庭劇団ペニノが劇団のアトリエ“はこぶね”で創作してきた3作品の集大成(過去レビュー⇒1、2)。開けてびっくり!の舞台美術。上演時間は失念。
⇒「庭劇団ペニノはこぶね新作『大きなトランクの中の箱』公開記念スライド」★ネタバレあり
こだわりに妥協しない、完成度の高い、演劇公演でした。モチーフが思いっきり“男性器”なので、ドギマギしつつも、かなり笑わせていただきました。自分が何を感じ取り、何を受け入れ、何を拒否(スルー・無視)したがるのか。考えさせられました。
⇒CoRich舞台芸術!『大きなトランクの中の箱』
ここからネタバレします。
どっしりとした額縁のあるプロセニアムの美術。カーテンが上がると、本棚に囲まれた畳の部屋。
主人公の青年(山田伊久磨)は学生服を着ている(上半身は学ラン、下半身は黒タイツ)。彼は43歳なのに未だに受験生で、父(飯田一期)に「一家の名を汚すな」と厳しく言い渡されている。青年は父に憧れながらも怯えており、自分の妄想の中へと旅に出る。
…とにかく、そこら中に男性器、でした。若い男性というか、受験期の男子学生ってここまで男性器に執着するものなのでしょうか(笑)。父の他には白い液体を食べる豚(島田桃依)と羊(瀬口タエコ)が登場します。回転式の装置で合計4部屋あり、小鳥が鳴く掛け時計など、各部屋に共通する装飾もありました。
青年と父と豚と羊の4人全員で笛を吹きます。笛ももちろん、口をつけるところが男性器になっているデザイン。皆さんがとても上手に「カノン」を演奏されるので、聴きほれるし微笑えましいのですが、でも口には……。やがて青年が笛をのどの奥へと押しこんでいくんです。エディプス・コンプレックスが強烈に示されて、私にはキツかった…。その後、種明かしをするように青年が各部屋を回っていきます。装置がぐるぐる回転し、箱の中身があらわになって終幕。このエンディングは楽しかったです。
お腹一杯以上の気分で劇場から出ようとすると、出口(入り口)左側の白い棚に、顔が亀頭の形になった小鳥さんのオブジェが1つ、ちょこんと置かれていました………怖いよ~(笑)。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演:タニノクロウ 吉野万里雄 玉置潤一郎、山口有紀子(こと、エビさん?) 司会:日比野啓
以下、タニノさんらのご発言で私が記憶していることです。
このスタジオを3ヵ月間借りている。タニノは最初の10日間(1週間?)、朝10時から夜10時までずっと寝てた。やることを決めてから、スタッフに声をかけた。装置の大きな仕込みが3度あった。美術制作と並行して役者の稽古も2ヵ月間ほど。この舞台美術にかかった費用は、観客が想像するほど高くはない。ボランティアで手を貸してくれた人も大勢いた。
4つの部屋の真ん中の小さい空間で、照明と音響のオペをしている。タイトルの『大きなトランクの中の箱』がテーマなので、盆で回る装置の中にすべてを納めている。
タニノと、劇団員である構成の3人は、タニノをハブにして個々にコミュニケーションをしている。全員が一堂に会することは、ほぼない。学生時代からずっと一緒だったタニノと玉置がアイデアを出していき、吉野が調査をして(これまでに演劇界でそういう作品があったかどうか等)、山口(=えびさん)が実現可能かどうかを検証する。
タニノがこの3人を劇団員に誘った理由は「記憶力がいいから」。人間がアイデアを思い付くのも、思考するのも、すべて自分の記憶からだから。いかに詳細に記憶できるかが勝負。
≪トークの後でしのぶが考えたこと≫
記憶から作りだされた舞台を観客が観る。観客にも記憶があるから、劇場には記憶を持つ人々と、記憶から生まれた物・事が充満している。舞台で何かが起こった瞬間を、作り手(俳優やスタッフ)と観客が共有する。その瞬間だけが「現在」であり、すぐに全てが「過去」=「記憶」になっていく。「記憶」の集まり(=劇場)から、新たな「記憶」が生まれ、その場にいる人々各自の「記憶」に蓄積されていくイメージから、円が重なる曼荼羅を思い浮かべる。
出演:山田伊久磨、飯田一期、島田桃依、瀬口タエコ
【発売日】2013/03/09 前売り2500円(~4月19日まで)2800円(4月20日まで)学生2000円、当日3000円(~4月19日まで)・3300円(4月20日より)
作・演出・美術:タニノクロウ 構成:玉置潤一郎、山口有紀子、吉野万里雄 /美術:稲田美智子/美術助手:松本ゆい/特殊小道具:横沢紅太郎 小此木謙一郎(GaRP)/舞台監督:三津久 /照明:阿部将之(LICKT-ER)/音響:佐藤こうじ(Sugar Sound)/音響・照明オペ:仮屋浩太郎/舞台写真:田中亜紀/演出助手:仮屋浩太郎 松本ゆい/運営:西村和晃 /制作:小野塚央 制作協力:quinada 助成:公益財団法人セゾン文化財団 主催:庭劇団ペニノ
☆13日、15日、17日、18日、19日、21日夜公演の終演後にアフタートークを予定しております。
4月13日(土)18時 ゲスト:徳永京子さん(演劇ジャーナリスト)
4月15日(月)19時30分 ゲスト:佐々木敦さん(評論家、HEADZ代表)
4月17日(水)19時30分 ゲスト:杉山至さん(舞台美術家)
4月18日(木)19時30分 ゲスト:日比野啓さん(成蹊大学准教授)
4月19日(金)19時30分 ゲスト:宮城聰さん(演出家、SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督)
4月20日(土)14時 ゲスト:二村ヒトシさん(アダルトビデオ監督)
4月21日(日)18時 ゲスト:玉置潤一郎、山口有紀子、吉野万里雄(庭劇団ペニノ劇団員)
http://www.niwagekidan.org/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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