山崎彬さんが作・演出・出演される京都の劇団“悪い芝居”。団体名の由来は「悪いけど、芝居させてください。の略」とのこと。山崎さんは『駄々の塊です』で岸田國士戯曲賞にノミネートされ、『嘘ツキ、号泣』で第17回OMS戯曲賞佳作を受賞されています。上演時間は約1時間50分。終演後に音楽ライブあり。
「CoRich舞台芸術まつり!2013春」審査員として拝見しました(⇒99本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載します。
⇒CoRich舞台芸術!『キャッチャーインザ闇』
■やりたいことをやる、ストレートな実行力
オープニングの暗闇までは興味をそそられたのですが、声が聴こえた途端に興ざめしてしまいました。若い役者さんが客席に向かって大きな声を出し、身体を元気に動かす様子を見どころとするタイプのお芝居で、演技の精度が低く、残念ながら全体的に集中できませんでした。作・演出・出演(ジャパン役)の山崎彬さんは、『駄々の塊です』で岸田國士戯曲賞最終候補にノミネートされ、『嘘ツキ、号泣』ではOMS戯曲賞佳作を受賞されています。せめて言葉だけでも味わえないかと自分なりに努力はしたのですが、役者さんが叫べば叫ぶほど、セリフが耳に入って来ませんでした。
衣装は派手な装飾と際どい色使いで工夫が凝らされていました。キャラクターをわかりやすく表す配慮は良かったと思いますが、安っぽさが気になっていまいました。テカっとまんべんなく白く照らす照明のせいで、粗が見えてしまったせいもあります。そう、LEDの照明がとても苦手でした。装置や俳優だけでなく、劇場の壁も客席もすべて白々しく照らしてしまうのです。闇と対比させる効果を狙ったのかもしれませんが、青白くて明るい光に照らされ、隅々まで晒されることにはリスクもあります。
劇団でバンド活動もされていて、毎公演終了後に無料で短いライブを披露しているとのこと。私が観た回の後もライブが行われていました。やりたいことをやるというストレートな実行力は作品にも表れていましたし、三都市ツアーを敢行する力を備えてるのも素晴らしいと思います。劇団独特の魅力があり、ファンを獲得していることにも納得でした。チラシのイラストがアーティスティックで、形も質感も独特で目を引きました。タイトルもキャッチコピーにもそそられました。
ここからネタバレします。
3つのエピソード(目が見えるようになった全盲女性とその夫と愛人の三角関係、女性アイドル短距離ランナーたちの闘い、先生と生徒2人の過去と夢の物語)は、それぞれに“闇”をモチーフにしていたようです。ギャグが多い目なのは関西らしさなのでしょうか。三段落ちもいいですけど、なるべく一発でキメて欲しいです。
終盤の無言で走り回る場面は面白く、集中して拝見できました。各エピソードの登場人物が全員出てきて、ステージ上だけでなく劇場通路、ロフト、ロビーまで使って、空間全体をカオスにしたてあげ、スリルもありました。
出演:大川原瑞穂、池川貴清、植田順平、呉城久美、宮下絵馬、森井めぐみ、北岸淳生、山崎彬、田川徳子(劇団赤鬼)、大塚宣幸(大阪バンガー帝国)、福原冠
【脚本・演出】山崎彬 【音楽】岡田太郎【舞台監督】大鹿展明/涌本法明[BS-Ⅱ]【美術】進野大輔【照明】西崎浩造[キザシ]【照明操作(新潟公演)】中島美沙希[キザシ]【音響】中野千弘[BS-Ⅱ]【音響操作・演奏】岡田太郎【衣装】植田昇明[kasane]【演出補】畑中華香【演出助手】高橋紘介・川上唯【アートワーク】久保友作【宣伝美術】松本久木【WEB】植田順平【制作】有田小乃美【制作協力】寺井ゆうこ[LOTUS]
【発売日】2013/01/01 一般前売2900円/学生前売2400円/高校生以下1000円 当日券500円増 ★早期観劇割引 一般2500円/学生2000円 未就学児童入場不可
http://waruishibai.jp/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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