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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2012年10月02日

音楽劇『ファンファーレ』09/28-10/14シアタートラム

 『わが星』のメンバーが集まった新作音楽劇です。世田谷パブリックシアター、三重県文化会館、高知県立美術館、水戸芸術館という複数の公共ホールが主催する公演という意味でも大注目ですね。上演時間は約2時間10分(途中休憩15分を含む)。 ⇒Facebookページ

  美術、衣裳、物語などからパっと浮かんだのは、オペラ『魔笛』(仮タイトルでしたね)と舞台『ドリトル先生と動物たち』。音楽の比重がかなり高い音楽劇でした。最小単位の音(「あ」とか「ド」とか)の集合(=音楽)で、世界をあらわそうとする、壮大な試みなのだと思います。私は音楽に疎いので良しあしはわからないですが、三浦康嗣さんの音楽はサラリと明るいけれど常に憂いとともにあるところが、とても好きです。

 劇場入り口前のスペースが物販コーナーになっていました。装飾が凝ってて嬉しいですね。
20121001_fanfare_entrance.JPG

 ⇒CoRich舞台芸術!『ファンファーレ

 前半は「一体この舞台は何なのかしら…」と戸惑ったままだったんですが、休憩を経て最後へと近づいて行くうちに、どうしようもなく悲しくてたまらなくて、明るく歌い踊る祝祭ムードの中、涙、涙でございました(変な客だったろうな…汗)。昔も今も未来も、人間の人生なんてすっごくくだらなくて。誰かと声を出してそれを歌にして、一緒に全身で感じ取って楽しいと確認できたら、それ以上の幸せなんてないのかもしれない。でもそれはその瞬間だけだから、ずっと続くわけではないので、人間は常に淋しくて、悲しい存在なのだと思います。パフォーマンスが明るく元気に盛り上がれば盛り上がるほど、内包された悲しみが強く伝わってきたんですよね。この作品の3人の演出家(柴幸男、三浦康嗣、白神ももこ)の優しさを感じました。

 ファーレという少女が主人公の物語は、子供のころに読んだ絵本やおとぎ話のようでした。荒唐無稽なところは神話にも近いと思います。だじゃれみたいな言葉遊びや子供が喜ぶような滑稽な会話の中に、真理を紛れ込ませていました。美術、衣裳、照明などはカラフルで豪華ですが、使っているのは文字、記号、音といったとても小さな単位です。派手で大らかな娯楽作でありながら、宇宙を表すための仕掛けなのだと思います。

 各エピソードの「こうなって、こうなった」という事実の羅列だけを見ると、たわいなさすぎて物足りなく感じるかもしれません。でも、実は人生って遠くから眺めたらそんなもんだと思うんですよね。大きな出来事と言えば、誕生して、(親と別れて)新しい家族を作って(もしかすると子供を産んで育てて)、死ぬぐらいですし。

 なんで可愛い歌手の名前が地曳網(じびきあみ)だったのかな~、可笑しかったな~。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 新しいことを始めると決心した時、それまで行っていた何かをやめなければならなくなります。素敵な誰かと出会ったら、その前に仲良かった人と会う時間は自然に減るでしょう。だから何かが始まる時には、必ず何かが終わってしまうし、「こんにちは」はいつも「さようなら」を含んでいるのだと思います。誰の人生もそうであるように、ファーレの人生はその繰り返しでした。彼女が何か強い衝動を感じたり、自ら行動を起こしたりする度に、別離や喪失が生まれるのが私個人の人生と重なって、泣けてしまいました(ううう恥ずかしい)。

 幕開けから「てんでバラバラだ」と宣言。バラバラの点がひとところに集まって「響き合う」。それが世界。
 カレーライスが実はハヤシライスだったエピソードについて。「たったひとつの嘘がその人の人生すべてを嘘にする」のは真理だと思います。
 プロポーズの言葉が「一緒におとぎ話を信じてくれる?」だったことに感動。共同生活を継続できる条件は、嘘(将来の夢とか)を一緒に信じられることなんじゃないかな。

≪東京、三重、高知、茨城≫
出演:坂本美雨、今井尋也(メガロシアター)、今村洋一(地下空港)、初夏(劇団レトルト内閣)、大柿友哉(害獣芝居)、北川結(モモンガ・コンプレックス)、重岡佐都子、清水久美子、名児耶ゆり、西尾大介(ALOHA)、bable、柳瀬大輔
演奏:権藤知彦(pupa/anonymass) 田中佑司 千葉広樹 村田シゲ(□□□/CUBISMO GRAFICO FIVE/Circle Darko)
脚本・演出:柴幸男(ままごと) 音楽・演出:三浦康嗣(□□□) 振付・演出:白神ももこ(モモンガ・コンプレックス) 舞台監督:佐藤恵 舞台美術:青木拓也 照明:伊藤泰行、南香織 音響:星野大輔(サウンドウィーズ) PA:田鹿充 音響機材:artical 衣装:藤谷香子(FAIFAI) 宣伝美術:伊藤ガビン、いすたえこ(NNNNY)/渡辺浩之(OLOLA) Web:竹田大純(竹田デザイン分室) 演出助手:きまたまき 制作協力:上砂智子 制作:宮永琢生(ZuQnZ) 制作・ドラマトゥルク:野村政之 劇場制作:清水幸代(世田谷パブリックシアター)、松浦茂之・藤田祐輝(三重県文化会館)、山浦日紗子(高知県立美術館)、古川真由実(水戸芸術館) 主催:公益財団法人せたがや文化財団、公益財団法人三重県文化振興事業団、公益財団法人高知県文化財団、公益財団法人水戸市芸術振興財団 助成:財団法人地域創造 特別協力:急な坂スタジオ 企画制作:世田谷パブリックシアター、三重県文化会館、高知県立美術館、水戸芸術館
【休演日】9/29 10/2,9 【発売日】2012/08/18 全席自由・日時指定  一般5,000円
★=プレビュー 3,000円(8/18発売 会員先行・割引はございません)
高校生以下 2,000円(世田谷パブリックシアターチケットセンター店頭&電話予約、オンラインのみ取扱い、当日年齢確認できるもの要提示)
U24 2,500円(世田谷パブリックシアターチケットセンターにて要事前登録、登録時年齢確認できるもの要提示、オンラインのみ取扱い、枚数限定)
友の会会員割引 4,500円 せたがやアーツカード会員割引 4,700円
http://fanfare-mix.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年10月02日 00:18 | TrackBack (0)