私が2004年1月にシアターグリーンで観た『真夜中の弥次さん喜多さん』が、キャストも脚本・演出もそのままに、東京に戻って来てくれました。上演時間は約1時間45分。⇒公演公式サイトでもご紹介いただいている2004年のレビュー KUDAN Project過去レビュー⇒1、2、3
終演後のトークでは「何も変えてない。変わったとすると、加齢」と天野天街さん。そう、私もあの時から約9年8か月、年を取ったんですね。作品から感じることが前回とはかなり変わっていて、自分も加齢して、変わったのだなと味わいながらの鑑賞になりました。
⇒CoRich舞台芸術!『真夜中の弥次さん喜多さん』
【原作漫画(作:しりあがり寿 )】
【映画(監督・脚本: 宮藤官九郎)】
弥次さん(寺十吾)と喜多さん(小熊ヒデジ)は男性同士ですが恋愛関係にあり、ヤク中の喜多さんを、妻のいる弥次さんが支えるという設定は、原作漫画どおりだと思います。
目の前で行われるお芝居という虚構と、客席に観客がいて舞台上に役者がいるという現実との、境を溶かしていく試みとして、古典(クラシック)と呼んでもいい作品だと思いました。
大道具、小道具から感じる“懐かしさ”、そしてキャストのお2人の“加齢”も、虚構の中の現実(=リヤル)として受け取りました。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
演技を逆回し(?)しはじめたところで気分が高揚して、楽しくなってきました。
今回、一番面白かったのは、客席と舞台の間にある“壁”が「見える」「触れる」というくだり。緊張感がありました。
自分が生きてることを確認できるのは、他者の存在があるからこそ。でもその他者を欲するあまり、合体したい、溶け合いたいと思うようになると(そして実際に手がくっついてしまうと)、自分が他者で、他者が自分という状態になり、かえって自分の存在があやふやになってしまう。自分が溶けて消えてしまうようなイリュージョンが連続する、この作品のど真ん中には、ずーっと孤独があるように感じていて、客席に座ってる私自身の孤独も深まりました。生まれて死ぬまで孤独であり続ける人間という生き物が、いま、この空間に集まって1つのお芝居を共有し、無言のうちに共鳴したり反発したりしているんだなぁ、個の集合っていいものだなぁ等と考えていました。
人生なんて「あっちからこっちへ行くだけ」というセリフもありましたが、常に死のイメージがあるんですよね。儚い中にあるリアルな生(=命)を、汗だくの役者さんやうどんの出前などの、生(なま)の出来事から感じ取りました。
≪三重、東京≫
出演:小熊ヒデジ(てんぷくプロ)、寺十吾(tsumazuki no ishi)
原作:しりあがり寿、脚本・演出:天野天街(少年王者舘) 美術:田岡一遠 美術製作:小森祐美加 山中秀一 中村榮美子 照明:小木曽千倉 音響:岩野直人 映像:浜嶋将裕 小道具:丹羽純子 衣装:田村英子 作曲:珠水 振付け:夕沈 舞台監督:井村昴 チラシイラスト:しりあがり寿 チラシデザイン:アマノテンガイ 制作協力:(有)quinada 運営:西村和晃 制作:山崎のりあき 加藤智宏 山本麦子 小熊秀司
(日時指定・整理番号付・全自由席)
前半割(9/27~9/30)一般前売:3,200円(当日3,500円)
通常料金(10/1~10/6)一般前売:3,500円(当日3,800円)
大学生以下:2,500円(前売当日共/前半割はありません)
http://www.officek.jp/kudan/yazikita.shtml
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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