先月22日、葛河思潮社『浮標(ぶい)』で【再演舞台を観て語らう夕べ】第2回を開催しました。前回に続き今回も楽し過ぎて、話が尽きずに18時から終電までお店に居座ってしまいました(笑)。
1つの舞台を一緒に観て感想を語り合うと、初対面でも一瞬で仲良くなれるんですよね。共感を楽しんで、好みや解釈の相違を面白がって、新たな発見に驚いて、喜んで…♪ 演劇を観るだけでも十分に幸せなのですが、もしかすると、観た後に色んな人と語らうこととセットになって、初めて“舞台鑑賞”が完成するのかもしれない…そんな風に思えるほど充実した時間でした。
なんと今回もメルマガ号外を発行しました!『浮標(ぶい)』東京公演は終了。大阪、兵庫、宮城、新潟公演があります。10月20日(土)15時開演の大千秋楽は、全国13もの映画館でライブ・ビューイングあり!
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参加者は計11人(男性3人、女性8人)で年齢層は20代~60代と、前回より幅広くなりました。男女混合になったことで、着目点の違いがはっきり出たように思います(前回は女性だけだったからこそ、過激な明け透けトークができました・笑)。
主人公五郎(田中哲司)とその妻美緒(松雪泰子)の関係について、「夫にあそこまで愛されたら死んでも本望かも」という方もいれば、「あれは五郎の自己愛だ(美緒には迷惑かもしれない)」という方もいて、ほぼ正反対の感想が出ました。「一幕を長く感じた」という方もいれば「(一幕の)尾崎と五郎の裏天さんのシーンだけ、もう一度観たい」という方もいらっしゃいました。私も一幕の浜辺のシーンはすごく好きで、底抜けに善良であることの美しさ、滑稽さが悲しみとともにあらわれていたように思います。
五郎の友人で間もなく出征する赤井(平岳大)が登場したところで、空気が大いに変化したと指摘される方が多かったですね。他にも「あの場面で○○だけを差す照明がいい」、「砂を囲む美術は絵の額ぶちで、舞台全体が絵画のようだった」などの鋭いご指摘が。医師の比企(長塚圭史)が論文を書かない理由についての考察は凄かったな~。
初演と比較することで、より多面的に『浮標』という戯曲を味わえたのも収穫でした。キャストが変わったことで、衣装や言葉の意味など、随分と色んなことが変わっているんです。また、再演だからこそ到達できた高みについても話し合えました。
舞台を作る人たちは「台本」を中心につながりますが、観客は「上演された舞台」でつながります。作り手にとっての『浮標』が、上演されることで観客に手渡され、新たな『浮標』になるのです。作り手と観客が相互にレスポンスしていくことで、舞台は進化していくのだと思います。観客の想像力、発信力の素晴らしさをあらためて実感しました。
「これぞ」と思う再演作品を選んでいるとはいえ、前回、今回ともにメルマガ号外を出せたのは幸運で、とても嬉しいです!また「これぞ」、な再演があったら開催したいと思います。
≪参加者の方々からツイッターやメールでいただいたご感想など≫
●今までに観た舞台の中で一番面白かった。
●再演を語る会に参加して、言いたい事を語りまくってきました。参加された皆様、ありがとうございました(^^)。(略)楽しすぎて飲み過ぎしゃべりすぎました。こちらこそしのぶさんのお話でいろいろと勉強になりました(^^) ありがとうございました!
●みんなのいろんな見方が面白い。よく見てるな~と感心します。本当に楽しかった。やっぱりこういう会は楽しい!前回も今回も楽しくてやっぱり帰りたくなくなったし。スペシャルゲストのお話も興味深くて新鮮でした。あんなに長時間いてくださったのも嬉しかった。
●観劇後に「再演舞台を観て語らう夕べ」に参加したら、ご一緒させて頂いた方が口々に「あれは五郎のエゴ」「五郎の自己愛」と仰っていて印象的でした。実際、作者の三好十郎は妻の死後まもなく再婚してるしねw でもそれで良いと思うわ。自己愛上等。
●あそこまで(観劇の)玄人さんの集まりだとは思わなかった(笑)。みんなよく話すから、聞いてていろいろ面白かった。(略)とにかくあの飲み会には圧倒された!芝居よりも各自の芝居の解釈を聞く方が、私には面白かったかもしれないくらい(笑)。(スペシャルゲストの)貴重な現場の話、面白かった!
●輪廻転生を信じてるので、あの唯物論者(=五郎)の死生観について、みんながどう感じたのか本当は知りたかったんだけど聞きそびれた。
●「浮標」の感想:4時間という長さを全く感じさせない素晴らしい作品だった。シンプルゆえに印象的な舞台。効果的な照明。万葉から語り継がれる優雅な言葉で紡がれた、狂おしいまでの性や業が淡々と美しい。個性溢れる魅力的な声と身体表現で語られる人の生の哀しさと可笑しみ、そしてもどかしさに涙し、いつまでも胸の奥底が疼く思いがした。印象に残るいくつかのシーンはそれぞれ1枚の洗練された絵のようだった。
●食事会は実にさまざまなバックグラウンドを持つ魅力的なメンバーと共に美味しい料理と、観劇したて感激ほやほやな「浮標」の感想を肴に旨いワインを嗜むひとときは至福の時間でした。皆様お一人お一人のお話が全て楽しくて、あっという間に終電の時間になっていましたが、それでもまだまだ話し足りない気分でした。また集まってわいわいやりたいと心から思いつつ帰宅しました。
≪東京、大阪、兵庫、宮城、新潟≫
出演(戯曲配役順):田中哲司 松雪泰子 佐藤直子 平岳大 荻野友里 池谷のぶえ 大和田美帆 木村了 長塚圭史 高部あい 赤堀雅秋 深貝大輔
作:三好十郎 演出:長塚圭史 美術:二村周作 照明:小川幾雄 音響:加藤温 衣裳:伊賀大介 ヘアメイク:河村陽子 演出助手:山田美紀 舞台監督:福澤諭志 プロデューサー:伊藤達哉 主催:ゴーチ・ブラザーズ 企画・製作:葛河思潮社
発売日:2012年8月11日(土) S席6,000円 A席5,000円 B席4,000円 U24(18~24歳)2,000円(B席) 高校生以下2,000円(B席) ※劇場友の会、区民割引などあり。 ※未就学児童の入場不可。
http://kuzukawa-shichosha.jp/
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/09/post_298.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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