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2013年07月02日

【写真レポート】世田谷パブリックシアター「『ジャンヌ』制作発表会」07/01世田谷パブリックシアター内稽古場

 世田谷パブリックシアターの新作舞台『「ジャンヌ」―ノーベル賞作家が暴く 聖女ジャンヌ・ダルクの真実―』の制作発表会に伺いました。

 劇作家バーナード・ショーがノーベル文学賞を受賞した1923年の古典戯曲が、鵜山仁さんによる構成・演出により、今の時代に共鳴する新しいジャンヌ・ダルク物語としてよみがえります。日本での上演は44年振りだそうです。

 タイトル・ロールのジャンヌ・ダルクを演じるのはミュージカル界の大スター、笹本玲奈さん。紅一点の笹本さんを支える、実力派舞台俳優が揃ったキャスティングにも期待できそうです。

 ●世田谷パブリックシアター
  『「ジャンヌ」―ノーベル賞作家が暴く 聖女ジャンヌ・ダルクの真実―』
  ≪東京、兵庫 豊橋 札幌≫
  公演期間:2013年9月5日(木)~24日(火)
  会場:世田谷パブリックシアター
  チケット前売り開始(一般):7月6日(土)~
  チケット価格帯:3,800円~7,500円 他、学割などあり
  ⇒CoRich舞台芸術!『ジャンヌ

【写真↓後列左から:鵜山仁/中嶋しゅう/浅野雅博/村井國夫/小田島雄志
 前列左から:今井朋彦/笹本玲奈/伊礼彼方】
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 ■楫屋一之さん(世田谷パブリックシアター劇場部長)
 楫屋:『ジャンヌ』は当劇場の今年度のラインナップの中で、最大規模の作品です。ヒーロー(=ヒロイン)不在の混迷した世相の中で、新しいヒーロー像を提示しながら、少しでも明るい見通しが立てられるような作品を皆さまにお届けしたいと思っています。
 ジャンヌ・ダルクは15世紀の百年戦争の時にフランスのオルレアンに実在した少女です。皆さんご存知のように、最終的には火あぶりになって処刑されてしまいます。原作は1923年に劇作家バーナード・ショーが『セイント・ジョーン』という形で書き下ろし、舞台化されました。そしてこの作品でノーベル文学賞を受賞しています。日本ではいち早く1926年に築地小劇場にて上演(主演:山本安英)。その後、1963年に劇団雲で上演(主演:岸田今日子/1969年に再演)、今回は実に44年振りの久しぶりの上演となります。
 演出は当劇場に初めての登場となる鵜山仁さんです。原作を鵜山さんなりに再構成した新しい形の鵜山版ジャンヌ・ダルクになると思います。タイトルロールのジャンヌ役はミュージカル界のプリンセス、超売れっ子の笹本玲奈さんが挑みます。膨大なセリフ、スリリングな展開、そして豪華なスタッフ、キャストを揃え、日本全国の皆さまにお届けしたいと思います。


 ■小田島雄志さん(翻訳)

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小田島さん

 小田島:本当は翻訳の中川龍一さんに来ていただきたかったんだけど、今日はどうしても来られないらしくて。何年も前に亡くなったものだから(会場で笑いが起こる)。6場のうち3場まで中川さんが翻訳されて、病気で倒れられた。その後を僕が最後まで訳しました。タイトルが『ジャンヌ・ダルク』だとすると『ジャンヌ』が中川さんの訳で『ダルク』が僕の訳です。
 バーナード・ショーの作品の中で一番好きです。ジャンヌに対する愛情があるんです。ジャンヌ・ダルクを最初に英語で書いたのはもしかしたらシェイクスピアで、シェイクスピアの『ヘンリー六世』ではジャンヌは悪霊を呼び出す魔女になっています。ところがショーは愛情を込めた。なぜかというと、ショーはアイルランド人なんですね。アイルランド人はイングランド人と非常に仲が悪い。そしてフランス人とイングランド人は百年も戦争をした敵同士です。だからアイルランド人はフランス人を受け入れて仲良くなれる。(逆もまた然りで)たとえば作家だとバーナード・ショー、ジェイムズ・ジョイス、サミュエル・ベケットはアイルランド人で、彼らもまずフランスで受け入れられて、イギリスに行くのはその後になる。だからショーも(フランスの)オルレアンの乙女に興味を持ったんだろうと思います。
 僕は50年前に福田恆存さんの演出で岸田今日子さん主演の『ジャンヌ』を観ました。笹本さんのジャンヌを観られるなんて、こんなに嬉しいことはない。長生きはするもんです。
 先日、オルレアンに行ってきました。どこを向いてもそこら中にジャンヌの銅像などがあって、ジャンヌの記念館もある。一緒に行った記者が「この町はジャンヌ・ダラケですね」と言ってました(会場で笑いが起こる)。


