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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2012年09月04日

東京芸術劇場『東京福袋(9月3日)』09/02-09東京芸術劇場シアターウエスト

 東京芸術劇場のリニューアルを記念したショーケースの1週間。『東京福袋』のどの回も一回コッキリのパフォーマンスです。私は9月3日に伺いました。出演は劇団コープス、珍しいキノコ舞踊団、柿喰う客、東京デスロック(上演順)。上演時間は途中休憩を含んで2時間強。

 コープスは『ひつじ』を上演しているカナダの劇団です。そういえば今日だけ『ひつじ』は休演でしたね。東京デスロックにはSPAC芸術総監督の宮城聰さんが出演!お話を聞けて本当に幸運でした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『東京福袋

 ここからネタバレします。メモしたことの正確さは保障できません。ごめんなさい。

●劇団コープス(CORPUS)
 Performers: Micheal Caldwell, David Danzon, Akina Johnson, Keiko Ninomiya and Matt O'Connor Original concept and choreography: Sylvie Bouchard and David Danzon Directed by David Danzon  ツアーマネジャー:さくら こりん 舞台監督:夏目雅也 協力:カナダ大使館

 演目は作年も観た『飛行隊(A Flock Of Flyers)』でした。うまいな~。キャプテン・フィーフィーとして飛行隊の一員になった男性、ありがとうございました!
 日本語訳が変わってましたね。「カナダには飛行機はない。でも飛んでみせる!」

●珍しいキノコ舞踊団『珍しいキノコダンス』
 出演:山田郷美 篠崎芽美、茶木真由美、梶原未由、伊藤千枝 振付・構成・演出:伊藤千枝 演出補:小山洋子

 とっても久しぶりに拝見。皆さん、すごく筋肉質になられたような!長年活動されてますものね。
 最初は衣裳も選曲も含め可愛らしいなと思っていたのですが、徐々に音楽に当て振りをしてるように見えてきて退屈に。篠崎芽美さん(青い上着に幅広パンツの衣裳)は踊って踊って、あたたまってくればくるほど、表情も体も美しくなっていくようでした。終盤は彼女ばかり見ていたように思います。

 ≪休憩≫

●柿喰う客『いまさらキスシーン』 ⇒過去レビュー
 出演:玉置玲央 作・演出:中屋敷法仁

 初演よりずっとグレードアップしてました~。面白かった~。女子高生を男性が演じる時点でフィクションなので、ストーリーが急進展したり驚くほど過激になっても、観客が即座に想像力を働かせて一緒に飛んでいけるんですよね。
 超絶早口やジャンプなど、玉置さんの身体能力の高さに魅せられました。一人語りで世界を立ちあげて行く演劇の力も感じさせてくれて、観客が言葉の意味を咀嚼して、笑ったり考えたりする時間的な余裕も与えてくれたのが嬉しかったです。玉置さんと一緒に演劇を味わえた実感がありました。
 ある事件が起きた瞬間に暗転(?)して、じわーーーーーーっと、かすかに明るくなっていく照明が良かったです。舞台中央の玉置さんがうっすらと残像のよう見え続けました。

●東京デスロック『Counseling カウンセリング』
 出演:宮城聰(SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督) 多田淳之介(東京デスロック主宰/富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ芸術監督) 制作:服部悦子 演出助手:橋本清

 埼玉の公共劇場の芸術監督(多田淳之介)と静岡の公共劇場の芸術監督(宮城聰)が、東京の公共劇場のリニューアル企画に出演し、東京での芸術活動についてトーク。
 キラリ☆ふじみで芸術監督として働きながら、国内の東京以外の地域および海外で劇団公演を行ってきた多田さんは、来年に東京公演を再開させます。東京で演劇を上演することについて今、多田さんが思っていることをお話しされ、それに対して(カウンセラーとして)宮城さんがご自身の考えを述べられました。あ~ものすごくスッキリ!さすがは宮城さん。心洗われる思いがしました。私もカウンセリングを受けちゃった♪

 宮城「村落共同体の演劇と都市の演劇は似て非なるもの。村落共同体の演劇は、演者も観客も、そこにいる人が“同じ”であることを確認するもの。都市の演劇はギリシア時代からすでにあったと思う。価値観の違う人がいる都市で(もしかすると家庭内でも)、人々がひとつの芝居を見ると、反応は色々になる。その場にいろんな奴がいるのが面白い、というのが都市の祭り。その場にいる人たちがそれぞれに違う価値観を持っていることを楽しんじゃおうというテクニック、仕掛け。いわば高度な芸術。
 ところが矛盾がある。ク・ナウカ時代から前衛だったり先端的といわれる舞台を作ってきた結果、劇場には“先端的な演劇を観るのが好き”な人が集まるようになった。だから価値観がそれほど違わない。客席にいるのは世界的に見れば極めて恵まれた、極めて少ない数の人たち。それってどうなんだろう。東京にはさまざまな人が集まっているはずなのに、地方の方がお客さんが多様。」
 多田「都市部だと同じような思考を持つ人が集まる傾向がある。色んな地域に行ったが、京都、神戸などもそう。」

