プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』の舞台を現代の南アフリカのタウンシップ(黒人居住地)に置き換えた作品です。上演時間は約1時間45分(途中休憩20分を含む)。英語上演、日本語字幕付き。
黒人出演者によるマリンバとスティールパンの生演奏と、野性的なダンスと歌声で、プッチーニ版とは全く違う音楽体験ができました。イタリアのオペラを黒人が英語で歌い、日本人の私がそれを理解して楽しんでいること自体に、感動をおぼえました。
⇒CoRich舞台芸術!『プッチーニのラ・ボエーム』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
南アフリカのタウンシップを舞台に生まれ変わる「ラ・ボエーム」
1830年代のパリを舞台にしたプッチーニの名作オペラ「ラ・ボエーム」が、南アフリカのタウンシップ(黒人居住地)を舞台に、生まれ変わります!
ヒロインのミミは、プッチーニの原作と同じく、結核を患い命を落とします。プッチーニの音楽もほぼそのままにジャズやアフリカの伝統音楽もミックスした、マリンバとスティールパンの生演奏と、力強い歌声。躍動感あふれるリズムにダンスも加わり、貧困や病気と闘う若者たちの姿をダイナミックに描き出す、新しい「ラ・ボエーム」です。
声を楽器として昇華させた国、南アフリカが誇るカンパニー「イサンゴ・アンサンブル」は、イギリスの演出家マーク・ドーンフォード・メイがタウンシップ出身の若き芸術家たちと創立。2008年「魔笛」でイギリスのローレンス・オリヴィエ賞最優秀リバイバル・ミュージカル作品賞を受賞するなど世界各地で多数の芸術賞受賞に輝くカンパニーです。
南アフリカの若者が生きる「いま」のドラマに生まれ変わった「ラ・ボエーム」。圧倒的な迫力で私たちの魂に響きます!
≪ここまで≫
オーケストラではありませんし発声方法も異なりますので、オペラだと思って観に行くとちょっと違うと思われるかもしれません。私にとっては歌を聴く、ダンスを観るというより、全身で異文化のミクスチャーを浴びるような時間でした。『ラ・ボエーム』という名作オペラを介して、私が知らない国の、知らない人々の文化に触れ、違いを肌で感じ、心で受け留めました。人間って本当に、とことん違いますね。簡単にわかり合えなくて当然です。そして、その違いのひとつひとつが力強く、美しい。そんなことを考えいたら涙がポロポロ流れました。
ゾレカ役の女性ソプラノの歌が素晴らしかった!ミミ役のポーリーン・メイルフェインさんは演出補でもあり音楽監督もされています。詩人役の男性と比べると演技が冷静で、声が小さかったのは残念。結核を患っている役とはいえ、もっと情熱的でもいいんじゃないかしら。
ここからネタバレします。歌詞などは正確ではありません。
相思相愛になった詩人と造花職人のミミが「若者の日」を祝うパーティーに行くと、大勢の友達が歌い踊っていました。そこにゾレカが新しい恋人の政治家とやってきて、元彼を嫉妬させようとします。ゾレカは誰もが認めるゴージャスな美人という設定ですが、日本人の私からすると、その女優さんは「美人」ではありません。まず非常にふくよかな体型で、まるまるとしたお腹のラインを強調するようなワンピースを着ています。美の尺度が違うんですよね。男性の歌詞に「痩せている女のコは好みじゃない」といったものもありました。ゾレカの堂々とした立ち姿と迫力の歌声にすっかり魅せられ、詩人とミミや、その友人と店員などの他のグループの歌が重なっていく場面で、とても感動しました。
Isango Ensamble "La Boheme"
詞:ピーター・カン 演出:マーク・ドーンフォード=メイ 編曲:マンディシ・ディヤンティス/ポーリーン・マレファネ 主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 東京都/東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団) 共催:世界エイズ・結核・マラリア対策基金 公益財団法人日本国際交流センター(世界基金支援日本委員会事務局)
【発売日】2013/10/12 S席6,000円 A席4,500円 高校生割引1,000円 25歳以下2,500円 65歳以上5,500円 (要証明書) イサンゴ・アンサンブル「プッチーニのラ・ボエーム」&「トロカデロのドン・キホーテ」セット券 S席 8,400円 ※各種割引チケット及びセット券は一般発売より東京芸術劇場ボックスオフィスにて前売りのみ取扱
http://www.geigeki.jp/performance/theater037/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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