 ■鵜山仁さん(構成・演出)

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鵜山さん

 鵜山:僕自身もそうなんですが、世の中のものの見方や考え方が、大きなうねりでもって、徐々に変わって来てるんじゃなかと思っています。人間の一生を80年のスパンでとらえる時と、800年、8000年というスパンで考える時とでは、人間にとって“いいこと””悪いこと”が180度違う場合もある。じゃあどの価値観や考え方にのっとって、この世の中や人生をつくっていったらいいのか。ちゃんと真面目に考えて行かなきゃいけないんじゃないかと感じています。

 そういう時に、先ほど楫屋さんもおっしゃったように、我々の遺伝子(DNA)にジャンプをさせるような、世の中に風穴を開けてくれる存在が、ヒーロー(=ヒロイン)なんじゃないかと思うんです。広い意味での「ヒーロー誕生」というか、長い目で見て世の中を変えて行く力になる人、それにまつわる物語を、舞台で表現していくこと。口はばったいですけれども、そうやって舞台で表現をすることで、世の中を変えて行けると信じなきゃいけないんじゃないか。「こんなことで世の中は変わるのか(いや、変わらないんじゃないか)」と浮き沈みすることはあります。でも、世の中をちょっとずつ変えたり、人間が生きる世界の風通しをよくするために役立っているんじゃないかと、信じざるを得ない年齢になってしまった。

 こういう長い、広いスタンスの芝居ができるのは公共劇場ならではですし、公共劇場の1つの役割だと思います。たとえば数十年ぶりにこういう作品を採り上げられること自体も。最近、古典や近代古典が持つ長い、広いスタンスが面白くて、そのエネルギーに感動して、仕事をしながら多少は自分の背丈が伸びたような実感があります。
 紅一点の笹本さんと、おじさんたちと、けっこういい(年齢の)お兄さんたちが(笑)、「世の中を良く変えていく人間の力を、世田谷から発信しよう」という気持ちで、ここに集まりました。膨大なセリフなど、難しい面は色々あるんですけれども、こういう場の力を借りて、高いハードルを元気よく飛んで、皆さんにいい作品を、いいエネルギーをお伝えできればと思っています。


 ■笹本玲奈さん(ジャンヌ役)

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笹本さん

 笹本:デビュー15周年になるこの年に、ずーっと憧れ続けていたジャンヌ・ダルクという役を演じることができて、本当に心から嬉しく思っています。普段はミュージカルのお仕事の方が多いので、このようなストレートプレイはこれで2回目です。本当に初めてのようなものなので、ここにいらっしゃる素晴らしい俳優の先輩の皆さま…、おじさま、お兄さまに助けていただきながら(笑)、はじめてご一緒する鵜山さんに沢山ご指導いただきながら、タイトルにもある「ジャンヌ・ダルクの真実」を全身全霊で演じたいです。来月、フランスのオルレアンに行ってジャンヌを肌で感じてきたいと思います。そうして全ての準備を整えた上で、お稽古をがんばっていきたいと思っています。

 質問:ジャンヌに憧れる理由は?
 笹本:女性の自由が制限されていた時代に、1人の少女がひとつの信念を貫き通すために進んでいった姿に、私は凄く憧れます。ジャンヌとは全然違いますけれども、私自身もミュージカルがやりたいと思って、その夢に向かって突き進んできました。自分と彼女とを照らし合わせると、すごく共感するものがあります。ジャンヌはいつの時代も、女性にとっての憧れの存在なんじゃないかと思います。


 ■今井朋彦さん(ジャンヌと敵対するイギリス側の伯爵ウォリック役)

