先日レビューをアップした『韓国ミュージカル「ウェルテルの恋」』の日本公演初日を観てきました!ゲネプロ(本番同様のリハーサル)直後の囲み取材にも参加させていただきました。
【写真左から(敬称略):キム・ダヒョン、キム・ジウ、チョン・ドンソク】
チョン・ドンソクさんはリラックスした微笑みを浮かべてらっしゃいましたが、キム・ダヒョンさんとキム・ジウさんはすっごく緊張されているようでした。そうですよね、初めての日本公演の約1時間前なんですものね。
そして本番は…観ている方も胸が苦しくなって、ぎゅるぎゅると心が締めつけられるような、悲恋。キム・ダヒョンさんの演技は期待どおり素晴らしかったです!下手側の前方席で堪能♪
上演時間はカーテンコール込みで2時間半弱(途中休憩20分を含む)。日本公演オリジナルサウンドトラックCD(7曲で2000円也)をゲット。パンフレットは韓国版を販売。
動画↓「ウェルテルの恋」(キム・ダヒョンさんの歌声を2分半たっぷり聴けます)
⇒公演公式サイト
⇒公演公式ツイッター
⇒CoRich舞台芸術!
⇒ぴあ「韓国“舞台”エンタメの底力」
⇒げきぴあ「ウェルテルの恋」
※全日程でカーテンコールでの写真撮影可!(フラッシュNG)
・しのぶの演劇レビュー内関連リンク
⇒『ウェルテルの恋』プレスツアー参加報告
⇒チョン・ドンソクさんインタビュー
⇒キム・ダヒョンさんインタビュー
⇒演出家キム・ミンジョンさんインタビュー
⇒韓国公演初日レビュー
カーテンコールは撮影可でした(フラッシュNG)。字幕でタイミングを教えてくれるので、どうぞカメラのご準備を。初日終演後はキャストのお見送りイベントがあり、ダヒョンさんから観客1人ひとりにバラの花が手渡しで贈られました。⇒ダヒョンさんの美しさに悶絶するツイート多数(笑)。
字幕があるおかげで謎が解けまくり!(笑) 唐突だと勘違いしてた色々が、ちゃんと計算された構成だったのだとわかりました(すみませんでした!) 共感を得やすい悲恋を題材にしつつ、冷酷な社会に押しつぶされる弱者という、昔からずっと変わらないテーマを描いているんですね。天国と地獄を猛スピードで行ったり来たりする人間の心の動きが、そのまま劇に、歌になっています。「愛ゆえの死」といった題材は確かに「韓国っぽい」のかもしれませんが、悲恋はあくまでも題材の1つであり、作品全体が人間の心理そのものなのだと思いました。12年間、何度も再演されてきたことに納得です。
ダヒョンさんは韓国初日に比べると、少々硬い(緊張している?)印象でしたが、「舞台で生きている」演技を見せてくださいました。あんなに気持ちを小刻みに変化させて、心の通った声を出して、歌にならないほど泣き崩れて…やはり釘付けでした。
囲み取材での「役を演じる上で、楽しいこと、苦しいことは?」という質問に、ダヒョンさんは「舞台でウェルテルを演じていると、自分のことのように感じることがある。ウェルテルが幸せだと自分は幸せで、不幸になると不幸になる。それは楽しいですし、苦しいです」といった返答をされました。こんなに体も心も酷使する演目を、1日に2度もやるなんて(昨日はゲネもやってらしたはずなので)…俳優は神々しい職業だと思います。
ここからネタバレします。歌詞やセリフは正確ではありません。
ウェルテルがロッテに一目ぼれするシーンは、やはりすごく唐突(笑)。ウェルテルがロッテに肖像画をプレゼントする時のガッツポーズ、お返しにリボンをかけたホメロスの本をプレゼントされて、大げさなほどよろける演技など、ダヒョンさんは笑いどころもバッチリ。無垢そうに見せかけて巧い…!