 宮城「観客が自分の表現を縛ると考えるのは虚妄。私の経験上、自分の芝居は変わらない。どこに住んでもつくるものは変わらない。静岡でつくっても“静岡ならでは”にはならない。どこにいてもそこが自分のふるさととは思えないのがアーティスト。作品をつくることは、自分のふるさとを殺していくこと。」

 宮城「ものをつくることで、行った場所を面白くできればと思う。東京でやることで(批評される際に)座標軸の中に位置づけされたくないという気持ちはあった。今考えると、東京をもっと面白くできるなら(やっても良かった)。ある場所を人が行きたい場所にすることに、アーティストとして少しでも寄与できるなら。東京で公演をすることを、僕はことさらに避けなくてもいいと思ってる。」

 宮城「静岡に住んで初めてわかったことがあって。静岡は東京に比べて総じて豊か。たとえば住む家の広さとか。でも変な人が暮らしづらいんです。変な人が居づらくなっている。東京は変な人、居放題。東京以外でも変な人がいられるようにすること(に寄与したい)。でないと今は人材の一極集中です。昔はインフラの一極集中と言われた。それが情報の一極集中となり、人材の一極集中に。今はインターネットがあるから情報の一極集中は緩和されたけれど、人材は?(まだ東京に集中してる) あらゆる地域が色んな人が住める場所になることの役に立ちたい。」

 宮城「東京は日本の中では“面白い”“行ってみたい”場所だけど、アジアの中ではどう?ちょっとヤバイんじゃない?アジアの他の国から“あそこなら自分もいられる”と思われているか?」
 多田「そうですね、ソウルとかのほうが面白そう。」
 宮城「上海やシンガポールもね。東京のアーティストはもっとがんばらないと。」

 宮城「東京でク・ナウカで活動をしている時から、一年の半分は海外で公演をすることを目標にしていて、それは達成してた。2つ理由があって、まず演劇という前提がない人たちに作品を見てもらいたかった。芸術のポジションが確立していない場所(国や地域)は、世界にはまだまだいっぱいあるんです。僕の作品は東京では先鋭的だと言われるものだったけれど、たとえば敦煌だと大衆演劇というか、ホテルの宴会場でやるような作品だったんです(笑)。そうやって、自分が固まらなくて済むように。変わっていく契機を与えたかった。」


東京芸術劇場リニューアル記念
【発売日】2012/07/28 一般 前売3,000円/当日3,500円 高校生割引 1,000円
<パフォーマンス>袋
9月2日(日)17:00 昨日の祝賀会、酒井幸菜、鉄割アルバトロスケット、中野成樹+フランケンズ
9月3日(月)19:00 柿喰う客、劇団コープス(カナダ)、東京デスロック、珍しいキノコ舞踊団
9月4日(火)19:00 アマヤドリ、表現・さわやか、冨士山アネット、モモンガ・コンプレックス
9月5日(水)19:00 近藤良平、3軒茶屋婦人会、吹越満、山田広野
9月6日(木)19:00 田上パル、範宙遊泳、モダンスイマーズ、ロロ
9月7日(金)19:00 サスペンデッズ、ジエン社、DAZZLE、はえぎわ
<リーディング>袋
9月8日(土)14:00 <「自作自演」リーディング> 前田司郎×町田康
9月8日(土)19:00 <「自作自演」リーディング> 西村賢太×本谷有希子
<演芸>袋
9月9日(日)17:00 東 京太・ゆめ子、三遊亭小遊三、春風亭小柳枝、瀧川鯉昇(50音順)
<パフォーマンス>袋:持ち時間は各団体25分。「自作自演」は30~40分ずつぐらい自作を朗読し、そのあとに対談。
芸術監督:野田秀樹 技術監督:白神久吉 技術統括補:尾中孝次 舞台監督:谷澤拓巳 久保勲生 照明コーディネート:乳原一美 照明操作:小田つばさ 唐沢千弥子 崎山直子 小嶋伸一(六工房) 音響コーディネート:末廣友紀 映像:岸本智也(Luftzug) 東京芸術劇場技術スタッフ:鈴木久仁日呂 秋山佑子 志賀正 高山智弘 阿部桃子 音響:齊藤泰邦 小島慎司 プログラム・コーディネート:徳永京子 宣伝美術:柳沼博雅(GOAT) 広報:藤井満里子 小林尚美 票券:佐島めぐみ 仲田佳世 制作:前田圭蔵 中山静子(quinada) 古田佳代 主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 東京都/東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)/豊島区 助成:平成24年度 文化庁 地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ
一般 前売3,000円/当日3,500円 高校生割引 1,000円 ※特典付チケット:一般3,000円(前売のみ・枚数限定・座席選択不可) ※未就学児入場不可 ※高校生割引は東京芸術劇場ボックスオフィスにて、前売のみ、一般発売より取扱い。(枚数限定・要学生証提示)
http://www.geigeki.jp/theater/006/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年09月04日 01:07 | TrackBack (0)