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今井さん

 今井:おじさんとお兄さんの微妙なボーダーライン上におります、今井です(笑)。ウォリックというとフランスの敵国であるイギリスの軍人ですので、全国のジャンヌ・ファン、全国の笹本玲奈ファンを完全に敵に回すなぁと思ったんですが、よく台本を読みますと、必ずしもウォリックだけが敵だったわけではなく、ある意味「よってたかってジャンヌを火刑台に送った」ようなところもあるんです。僕はウォリックの立場から、なぜジャンヌを死刑にしなければならなかったのかを演じられたらと思っています。
 僕は鵜山さんとは何度もご一緒させていただいています。芝居を始めたころ、演出家はどんな要求を突き付けてくるのか分からない怖い存在だったんですが、最近は、そこが逆に楽しみであると実感しております。特に鵜山さんは突拍子もないことを要求されるので、それにどう応えて初日を迎えられるのか、自分自身も楽しみにしております。

 質問:ジャンヌとはどんな存在ですか?
 今井:男性にとっては女性は永遠の謎でございまして。ジャンヌは、謎がギュッと詰まったエッセンスのような存在、でしょうか。


 ■伊礼彼方さん(ジャンヌとともに戦うオルレアンの私生児・貴公子デュノア役)

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 伊礼:貴公子の伊礼彼方です(笑)。台本のト書きに美青年とか、着飾っているとか、装飾品だとか、たくさん書いてあるんです。デュノアは笹本さん演じるジャンヌに近しい存在で、ジャンヌが一番フラットでいられる相手なんじゃないかと思います。実年齢も近いですし。とはいえデュノアは、ジャンヌと親しくはあるけれど、もしかしたら今井さん演じるウォリックよりも「ジャンヌを利用する」という意味で腹黒いのかもしれない…。鵜山さんに聞いてみないとわからないところですが。
 ちなみに僕はおじさんではなく、お兄さん側です(笑)。白黒はっきりつけておきましょう、今後進めやすいように(笑)。若手として皆さまの経験にたどりつけない部分もありますが、勝負していきたいです。素敵なデュノアを、素敵な作品を皆さんと一緒に作って行けたらと思っています。よろしくお願いします。

 
 ■浅野雅博さん(フランス王太子シャルル役)

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 浅野:僕は確実にお兄さん側だと思うんですけど(笑)。この濃ゆいキャスティングで稽古場がどういう風になるのか、いい意味でわくわくしています。歴史的にも、ジャンヌの神々しい愛に満ちた行動から、一番恩恵を受けたのはシャルルだと思います。シャルルは彼女にどんどん成長させてもらった。
 ジャンヌとシャルルの2人っきりの密室のシーンがあるんですが、ある本によると、ジャンヌは最後までしゃべらなかったそうなんです。今回もそのシーンはあります。これから作っていくのが楽しみです。

 質問:ジャンヌとはどんな存在ですか?
 浅野:私はシャルル目線なので、「どうやってジャンヌに引っ張ってもらえるか」に尽きますね。(中嶋)しゅうさんもよく言うんです、「女性が一番つえーよ(=強いよ)」と。僕もそうだと思います。女性が言うことについていけば、間違いないと思ってます!(笑)


 ■中嶋しゅうさん(領主・将軍ロベール役/査問官ジョン・ルメートル役)

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 中嶋:確実におじさんの方だね、いや、おじいちゃんだな(笑)。抱負と言えるかどうかわからないんですが、大好きな鵜山仁という演出家と、大好きな俳優たちと、日々楽しく過ごせたらいいなと思っています。いい作品は、楽しい稽古場からしか生まれないと、私は信じています。
 ジャンヌは頑固な人だと思う。今は「玲奈ちゃんがやるジャンヌと向き合いたい」とだけ考えています。


 ■村井國夫さん(フランスの司教コーション)

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村井さん

 村井:この芝居、非常に難しい作品だと思います。シェイクスピアのロマンティック劇みたいにすれば、なんてことないんだろうけど、バーナード・ショーなので、そうはいかない。20世紀は戦いの世紀だと言われていますが、21世紀はどうなのか。今でも世界各地で色んな戦争があり、色んな人が犠牲になり、無為に死んでいくという状況があります。この戯曲には「キリストの受難だけでは足りない、もっともっと犠牲が必要なんだ。想像力のない人間のために」というセリフがあります。また最後のセリフにも胸を打たれました。心してかからなければと思っています。

