取材をさせていただいたうずめ劇場『砂女←→砂男』の初日に伺い、2本立ての両方を拝見。⇒ペーター・ゲスナーさんインタビュー ⇒稽古場レポート ⇒『砂女』のレビュー
まずは天野天街さん演出の『砂男』です。『砂男』はバレエ『コッペリア』、オペラ『ホフマン物語』のもとになったドイツの小説家ホフマンの短編小説。上演時間は約1時間30分弱。
天野さんの直筆脚本がシアターアーツ57号に掲載↓されています。絵も入ってますよ!
⇒CoRich舞台芸術!『砂女←→砂男』
≪あらすじ≫
ナタナエルは狼狽した。少年のころに恐れていた薄気味悪い男コッペリウスが、大人になった彼の前に再び現れたのだ。彼は婚約者クララと、その兄で良き理解者のロータールに手紙を書き相談する。
≪ここまで≫
取材をさせていただいたので、私には珍しく原作小説を読んでから伺いました。作・演出家の興味や問題意識などが反映されて、原作を外側から批評する舞台になっていて、とても面白かったです。言葉遊びや繰り返す演技、ダンス、照明、映像、音響効果などなど総合的に、天野ワールドをたっぷり楽しませていただきました。
ここからネタバレします。
開演前の前説アナウンスに劇中のセリフが組み込まれて、舞台美術、映像、俳優、生声の群読、録音の声が混ざり、幕開けから一気に小劇場の虚構の世界へ。下手手前にチェロの生演奏奏者(坂本弘道)がおり、クラシックとは違う演奏方法で劇に積極的に影響を与えていきます。
ナタナエルはオリンピアという愛らしい人形に恋をして、婚約者、家族、そして過去の記憶、さらには自分を大層悩ませていた、父の仇であるコッペリウスの幻影さえも忘れてしまいます。やがてオリンピアが人間ではないと知って目が覚めるのですが、自ら展望台から飛び降りて死んでしまいました。
セリフがくどいほど繰り返されたり、役者さんが人形のように動いたり踊ったり(またすぐ人間に戻ったり)、未来の出来事を先に描いたり(生きているロータールが死んだナタナエルと話したり)。果たして人間は本当に人間なのか(人形なんじゃないか?)、本当に生きているのか(死んでるんじゃないか?)、時間は流れているのか(止まっているんじゃないか?)といった問いが、そのまま舞台にあるように感じました。
【写真:2種類のチラシ(再掲)】
俳優さんで目を引いたのは、若いころのナタナエルを演じた谷原広哉さん。若々しい素直さと清々しさ、動きの切れの良さなど、小気味よかったです。ナタナエルにめがね(と望遠鏡)を押し売りする気味の悪いコッポラを演じた高橋佑輔さんは、作り込んだキャラクターの演じ分けに安定感がありました。人形オリンピアの作り主であるスパランツァーニ教授役の政修二郎さんが、観客とやわらかくコミュ二ケートしてくださったおかげで笑えました。女優さんではナタナエルの婚約者クララ役の奥野美帆さんが、美形でほんのり色気があって良かったです。
出演:荒牧大道、後藤まなみ、日下諭、奥野美帆、谷原広哉、政修二郎、高橋佑輔、河村岳司、石山慶、山村涼子、日下範子、太田朝子、キムナヲ、竹内もみ、二宮彩乃、
「砂男」 原作=E.T.A.ホフマン 脚本・演出=天野天街(少年王者舘) 「砂女←→砂男」オリジナルテーマソング 『今日』(歌=UA 作曲=坂本弘道) 舞台美術:石原敬 照明:桜井真澄 音響:岩野直人 映像:浜嶋将裕 音楽:坂本弘道 衣装:仲村祐妃子 宣伝美術:アマノテンガイ ロゴ:田岡一遠 スチール:宮内勝 振付:夕沈 舞台監督:井村昂 舞監助手:伊東龍彦、村信保 演出助手:石坂雷雨 演奏:坂本弘道 文芸担当:藤澤友 制作:佐藤武、松尾容子 主催:うずめ劇場
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※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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