男優ばかりの劇団スタジオライフが、劇団の代表作の1つである『LILIES(リリーズ)』を4年ぶりに上演します。⇒2009年の記者発表写真レポート
『LILIES』は複雑な劇中劇の構造をとった、カナダの劇作家ミシェル・マルク・ブシャールさんの戯曲で、ロマンティックな愛の悲劇でありながら、政治的主張も含んだとても面白い作品です。⇒ブシャール作品のレビュー
舞台美術が文学座の乗峯雅寛さんの手により一新されるのが、個人的には楽しみなところ(⇒乗峯さんが登壇されたセミナーのレポート)。劇団より製作発表レポートを頂戴しましたので掲載します。
●Studio Life『LILIES』⇒公演公式サイト
2013年11月20日(水)~12月8日(日)@シアターサンモール
※Sebastiani(セバスティアヌス)、Marcellien(マルケリアヌス)、Erigone(エリゴーヌ)チームのトリプルキャスト。
Erigoneチームのヴァリエ役は公演当日にキャスト発表。
⇒CoRich舞台芸術!『LILIES』
【写真(左から・敬称略):船戸慎士、笠原浩夫、松村泰一郎、仲原裕之、鈴木翔音、藤森陽太、山本芳樹、曽世海司】
【スタジオライフ公演『LILIES』製作発表レポート】
4 年振りの再演『LILIES』製作発表
スタジオライフ珠玉の名作がキャスト・ビジュアル一新で生まれ変わる!
劇団スタジオライフが、次回本公演『LILIES』の製作発表会見を行った。
カナダの戯曲家ミシェル・マルク・ブシャールによる本作は、1952 年のカナダの刑務所を舞台として紡がれる愛の物語。1996年には『百合の伝説』のタイトルで映画化され、世界各国で数々の映画賞を受賞している。戒律に厳しいカトリックが権勢をふるっていた前時代のカナダで、かけがえのない愛を見つけたふたりの少年――シモンとヴァリエの悲劇が、緻密なセリフの数々によって描出される。禁じられた愛のひとつの形として少年愛を扱ってはいるものの、会話劇の精密さや美しさ、キャラクター一人ひとりの造形、カナダの片田舎の社会風潮を観客に感じさせずにおかない筆力など、戯曲としての完成度は溜め息もの。人を愛し、何かを失ったことのある者ならば必ず心に突き刺さる普遍的傑作である。
スタジオライフがこの作品を舞台にかけるのは4年ぶり4度目。舞台設定が男子刑務所内であるため、役者全員が男性で構成されるスタジオライフとの相性は抜群で、2002 年の初演以来上演するたび大きな評判を呼んでいる。まさに劇団の代表作にして、ファンにとっても“特別”な演目のひとつ。
【写真(左から・敬称略):松村泰一郎、仲原裕之、鈴木翔音、藤森陽太】
会見では演出の倉田淳が、戯曲『LILIES』との出会いや初演時の心持ち、2度の再演を経てますます深まる作品への思いなどを熱弁。「生身の人間同士がぐっちゃぐちゃになってぶつかり合う、愛の闘いを描きたい」と意欲を明かす。さらには「優れた戯曲の条件のひとつは、観た人が“あっ、これは私の話だ”“私の知っている○○さんの話だ”と感じられることだ」との原作者ブシャール氏の言葉を紹介しながら、それこそが『LILIES』が世界中で上演されている理由ではないかと語った。
引き続き倉田から、今回の『LILIES』では新たな試みに挑戦する、との発表も。まずひとつには、若手俳優の大胆な起用。メインキャスト以外にもルーキーを大量投入し、パワー溢れる舞台になりそうな予感である。ふたつ目には、各界から高い評価を得ている美術デザイナーの乗峯雅寛氏を迎え美術デザインを一新、「生まれ変わった舞台装置になる」とのこと。他にも、トリプルキャストという布陣で各チームそれぞれの味わいを出していく点や、旧キャストが前回とは対照的な役どころで参加している点など、見逃せない2013 年版『LILIES』の魅力を挙げ、期待を煽った。
トリプルキャスト3チームのうち2チームにおいて主人公・シモンを演じる仲原裕之は、2009 年の『LILIES』でも同じ役柄を経験している。「4年前にやり残したことがいっぱいあります。以降様々な舞台を経験してきて、今だからできるシモンが絶対あると思っています」と折り目正しくコメントした。
一方、仲原以外でシモンとヴァリエを演じる3人(鈴木翔音、松村泰一郎、藤森陽太)はいずれも入団4年以内のホープであり、『LILIES』初挑戦。「先輩方と話している中で特によく出てくる作品の名前がこれです」(松村)、「お客さまにとっても思い入れのある作品だと認識しています」(鈴木)と、大役への抜擢に緊張気味の様子だ。そんな彼らに向けて仲原は、「前の『LILIES』の時、僕は稽古で倉田さんから“野武士みたい”ってダメ出しされてました(笑)。責任の重い役柄かもしれませんが、飾らず、自分のありのままでぶつかっていけばいいんじゃないかと思います!」とエールを送った。
また、今回の制作発表は若手キャストの紹介の意味も込め、銀座のトラットリアを借り切っての“製作発表+懇親パーティー”といった形式で行われた。ひと通りの会見が終わると、取材陣一人ひとりの間近へと役者があいさつに回り、より率直な質疑応答や意見交換がなされていた。(文:上甲薫)
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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