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2014年01月15日

【稽古場レポート】うずめ劇場『砂女←→砂男』[2]01/11都内某所

 ペーター・ゲスナーさんのインタビューの後、『砂女←→砂男』の稽古場でゲスナーさんによる『砂女』のシーン稽古と、出演者による『砂男』の読み稽古を拝見しました。

 『砂女』は人間関係の臨場感を追求した会話劇で、『砂男』は天野天街マジック炸裂!「2種類の全く違う芝居をやる」という意味がよ~くわかりました(笑)。『砂男』の直筆台本はシアターアーツ2014年春号に掲載予定だそうです!

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 ●うずめ劇場『砂女←→砂男』 ⇒演出家インタビュー
  2014/02/07(金) ~11(火)@ザ・スズナリ
  「砂女」原作=安部公房 構成・演出=ペーター・ゲスナー
  「砂男」原作=E.T.A.ホフマン 脚本・演出=天野天街(少年王者舘)
  「砂女←→砂男」オリジナルテーマソング『今日』(歌=UA 作曲=坂本弘道)
 ≪タイムテーブル≫
  2/07(金)14:00砂男/19:00砂女 
  2/08(土)14:00砂女/19:00砂男
  2/09(日)14:00砂男/19:00砂女
  2/10(月)14:00砂女/19:00砂男
  2/11(火)14:00砂女/19:00砂男
  ⇒CoRich舞台芸術!で予約できます。※1/31までチケプレ実施中!
   両作品ともに前売4500円なので、2公演通し券6800円だと2200円もお得!
   2/7(金)14:00開演の『砂男』は公開ゲネプロで一律3000円です。
   半券提示で割引になる飲食店あり。詳細は劇団にお問い合わせ下さい。

 ■『砂女』シーン稽古

 愛人関係にあるらしい大人の男女が寝室で駆け引きをする、とてもエロティックな場面。ほんの2~3分の短いシーンを、なんと2時間も繰り返して稽古されました。ゲスナーさんはこまごまとシーンを止めて、「今のはここがダメ」と率直にフィードバックされます。時には俳優の相手役をしてアイデアを出すこともありましたが、演技の根本的なあり方について話す時間が多く、その言葉はとても厳しいです。役者さんが自立を求められる現場ですね。
 ゲスナーさんがおっしゃっていたことは至極真っ当で、きつく言われる俳優さんはつらかったことと思いますが、何度も頷きながら拝聴しました。

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 ゲスナー:あなたは役者なのに、自分を演出している。自分の考えていることを口に出してもらえませんか?まだ“セリフだから”しゃべってる。自分がしゃべりたいから、しゃべるようにしてください。しゃべりたい理由を見つけて。このセリフを本当にしゃべりたいと思う理由を。今までの自分の経験を使ってください。

 ゲスナー:自分の悩みを見せた方がいい。自分の個人的なことを別にして演技をすることはできない。それを怖がっていてはだめ。体と関係を作ってください。そうじゃないと演技はできない。

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ゲスナーさん

 ゲスナー:(今のは)言われた通りのことをやっているだけ。あなたは無意識だけど、私を麻原彰晃(=独裁者)にしてしまう。私はドイツ人で、ヒットラーに祖母を殺されました。独裁者の国の人間だから気になるんです。私は独裁者になりたくない。失敗していい。私に言われたからやるのではなく、自分の思いとして自由にやってください。自分の意識でやるのが大事。

 ゲスナー:日本人は(目上の人を)尊敬しなきゃ、失礼のないようにしなきゃと考えるけど、舞台では反抗があっていい。逆に、犯行的になってくれた方がいいぐらい。あなたは(私に)合わせたいと思っている。でも合わせすぎると存在がなくなってしまう。チェスの駒になっちゃう。

 ゲスナー:今、あなたはただの“働き”になっている。あなたはいつも自分以外の人に決めてもらって、本当の自分の意見をまだ信じてない。自分のことを裏切っている。自分を信じないのは、役者が一番やってはいけないこと。自分に関係ないことをするのは失礼なことです。子供に戻るのはやめて。出された宿題をやるのはやめて。

 ゲスナー:相手と関係を作れ!相手と関係を作るしかない。これが好き、あれが嫌いとか、はっきりとした意見があれば作れる。そうでなければ人形です。舞台でパートナーシップをとるためには自分の意識でやるのが大事。そうすれば近づける。自分自身が役者になれる。

 ゲスナー:言われたとおりにしかしないのでは、足りない。あなたは一人ぼっちです。自分のことを大事にしてるだけ。自分ひとりで全部クリアしないといけないと思ってる。家に帰って自分だけで、自分の中だけでやってもだめ。稽古中にしかできないんです。その勇気がほしい。

 ゲスナー:役者はいつも山を登らなければいけない。


 ■『砂男』読み稽古

 ゲスナーさんが次のお仕事に行かれた後、出演者は『砂女』の群読部分を稽古し、次に『砂男』の読み稽古が始まりました。車座になって各自のセリフを言っていきます。台本は確認用に床に開いて置いていますが、基本的に見ません。セリフの確認作業も兼ねて、オープニングの数ページを繰り返しました。

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 最初の1分間ほど聴いただけで、私は(声は出さずに)大笑いしてしまいました!少年王者舘のお芝居をご覧になった方はご存じのことと思いますが、天野戯曲は言葉あそびやダジャレが多用され、1つの単語を複数人で発したり、トリッキーな発語順で輪唱のような効果を生んだり、とても独特なのです。機械的な丁寧語の中に突然、ホラー映画の決まり文句のような際立った印象を与える言葉が挿入され、どぎまぎ、わくわくさせられました。

 『砂女』はすでに通し稽古を済ませてほぼ完成しているので、数日後からは『砂男』に集中した稽古になるようです。セリフの意味と感情を一致させた演技をする俳優が多かったですが、天野さんの演出で様変わりしそう!2作品の本番がとても楽しみになりました。

 ※天野さん直筆の『砂男』の台本をチラっと覗かせていただきました。…容易にはワープロ打ちできないですね。そして文字がアーティスティック!雑誌掲載が決まっているのは、すでに台本が完成していることを意味します。天野さんは遅筆で有名な方でもあるので、今作品については完成度にも期待できるのではないでしょうか。

 ⇒CoRich舞台芸術!で予約できます。

 【『砂女』通し稽古写真】
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出演:井村昂、後藤まなみ、荒牧大道、荒井孝彦、石山慶、太田朝子、奥野美帆、キムナヲ、河村岳司、日下諭、日下範子、竹内もみ、高橋佑輔、谷原広哉、二宮彩乃、政修二郎、山村涼子
「砂女」 原作=安部公房 構成・演出=ペーター・ゲスナー
「砂男」 原作=E.T.A.ホフマン 脚本・演出=天野天街(少年王者舘)
舞台美術:石原敬 照明:桜井真澄  音響:岩野直人  映像:浜嶋将裕 音楽:坂本弘道 衣装:仲村祐妃子 宣伝美術:アマノテンガイ  ロゴ:田岡一遠  スチール:宮内勝 振付:夕沈  舞台監督:井村昂  舞監助手:伊東龍彦、村信保  演出助手:二宮彩乃、石坂雷雨 文芸担当:藤澤友 制作:佐藤武、松尾容子 主催:うずめ劇場
【発売日】2013/11/10 前売4,500円 当日5,000円 学生3,000円(要証明) 2公演通し券6,800円(団体扱いのみ) 未就学児童の入場は不可です。
http://uzumenet.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2014年01月15日 21:49 | TrackBack (0)