『砂男』に続いてうずめ劇場『砂女』を拝見。⇒ペーター・ゲスナーさんインタビュー、⇒稽古場レポート
マチネとソワレの間は、パンフレットに載っていたおすすめのカフェ「Blikje button」で過ごしました。お店のホームページにも公演紹介が!連携素敵!
安部公房作『砂の女』は小説ですが、原作にとても忠実なお芝居になっていました。軸は俳優の演技ですが、肉体も使う、小劇場演劇ならではの作品でした。上演時間は約2時間10分弱。
⇒CoRich舞台芸術!『砂女←→砂男』
≪あらすじ≫
昆虫採集に出かけた男(荒牧大道)が、砂に覆われた村で一人で暮らす女(後藤まなみ)の家に閉じ込められてしまう。
≪ここまで≫
やっぱりこの小説、凄いですね…。今作では時代を現代に置き換えていましたが、まったく遜色なく成立していました。
男と女、村人との会話に、男の想像や回想が入り込みます。男と女が暮らすあばら家に、その場にいるはずのない都会の人々が登場するなど、演劇ならではの表現で小説が立体化されていました。ゲスナーさんがインタビューでおっしゃっていた、砂を使わずに『砂の女』を演出する方法とは、映像だったんですね。
女役の後藤まなみさんの演技が素晴らしかったです。ある場面で、男の手を振り払って舞台中央に屹立する姿に感動しました。身体能力も高い方ですね。
男、女、村の老人以外の主要人物は、ステージごとにキャストが変わるそうです。
ここからネタバレします。
女優さんが全裸で舞台上にいるのを観たの、いつぶりかしら…。裸は苦手なんですが、有史以前の人類と、洋服を着ている現代人とを対比させる意図があるとすると、必然だと思いました。突然ドサっと落ちてくる砂は、2人が暮らす家を容赦なく襲い続けます。柱がぐらぐら揺れる中、シーツをまとっただけの姿で、女は立ち続けました。なぜか彼女の身を守ろうとする男の手を振りほどくんです。思いつめた表情をしていたので、彼女は砂に埋まって死んでしまった夫と子供の、後を追いたかったんじゃないかと想像しました。自ら死のうとする必死の行動に、命の輝きが見えたんじゃないかと。
【写真:2種類のチラシ(再掲)】
産気づいた女を村人たちが運び出した後、男は縄梯子がかかったままになっていることを発見し、登って地上に出ます。自由の身になったにもかかわらず、なんと男は再び縄梯子を降りて、女の家に腰を落ち着けてしまい、終幕。あんなに脱出したがっていたのに、自分から砂との暮らしに戻るという驚きの結末です(原作どおり)。男が地上から地下に戻ると決めた瞬間を、何らかの演出で際立たせた方がわかりやすいんじゃないかと思いました。
他人の顔色を見ながら教師として現代の常識に合わせる生活と、野性に身を任せて性交し(女は自然に身ごもり)、ただ生きるために砂を運ぶ生活。男にとって、果たしてどちらが幸せなのでしょうか。インターネットがインフラになって何もかもがどんどん便利になり、その便利さに埋没した暮らしを送っている結果、(今も昔も変わらない)流行にからめとられている私自身への問いかけでもあると思います。
↓パンフレットでご紹介いただきました。ありがとうございました!
“「しのぶの演劇レビュー」で、ゲスナーのインタビューをチェック!”
「観劇レビューサイトとしてお馴染みの「しのぶの演劇レビュー」を運営されている高野しのぶさんが「砂女←→砂男」の稽古場を見に来てくださいました。その際のレポートとゲスナーへのインタビュー記事が同サイトに掲載されています。内容充実、素敵な仕上がりの記事に、ゲスナーもびっくり。開演前の待ち時間などに、是非、アクセスしてみてください!」
出演:荒牧大道、後藤まなみ、井村昴、政修二郎、日下諭、高橋佑輔、竹内もみ、太田朝子、日下範子、山村涼子、荒井孝彦、谷原広哉、奥野美帆、キムナヲ、河村岳司、石山慶、
「砂女」原作=安部公房 構成・演出=ペーター・ゲスナー 「砂女←→砂男」オリジナルテーマソング 『今日』(歌=UA 作曲=坂本弘道) 舞台美術:石原敬 照明:桜井真澄 音響:岩野直人 映像:浜嶋将裕 音楽:坂本弘道 衣装:仲村祐妃子 宣伝美術:アマノテンガイ ロゴ:田岡一遠 スチール:宮内勝 舞台監督:井村昂 舞監助手:村信保、小森祐美加 演出助手:二宮彩乃 文芸担当:藤澤友 制作:佐藤武、松尾容子 主催:うずめ劇場
http://test.uzumenet.com/suna/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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