『石のような水』に続いてフェスティバル/トーキョー13(F/T13)の招聘演目を拝見。バック・トゥ・バック・シアターはオーストラリアの劇団です。所属俳優には知的障害を持つ方もいる、海外でも評価の高い団体だそうです。上演時間は約2時間弱。
健常者と障碍者の演劇だとジェニー・シーレイさんの演出作品(関連エントリー⇒1、2、3)の方が刺激的だなぁとか、現実と虚構が交わるのだと、最近観た城山羊の会の演出の方が緻密だなぁとか思ったり。
F/Tには常に、すごく期待しているのと、私の見方が「出演者(=俳優)寄り」なのも原因でしょうね。今の私は枠組み、比喩、批評といった要素より、目に見えたこと、体で感じたことを優先する傾向にあります。
⇒CoRich舞台芸術!『ガネーシャ VS. 第三帝国』
≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
インドの神・ガネーシャの旅物語×劇団内のいざこざ。ファンタジーとリアルを行き来する、ユーモアにあふれた演劇の冒険
映像や照明を駆使したイメージ豊かな空間づくりと、「生命」や「美」をめぐるさまざまな「標準」に斬り込む哲学的な思考で知られるオーストラリアの劇団、バック・トゥ・バック・シアター。
知的障害を持つ俳優たちと共に創作を続ける彼らが、インドの神ガネーシャの冒険譚とそれを上演する劇団内でのいざこざを併行させて描き、世界各国で好評を博した話題作を上演する。
果たしてガネーシャは、ナチス(第三帝国)に奪われた幸福の印「卍」(スワステカ)を取り戻すことができるのか─。時空を超えたファンタジックな冒険と、演出家と俳優たちの間で起こるリアルな揉め事との対比は、ユーモアさえをたたえつつ、物語(語ること)と、その背景にある現実との関係に鋭く斬り込む。
≪ここまで≫
演劇という虚構の枠組みを維持したまま、出演者にもともと備わった資質としての障碍を、ありのままに舞台に載せるのは高度なことだと思います。でもそれに頼り過ぎじゃないかと思いました。たとえばカーテンを動かす動作や姿勢など、細かいところが詰まっていないというか、重要視していないようで、集中が途切れました。
ここからネタバレします。
言葉を明晰に発することができない男性(例えば「アップル」と言えない。背が低い目で少々ぽっちゃり体型)が、とても魅力的でした。彼が動いたり、座ったり、言葉を発したりすることが、舞台をスリリングにしてくれます。彼と交流する健常者の俳優がちょっと気の毒に見えるぐらい。
カーテンコールでは知的障碍者の男性(=「アップル」と言えない人)が目立つ演出になっていました。彼だけが客席に向かって立ち、両腕を頭の上にあげると、自ずと拍手が起こります。その後で他の出演者が出てくる…ということが2回は繰り返されたと思います。せっかく障碍者も健常者も同じ俳優として舞台に立っているのに、1人だけ特別扱いをしてしまっていたのが残念でした。
"Ganesh Versus the Third Reich" by Back to Back Theatre / Direction: Bruce Gladwin [Australia]
出演:マーク・ディーンズ、サイモン・ラフティ、スコット・プライス、ブライアン・ティリー、ディヴィット・ウッズ
演出:ブルース・グラッドウィン 協同創作:ブルース・グラッドウィン、マーク・ディーンズ、マルシーア・ファーガソン、ニック・ホランド、サイモン・ラフティ、サラ・メインワリング、スコット・プライス、ケイト・スーラン、ブライアン・テリー、ディビット・ウッズ 照明デザイン:アンドリュー・リビングストーン 舞台美術:マーク・カフバートン デザイン&アニメーション リアン・ヒンキリー 作曲家:ヨハン・ヨハンソン 衣裳:大谷汐
東京公演スタッフ 技術監督:寅川英司+鴉屋 技術監督アシスタント:河野千鶴 舞台監督:渡部景介 演出部:櫻井健太郎 照明コーディネート:佐々木真喜子 (株式会社ファクター) 音響コーディネート:相川晶 (有限会社サウンドウィーズ) 字幕:幕内覚 (舞台字幕/映像 まくうち) 字幕・翻訳:エグリントンみか 助成:豪日交流基金 後援:オーストラリア大使館 協力:イソップ・ジャパン株式会社 主催:フェスティバル/トーキョー
一般前売開始:2013年10月5日(土)10:00より
料金:指定席 一般前売 4,500円(当日 +500円) 学生 3,000円、U18(18歳以下)1,000円(前売・当日共通、当日受付にて要学生証提示)
http://www.festival-tokyo.jp/program/13/ganesh/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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