「一夜千年」という歌は「あなたに会いたくて眠れなかった夜はまるで千年」といった歌詞で、ウェルテルとロッテのデュエットです。同じ歌詞を2人で歌うのですが、ウェルテルはロッテを思い、ロッテは婚約者アルベルトを思っているので、切ないんですよね。そういえば『レ・ミゼラブル』でマリウスがエポニーヌに案内されて、初めてコゼットの家に行く場面と似てます。似てるといえば居酒屋のシーンも『レ・ミゼ…』なんだろうな~。上半身裸の男性ダンサーが出てくるのも『エリザベート』に似てるそうです。
女主人を愛してしまった召使のカインズと、婚約者がいるロッテを愛してしまったウェルテルが対になっています。ウェルテルはカインズに、「君の心の主人は君なのだから、心のままに愛すればいい」といったアドバイスをします。だけどそうは問屋がおろさないのが社会なんですよね。自由で豊かで、際限なく拡張・収縮する心とは対象的に、法が治める現実社会は四角四面で融通がきかず、残忍です。これはゲーテの原作でも描かれていることだと思います。
1幕の終わりと2幕の終わりに、ウェルテルは「足を踏み出すことができなければ」を歌います。「君の笑顔の分だけ、私の心は沈んでいく」といった歌詞です。同じ曲だからこそ、演奏や演技、歌い方の違いが浮き出るんですよね。ミュージカルならではの演出、素敵です。
磁石でできた島(=ロッテ)に引きつけられて、こなごなに砕けてしまう船(=ウェルテル)という伝説を、船の形の巨大な装置で表します。最後に船の先端が動くのは「旅立った」と「砕けた」の両方なのかしら。
アルベルトは人間が作り出した不寛容なシステム、つまり社会を象徴する存在だと思いました。彼は自分に銃を向け、さらに自殺もしようとしたウェルテルを軽蔑する歌を歌います。「私は真面目に生きてきたのに、なぜ無視されて、こんなにまで侮辱を受けなければならないのか。無礼な奴が次から次に自分に近づいてくる」「わからない、理解できない」といった歌詞でした。殺人犯カインズを必死でかばうウェルテルについて、「お前(ウェルテル)は死に惹かれてる」「磁石の島に引きつけられる船のように砕けるつもりなのか」と独唱する場面もありました。
死を決意したウェルテルは使用人に手紙を持たせ、アルベルトに「旅に出るので銃を貸してくれ」と伝えます。アルベルトは、ウェルテルが死のうとしていることを知っていて、銃を貸すんです。しかもロッテにその銃を渡させる!(ロッテは使用人に恐る恐る銃を手渡しします) …残忍です。最後は『人形の家』だと思いました。ウェルテルの方に心が動いたと告白(懺悔)しようとしたロッテの口を、優しいささやきで封じ込めて、「許す」という大上段から、彼女を“理想的な夫婦・家庭”という檻の中に入れてしまいます。まあ、ロッテがウェルテルのもとに走っても、幸せになるとは限らないんですけど。
照明はちょっとスケールダウン? 殺人を犯したカインズが警察に追われる場面で、扉の向こうに見える紫やピンクなどのカラフルな明かりがなくなっていました。最後のウェルテルの自殺の場面で、舞台全体を赤色に染めるのが、単調になっていたり。もやもやと生き物のように赤色が動いていた印象があったんですけどね。韓国公演で使っていた機材を持ってこられなかったのかな~などと想像。
あとは、ロッテが小さな弟と妹と一緒に、お面を被ってアルベルトのためにおどけて歌うシーンがなかったような…勘違いかしら。※昼公演ではありました。
ロッテが「人妻になったのに他の男に惹かれてしまっている」と葛藤をあらわにして歌う場面の、衣裳が変わってました。韓国公演初日では、ウェルテルとキスをする場面で着る白い衣装だったんです(たぶん)。私としては前の方が良かったな~。誰なのか分からなかったから、カインズが愛した女主人なのかな…と想像できたんですよね。
ダヒョン版、もう一度行けるかどうか…画策中。
韓国題名『뮤지컬(musical)젊은 베르테르의 슬픔(Die Leiden des jungen』
【出演(一部Wキャスト)】ウェルテル:キム・ダヒョン(김다현)、ロッテ:キム・ジウ(김지우) アルベルト:イ・サンヒョン(이상현)、オルカ:ソ・ジュヒ(서주희)、カインズ:オ・スンジュン(오승준)、ほか ※出演者、配役は変更になる場合がございます。
原作:J.W.Goethe(ゲーテ) 演出:キム・ミンジョン(김민정) 音楽監督:イ・ソンジュン 振り付け:ホン・セジョン 芸術監督:シム・サンテ 劇作/歌詞 :コ・ソンウン 作曲:チョン・ミンソン 脚色:ソン・ジョンワン、キム・ソンミ 編曲:イ・ソンジュン 主催:ぴあ 制作:CJ E&M、劇団カッカジ(韓国)
11月9日(金)10:00より、チケット一般発売
早割指定 9,000円(税込) ※11/8(木)までの先行期間のみ適用料金となります。
全席指定 9,800円(税込) ※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
韓国ソウル公演:http://www.playdb.co.kr/playdb/playdbDetail.asp?sReqPlayno=40130
東京公演:http://wakaki-w.jp/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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