 鵜山さんの稽古場は非常に楽しい稽古場です。何言ってるのかわからないところもあるんですけれども(笑)。今回、私は今井くんの次ぐらいにセリフが多いんじゃないかなぁ。『コペンハーゲン』という芝居で700ぐらいセリフがあったんですが、鵜山さんから1000以上のダメ出しをされました。「お前、褒めることはしないのか!」って言ったら、(鵜山さんは)「いえいえ感動してるんですよ~」とかワケわかんないこと言って(笑)。本当に褒めない人なんですよ。きっといいものができると期待しています。
 【訂正】「私は今井くんの次ぐらいにセリフが多いんじゃないかなぁ」とありますが、セリフが多いのではなく、「鵜山さんと一緒に仕事をした回数が今井くんの次ぐらいに多い」という意味でした。お詫びして訂正いたします(2013年7月4日加筆)。

 質問:ジャンヌとはどんな存在ですか?
 村井:非常に厄介な人物だと思います。なおかつシンパシーを感じずにいられない。笹本さんが魅力的にできるかどうかがカギですね。玲奈が魅力的にやってくれればくれるほど、私たちの役も引き立つというわけです(ニヤリ)。
 プレッシャーをかけられた笹本さんは「きゃー」と少さな悲鳴を上げてらっしゃいました(笑)。

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 ■笹本さんに質問:ストレート・プレイに臨む心構え、意気込みは?

 笹本:今エポニーヌ役を演じているミュージカル『レ・ミゼラブル』は、全てが音楽で進行していく作品ですので、音楽が心情を表現してくれたりします。でもストレート・プレイはそういうところが全くない。その人自身でその人の持つ感情すべてを表現しなければいけません。
 最近、鵜山さんと台本の読み合わせをしています。一番初めにジャンヌがロベールの名前を呼ぶシーンがあるんです。「ロベールさん」とうセリフの、その呼び方で、彼の地位や存在、他者からどう思われているのかを示してあげて欲しいと、鵜山さんに言われた時に、「ストレート・プレイってこういうことなんだ」「お芝居の基本ってそういうことなんだ」って気づいたんです。村井さんにすごく馬鹿にされそうですけど!(笑)
 自分が相手の存在を示してあげて、相手が私のジャンヌという存在を示してくれる。相手とのキャッチボールで全て成立するんだということを実感しました。デビューから15年も経って、今更こんなことを言うのは本当に遅いと思うんですけれども、ミュージカルにおいてもドラマにおいても、ストレート・プレイはお芝居の基本なんだとあらためて感じました。
 中嶋しゅうさんが、熱心に頷きながら聴いていらしたのが印象的でした。

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 ■質問:長く上演されなかった『ジャンヌ』が今、上演される理由は?

 鵜山:どうやら僕らは今、『ジャンヌ』で描かれているようなことを、夜よく寝られなくなるぐらい身近な問題として、考えなきゃいけないんじゃないか。そういう時代のうねりみたいなものが、あるんじゃないか。今、本当にそう思うんです。
 一番のおおもとの問いである「一体なんのために我々は生きているのか」「我々は何のために、どこに向かって生きているのか」を伝えるために、舞台でエネルギーを発して表現することが、必要とされている時代なんじゃないか
 たまたま他の公演でディケンズ(『ミュージカル 二都物語』)をやっているのもありまして、たとえばバルザックとかも、ほとんど誰にも読まれなくなっている古典の作品を、全然違うスタンスで舞台に乗せてみること、それも安直にアレンジするだけじゃなく、色んな方法で表現していくことが、すごく大事なんじゃないかと思っています。『ジャンヌ』はその中のひとつのポイントになるんじゃないかと思います。

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 ■伊礼:鵜山さんに質問です。『ジャンヌ』は信仰的な要素が強いですが、観客にどう受けとめてもらいたいとお考えですか?今後の稽古に活かしたいです。
 
 鵜山:お答えできる範囲で答えます(笑)。最近こんなことばかり言ってるんですが、明日死ぬかもしれないってことが、自分自身の問題なんです。井上ひさしさんのお芝居で「明日死ぬとわかったらどういう芝居をするか、どうやって今日一日を生きるのか」といったセリフがあって。生きることを、のっぴきならないこととして、自分につきつけてくる。たとえばジャンヌは急に火あぶりになってしまった。簡単に言えば命がけというか、命と引き換えるようにして表現をしてきた人物です。
 死んだ後のことを考えて生きること、死んだ後のことを考えて表現することの方が、当たり前なんじゃないかと最近思うようになって、宗教もそういうものなのかなと考えました。宗教の要素は他にも色々あるだろうけれど、僕にとっての一番のポイントは、「死んだ後のことを考えて生きる生き方」「死んだ後でも自分が死んでないような世界の在り方」。それを表現するならば、表現というものは多少は世の中の役に立つんじゃないか
 そんな長いスパンで生きるエネルギーを表現することの面白さが、まずは大事なんじゃないかと思っているので、舞台でそういう演技をしてください(笑)。

