ワタナベエンターテインメントのイケメン集団D-BOYS、D2らが出演するDステの第14弾は、シェイクスピア作『十二夜』(過去レビュー⇒1、2、3)。演出・上演台本は2011年のD-BOYS STAGE『ヴェニスの商人』がとっても面白かった、青木豪さんです。
『十二夜』はロマンティックな恋愛喜劇でストーリーも面白いので、どのプロダクションで観てもほぼハズレなしというのが私の感覚なんですが、Dステならでは、今ならではの演出になっていて、とても楽しかったです。個人的には楽隊の生演奏(と演出)が特に良かったですね。上演時間は約2時間5分、休憩なし。
⇒CoRich舞台芸術!『十二夜』
あらすじはWikipediaでどうぞ(完全にネタバレしてますが、読んでから観ても楽しめる戯曲だと思います)。
開演前にラフな体操着姿の出演者(男性のみ)が、舞台上でエクササイズやゲームをしています。客席のほとんどはファンの女性だと思うのですが、そんなお客様の好反応もぞんぶんに取り込んで、会場のムードを温めます。ロビーで生演奏をしていたギター奏者を含んだ、笛、太鼓、ピアニカの楽隊が客席通路を通って舞台に登場。お芝居が始まる空気が徐々に盛り上がる中、開演前の準備体操の延長線上にオープニングがありました。『ヴェニスの商人』でもそうでしたが、身体表現やダンス(群舞)と演技を組み合わせた、古典の世界への導入が見事だと思います。
ヨーロッパのお話なので衣装は基本的にドレスなどの洋装ですが、舞台美術は和風。装置に込められた意味を考えると、大道具、小道具に和の要素を用いているのが、とてもマッチしています。生演奏のアンサンブル4人は、演奏自体がとてもお上手で聴かせてくれました。登場人物が「音楽を!」と楽隊に命じて演奏させたり、幕の裏側でBGMの役割を果たしたり、効果音役(時計)として登場することもあります。
出演者が男性のみですから、女性を男性が演じます。男女のラブシーンなのにBLにも見えるのがいいですね。ファンの女性客が多いので「何をやってもウケる」客席ではありますが、私のようなひねくれた演劇ファンが、筋がわかっているのに笑えて、ドキドキできたのは、セリフを言う人はもちろん、その周囲の人々のリアクションが、その場の空気を生きたものにしていたからだと思います。
D-BOYS、D2というと、テレビに出たりもしてるアイドル・グループですよね。私はテレビを見ないし、いわゆるイケメン舞台にも馴染みがないので、「アイドル」というものにあまり免疫がないんです。だからなのか、全く関係ないのかどうかわかりませんが、やっぱり人気がある人は光ってるなぁと思いました。自己肯定エネルギーが強いことは一種の才能ですよね。
ここからネタバレします。
特筆すべきは、舞台装置が神社だったこと。舞台中央の屋根のある美術は、能舞台のようでもあり、お祭りのやぐらのようでもあります。お芝居が始まる直前、役者さんは客席に背を向けて横一列に並び、神社に向かって二礼二拍手一礼をしました。この礼が行われた時、それまで沸いていた客席が一瞬で静かになり、厳かな空気が劇場を満たしたのです。「紀伊国屋神社にお芝居を奉納する」という構造になっているのだと解釈しました。私にとって「奉納する演劇」は震災以降の1つのテーマでもあり、今、この時に古典喜劇を若者が上演する意味を考える上でも、しっくり来ます。1600年代から変わらないバカ騒ぎや恋愛騒動を、神様の前で愉快に、懸命に演じることは、人間が自らの命に感謝し、演者と観客が一緒にそれをことほぐ行為(行事)だと受け取れるからです。
≪東京、大阪≫
出演:碓井将大、三上真史、池岡亮介、荒井敦史、加治将樹、鈴木裕樹、陳内将、山田悠介、近江陽一郎、山口賢貴、坪倉由幸(我が家)、ミッキー・カーチス、林健太(ピアニカ)、松山隼大(ギター) 柿崎寛人(リコーダー) 岡田旺久(パーカッション)
原作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出・上演台本:青木豪 音楽:笠松泰洋 美術:二村周作 照明:山口暁 音響:青木タクヘイ 衣裳:清水崇子(松竹衣裳) ヘアメイク:糸川智文 振付:広崎うらん 擬闘:栗原直樹 歌唱指導:広瀬奈緒 演出助手:松倉良子 舞台監督:筒井昭善 宣伝美術:末吉亮(図工ファイブ) 宣伝写真:坂田智彦+西村法正+菊地洋治(TALBOT.) 宣伝スタイリスト:COMASA 宣伝ヘアメイク:糸川智文 宣伝:大澤剛 票券・制作:上野正人 宣伝・制作:渡邉あや 制作デスク:西川陽子 プロデューサー:渡部隆 総合プロデューサー:渡辺ミキ 主催・企画・製作:ワタナベエンターテインメント
【発売日】2013/07/13 一般料金:7,000円(全席指定/税込) 初めまシート:4,000円(当日引換/税込)
http://www.watanabepro.co.jp/mypage/artist/dst14_twelfth-night.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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