劇団東京乾電池の『かもめ』を拝見。演出は女優の角替和枝さん。上演時間は約2時間10分休憩なし。
原作に忠実なセリフ劇で面白かったー!ニーナを田舎くさくて純朴な凡人にして、古典悲喜劇を観客側にグッと引き寄せます。そして全体をニーナ(=かもめ)の物語と印象づける工夫のおかげで、とてもわかりやすい『かもめ』になっていました。
使われていた神西清訳『かもめ』は、青空文庫で読めます。
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レビューはネタバレ前まで。
≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より
芸術の革新を夢見る若手劇作家トレープレフと、恋と名声にあこがれる女優志望の娘ニーナ。
トレープレフは、恋人のニーナを主役に、新しい形式の劇を上演することにする。
しかし、トレープレフの母である大女優のアルカ―ジナと、その恋人で流行作家のトリゴ―リンは、まったく彼を理解しようとしない。
トレープレフは、田舎暮らしを嫌うアルカ―ジナの兄ソーリンに母への鬱屈した思いや、芸術の革新の必要性について語る。
ソーリン家の領地内、湖と地平線の眺めが広がる急設された仮舞台で、トレープレフの劇がいよいよ幕を開ける。
≪ここまで≫
ところどころダンボールを使った抽象空間に、具象の衣装、小道具、家具を用いて場面転換。安っぽいかと思いきや、衣装や道具が豪華でうっとり。アルカージナのドレスのレース使いがツボ♪ヘアメイクもしっかり。
演技スペースを舞台前と奥に分け、ストーリーは基本的に前部分で進み、奥の通路を使って場面の意味を補完したりプラス・アルファしたりします。
出演者の演技にバラつきはありますが、心情や関係性に、登場人物が戯曲の中で果たすべき役割がくっきり表れていました。演出にはっきりとした意図があり、芯が通っているからだと思います。
ニーナは服のセンスも悪く、お世辞にも美しいとはいえない少女として登場。その親しみやすさがミソだったんですね…!おかっぱ頭に丸メガネのキモくてダサいトレープレフの愚直さが魅力的。温厚そうでいて優柔不断ゆえにずるいイケメンのトリゴーリンが、執筆について本気で悩んでいることに共感できたのは収穫。アルカージナはわがままで愛らしくてプライドの高いゴージャスな大人の女優であることをキープしつつ、恋人を自分のものにするためには知能犯にも野獣にもなる、女の本性をさらけ出してくださいました。
ここからネタバレします。
【出演】アルカ―ジナ:宮田早苗 ニーナ:松元夢子 トレープレフ:岡部尚(ダブルキャスト:川崎勇人) トリゴ―リン:嶋田健太 ドールン:谷川昭一朗 ソーリン:伊東潤 マーシャ:吉川靖子 メドヴェージェンコ:山地健仁 シャムラーエフ:吉橋航也 ポリーナ:麻生絵里子 小間使い:鈴木千秋 ヤーコフ:本田彰秀 料理人:飯塚祐介
脚本:A・チェーホフ 訳:神西清 演出:角替和枝 舞台監督:戸辺俊介 照明:日高勝彦 音響:原島正治 舞台美術:柄本明 衣装:鈴木千秋 宣伝美術:血野滉修、山肩重夫 演出助手:沖中千英乃、太田順子、鈴木一希 企画:高田恵美 協力:ノックアウト 制作・主催:劇団東京乾電池
【発売日】2013/10/19 前売3000円、当日3500円
http://www.tokyo-kandenchi.com/2014kamome.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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