きたむらけんじさんが作・演出される劇団東京フェスティバルの公演を初めて拝見。ジャーナリストの津田大介さんがよくこの劇団の公演を宣伝されていたので、観たいと思ってたんです。⇒きたむらけんじ×津田大介スペシャル対談(2013年)
今から約50年前の町工場が舞台の、実話をもとにしたお芝居でした。今回が2度目の再演で、高校生も上演しているそうです。モデルになった会社はこちら。上演時間は約1時間30分。
大雪の日に観に来られなくて振替をしたお客様がいらしたこともあり、今日は超満員でした。でも明日、明後日は空席あるそうです。
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≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より一部引用。
『倍返しだ!』…なんて簡単にいえないあなたに贈る
心に優しい感動ストーリー
『この職場には、幸せがつまっている』
黒板で使うチョークの最大手メーカー
『日本理化学工業』(川崎市)で約50年前に
起こった実話をベースに
フィクションを加えて再構成した感動物語。
≪ここまで≫
きたむらけんじさんによる前説がとっても丁寧で、親切で、大人で…新鮮でした。「ここは駅前劇場だったよね…?」と脳内で確認したほど(笑)。開場時間に流れている音楽の解説までなさったのも、とんがった小劇場劇団とは対照的だなぁと思いました。
お芝居を観終わって感じたのは、きたむらさんには観客に伝えたい明確なメッセージがあり、それを届けたくて、楽しいお芝居を作って上演しているのだということ。とはいえこの作品は過剰な啓蒙ムードが支配するわけではない、おおらかな人情喜劇でした。私は気難しい演劇フリークなので、説明的なセリフと演技が苦手で入り込めないこともありましたが、“日本理化学工業スピリット”は受け取ることができたように思います。ありがとうございました。
知的障碍者役の若い女性が、誰かに褒められる度に首を少し曲げて、うつむき加減ではにかんだ笑顔をするのがすごく可愛らしかったです。
ここからネタバレします。
たとえば「知的障碍者は義務教育を終えると田舎の施設に入れられ、一般社会に出ることがない」という事実があったとして(劇中で語られたことです)、それを文章で読んだり他人から聞いたりすることと、目の前で役者さんがそのエピソードを演じるのを観ることとでは、全く違う体験になるんですよね。お芝居で観て、知ると、肉付きのよい知識になる気がします。
私にとって一番衝撃的だったのは、昭和35年当時の会社の経営者は、死ぬまで面倒を見る気で社員を雇っていたというエピソード。今とは違いすぎる……。あと、水俣病は遠い過去の歴史ではないことも実感できて良かったです。
そして「仕事に人間を合わせるのではなく、人間に仕事を合わせる」という発想とその実現は感動的。下記は、劇中のセリフで一部引用されていました。日本理化学工業の公式サイトより引用します。⇒「~日本理化学のもう一つの使命~」
「導師は人間の究極の幸せは
人に愛されること、
人にほめられること、
人の役に立つこと、
人から必要とされること の4つと言われました。
働くことによって愛以外の3つの幸せは得られるのだ。
私はその愛までも得られると思う。(会長 大山泰弘)」
暗転の転換中に毎度流れていたピアノ曲は"Someone to watch over me"ですよね。好きな曲です。中学生の時、STINGが歌う映画の主題歌を聴いたのが、私のこの曲との初めての出会いでした。
第14回公演
出演:岡田達也(演劇集団キャラメルボックス)、菊池均也、桑江咲菜、土屋史子、滝寛式、朝倉伸二
脚本・演出/きたむらけんじ 制作協力/重留定治 美術/渡辺佳子 照明/たなか一絵 照明操作/長澤宏朗 音響/香田泉 音響操作/福西理佳 舞台監督/佐藤秀憲 加藤唯 制作/新居朋子 制作助手/平岡あみ 宣伝美術/北村瑠里 企画製作:劇団東京フェスティバル
【発売日】2013/12/21 前売り、当日ともに価格は共通です 4,500円
http://www.tokyofestival.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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