わかぎゑふさんが作・演出される新作です。玉造小劇店は関西の団体ですが、この作品は関東の俳優も交えて東京でお稽古されたんですね。上演時間は約2時間15分。大阪公演もあります。
明治時代の東京の洋装店を舞台にした人情喜劇、でしょうか。1時間45分経ったころからグっと面白くなりました。
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「こういう形式でやります!」というお約束というのか、演技の前提条件のようなものがドドーンと前面に出ていて、私との相性は良くなかったですね。ぶっ飛んだ虚構を成立させるには平凡すぎるし、日常を描写するには嘘が多い(詳細の詰めが甘い)ように感じました。カーテンコールでは玉造小劇店をよく知っているお客様向けのコメントが多く、んー、こういうのが好きなお客様も多いと思いますが、私は単純にアウェイでした。
私は大阪で生まれ、高校3年生まで大阪で暮らしていました。役者さんのセリフを聴きながら、同じ大阪弁でも話す役者さんによってこれほど違うんだなぁと、少々驚きつつ拝見していました。大阪弁ってお笑い芸人さんのしゃべり方によく出てると思うんですが、もともと「つくりこみ」が入ってるんですよね。自然な会話でさえ既にけれん(外連)がかってるというか。使ってる自分でも手強い方言だなぁと思います。
ここからネタバレします。
洋行を間近に控えた皇族(若松武史/執事役:浅野雅博)が洋装店に皮のコートを発注し、店主らが皮の生地と職人集めに奔走するところから、物語が深化します。明治時代の革製品(主に衣服)に対する穢れの意識、男尊女卑、階級差別などなど。今も根強くありますよね。あと、体裁を守るための犠牲とか「臭い物に蓋」とかも。
私は小学校で同和教育を毎年毎年、何度も何度も受けてきたので、皮の話題が出ただけでハっとするんです。教育の成果、威力を今更ながら強く実感しました。
京都の公家の世話をしてきた“鬼”の一族の長(曾我廼家八十吉)が、投獄された娘(=皮職人)の命をあきらめると言った時、芸者上がりの洋装店の女性店長(西牟田恵)が、派手に啖呵を切って反論します。それに心動かされた職人たち(佐藤誓、桂憲一ら)が、皆で協力して難題を解決し、ハッピーエンドを迎えます。古いしきたりを変えようとする力は、外側から出てくるものだよなぁと思いました。このお芝居では特に女性の力に焦点が当たっていました。
≪東京、大阪≫ 玉造小劇店配給芝居vol.13 冬の劇場25 日本劇作家協会プログラム
出演:うえだひろし、曾我廼家八十吉、佐藤誓、桂憲一(花組芝居)、浅野雅博(文学座)、西牟田恵、伊東孝明、小椋あずき、山藤貴子(PM/飛ぶ教室)、浅野彰一(あさの@しょーいち堂)、江戸川卍丸、荒木健太朗(StudioLife)、谷畑聡(劇団AUN)、山内庸平、わかぎゑふ、谷川未佳、若松武史
脚本・演出:わかぎゑふ 舞台監督=安田美知子 舞台美術=池田ともゆき 照明プラン=高山晴彦 照明オペレーション=千原悦子 音響効果=三好里見(スタジオ・シン) 音楽=佐藤心(スタジオ・シン) 大道具=アーティスティックポイント 衣裳・小道具=リリパットアーミーⅡ 宣伝美術=東學(188) 制作=谷川未佳 中村祐子 制作協力=岡本康子(Trash2) 尾崎裕子 島尾朋子 東京公演共催=TBSラジオ&コミュニケーションズ 主催・企画・制作=玉造小劇店
前売・当日=4500円(全席指定・税込) 大学生以下=3000円(全席指定・税込)玉造小劇店HP予約・当日券のみ扱い。 学生証を提示していただく場合がございます。平日マチネ割引(12日14時公演)前売・当日=4000円(全席指定・税込)
http://tama-show.jpn.org/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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