 伊礼:はい!がんばります。

 ■司会:『ジャンヌ』の最終場面には死んだ後のジャンヌが登場し、まさしく死んでからの生き方が描かれます。ぜひお楽しみいただけたらと思います。
 『ジャンヌ』のポスターについて説明させていただきます。ある本によると、ジャンヌは最後まで剣を抜かなかったそうです。鵜山さんのこだわりで、笹本さんには剣をまるで十字架のように抱くポーズをしていただきました。最後まで「神の声を聴いた」と言っていたので、「最後まで十字架」という意味も込められています。


 【しのぶよりひとこと】
 小田島雄志さんと鵜山仁さんが登壇される記者発表というと、2009年の『ヘンリー六世』もそうでした。小田島さん(82歳)が亡くなった中川龍一さんのことをまるで今も生きているかのようにお話しされた時、フラメンコダンサーの小島章司さん(73歳)、フランスの演出家クロード・レジさん(90歳)のことをすぐに思い出しました(⇒小島さんのコメント ⇒レジさん演出『室内』の紹介)。レジさんの『室内』はまさに死者と生者がともにある舞台でしたし、私自身も最近、約10年前に亡くなった祖母のことを今も生きている人のように思い出したことがあったので、とても共感しました。「人は二度死ぬ」とよく言われますよね。他者の記憶にあって、言葉にされる内は、まだ死者は生きているんだと思います。

 鵜山さんはまだ59歳か60歳という若さでいらっしゃいますが、「明日死ぬかもしれない」という実感を持って、舞台演出に臨んでいらっしゃるのがよくわかりました。また、長く広いスパンで考えることは、SPAC芸術総監督の宮城聰さんもおっしゃっていたことです。古典戯曲を今、上演することも、SPAC主催「ふじのくに⇄せかい演劇祭2013」のテーマに通じると思います。やはり、アーティストは共鳴し合っているんですね。彼らの声を、思いを、作品を通じて知り、味わって、世界をどう見たらいいのか、どう生きればいいのかを考える機会にさせてもらいたいと思います。

 俳優が自分の言葉で作品について、演じる役について語ると、その人自身の俳優としての在り方が直接伝わってくるものなんですね。出演者の皆さんが本気で語って下さったおかげだと思います。主役の笹本玲奈さんは、ストレート・プレイについて気づきを得たことを、正直に、晴れやかに話してくださいました。えらそうな言い方になって恐縮ですが「なんて勘のいい人なんだろう!」と少し感動しました。

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【レビュー、レポートの無断転載を禁止します】
[出演]笹本玲奈/今井朋彦/伊礼彼方/大沢健/浅野雅博/馬場徹/石母田史朗/金子由之/今村俊一/酒向芳/石田圭祐/新井康弘/小林勝也/中嶋しゅう/村井國夫
[作]バーナード・ショー[翻訳]中川龍一/小田島雄志 [演出]鵜山仁 [美術]乘峯雅寛 [照明]中山奈美 [音響]清水麻理子 [衣裳]原まさみ [ヘアメイク]鎌田直樹 [演出助手]稲葉賀恵 [舞台監督]北条孝 [主催] 公益財団法人せたがや文化財団 [企画制作] 世田谷パブリックシアター [協賛] トヨタ自動車株式会社/東邦ホールディングス株式会社 [協力] 東京急行電鉄/東急ホテルズ/渋谷エクセルホテル東急 [後援] 世田谷区
一般 S席7,500円(1階席・2階席センター)/ A席5,000円(2階席サイド)/ B席3,800円(3階)
 高校生以下 一般料金の半額(世田谷パブリックシアターチケットセンター店頭&電話予約のみ取扱い、年齢確認できるものを要提示) U24 一般料金の半額(世田谷パブリックシアターチケットセンターにて要事前登録、登録時年齢確認できるもの要提示、オンラインのみ取扱い、枚数限定)の会会員割引 S席7,000円 せたがやアーツカード会員割引 S席7,200円
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2013/09/20139.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2013年07月02日 16:25 | TrackBack (0)