作曲:甲斐正人、脚本:齋藤雅文、演出:栗山民也という豪華スタッフを迎えた、秋田のわらび座のオリジナル新作ミュージカルです。原作は手塚治虫さんの漫画『ブッダ』。⇒制作発表写真レポート
主役はブッダですが、周囲の人間や人間ではない(とされる)生き物たちの群像劇でした。上演時間は約2時間5分(途中休憩15分を含む)
⇒CoRich舞台芸術!『ミュージカル「ブッダ」』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
遥か古代のインド。
シャカ族の国に、王子シッダールタは生まれた。
王子は「世の中はなぜこんなにも不幸せと争いに満ちているのだろう?」と悩んでいた。
「なぜ生きるってこんなにも苦しくて怖いのだろう?」
王子は答を見つけるために国を捨てた。
修行の旅に出たのだ。
王子の旅は、大発見の連続だった。
世の中は怖いけれど、生きるエネルギーにあふれていた。
感動する出逢い!戦いと別れ!
女盗賊のミゲーラ。
国を滅ぼされ復讐に生きるタッタ。
母が奴隷だったことに苦しむルリ王子。
森の苦行者たち……。
そして答を探す王子の前に、
故郷シャカ族の滅亡が迫っていた……。
※原作では「シッダルタ」ですが、本ミュージカルでは「シッダールタ」として登場します。
≪ここまで≫
人間の善と悪が舞台で描かれると、悪の方が光って見える。人間の弱さ、醜悪さが剥き出しになっているほど、私は惹かれてしまう。わらび座ミュージカル「ブッダ」は、魑魅魍魎が跋扈し、ブッダの周囲に悪が渦巻く場面が白眉。三重野葵さん素晴らしい。化けたと思う。石井一彰さんも良かった。
人間ではない(とされる)者たちとブッダを鮮烈に対比する群像劇。野生を際立たせる群舞が良かった。身体表現はわらび座っぽくないと感じるほどワイルド。ただ、最後にひとつの「宗教」に集約されて、世界が小さくなったように感じたのが残念。受け取り方次第と思います。
ここからネタバレします。
ブッダ(戎本みろ)とタッタ(三重野葵)の場面で、『火の鳥 鳳凰編』の茜丸(戎本みろ)と我王(三重野葵)を思い出しました。戎本さんはご本人の個性(まっすぐ響く声質や清潔感)と主役の貫録が矛盾なく共存。三重野さんはたたずまいが既にオオカミ(=獣)。高いところからジャンプして飛び降りたり、ステージを転がったり、身体能力の高さがタッタ役に存分に活かされていました。復讐をやめるとブッダに誓ったけれど、周囲にあおられて再び復讐へと向かう場面で、舞台中央に一人で立ち、歩く姿から目が離せませんでした。
ブッダの妻ヤショダラと、鳥を演じた宮菜穂子さんの歌と演技が印象に残っています。ドレスに青いショールをはおると鳥になるんですよね。突然動物として舞台に居る演出も良かった。
衣装(松井るみ)の色使いが鮮やかでした。特にルリ王子の青い装束がまばゆくて、それでいて可憐さ、か弱さもあって。石井一彰さんの悪役っぷりも際立ちました。
≪東京、大阪、秋田≫
【出演】シッダールタ:戎本みろ、パセーナディ王・ヤタラ:今井清隆、ミゲーラ:遠野あすか、タッタ:三重野葵、ルリ王子:石井一彰、アンサンブル・デーバ/内田勝之(フリー)、アンサンブル・アヒンサー/田中連太郎(オフィス・クロキ) アンサンブル・語り部/荒川洋(座友) アンサンブル/岡村雄三、長掛憲司、四宮貴久(フリー)、伊藤明大、宇髙海渡(長谷川事務所) ヤショダラ・鳥/宮菜穂子(アトリエ・ダンカン)、アグリ/遠藤浩子 アンサンブル/椿千代、小林すず、工藤純子、古関梓紀、高橋真里子
原作:手塚治虫 作曲:甲斐正人 脚本:齋藤雅文 演出:栗山民也 振付:田井中智子 美術:松井るみ 照明:服部基 衣裳:前田文子 音響:小寺仁 ヘアメイク:鎌田直樹 小道具:岩辺健二・平野忍 歌唱指導:山口正義 ムリダンガム指導:森山繁 舞台監督:石井忍 宣伝写真:三好宣弘 協賛:(株)手塚プロダクション (株)講談社 推薦:公益財団法人 全日本仏教会 社団法人 全日本仏教婦人連盟 天台宗 高野山真言宗 真言宗智山派 真言宗豊山派 浄土宗 浄土真宗本願寺派 真宗大谷派 臨済宗妙心寺派 曹洞宗 日蓮宗 後援:東京都仏教連合会 東京都葬祭業協同組合 東京宗教用具協同組合 共催:足立区シアター1010指定管理者 主催:フジテレビジョン わらび座 企画制作:わらび座
【休演日】5/9【発売日】2013/02/09 全席指定8000円 ※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
http://www.warabi.jp/buddha/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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