は入場できません
http://www.pdx-c.com/?cat=4
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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