岩松了さんが若い俳優と創作するお芝居の第二弾。出演者は1人を除いて全員が実名の役を演じています。上演時間は約1時間45分。
ある劇団の稽古場を舞台に夢と現実が入り混じる現代口語劇でした。岩松さんのお芝居は自然な会話をしているようで、当然のごとくフィクションでもあるところが魅力ですよね。
⇒CoRich舞台芸術!『宅悦とお岩~四谷怪談のそのシーンのために~』
≪あらすじ≫
演劇賞を受賞した演出家ミナミ(小林竜樹)が主宰する劇団の稽古場。次回作は『東海道四谷怪談』の宅悦とお岩のシーンに焦点を当てる予定だが、脚本ができていない。ミナミは劇作家の安藤に執筆を依頼しているが、安藤はあまり乗り気ではない。というのも、宅悦役の尾上が降板してしまったのだ。
≪ここまで≫
劇場に入ると、舞台面側に障子と戸板のパネルが数枚、客席から舞台を隠すように建てられていました。そのパネルを移動させて場面転換します。どんな場面でも『四谷怪談』と、劇中劇であることが示されているようでした。
うまくいっていない稽古と殺伐とした人間関係を同時多発会話で表現。ほんの一言しゃべるだけで、登場人物それぞれの個性が際立ち、顔と名前、キャラクターが一致しました。舞台より映像で活躍してる役者さんが多いようですね。持ち物を生かすキャスティングとキャラクター設定になっているのかしら。「こういう人がああいう演技をすると面白い」というポイントを押さえているのだと思います。
アイドル(?)の“梅宮万紗子”のマネージャー役の駒木根隆介さんは、裏のある人物なのがぴったり。
お岩役の吉牟田眞奈さんの怒りが振り切れた様子が可笑しかったです。とことんやってくださるので可愛らしく見えました。彼女を怒らせる尾上寛之さんが憎らしく思えるほど(笑)。
ここからネタバレします。
パネルがどんどん移動して、劇作家安藤の夢のシーンが挿入されていく場面で、小道具の滝沢恵と付き人の藤木修が出会い系サイトを経由して待ち合わせをします。なぜ安藤はそこにひっかかったのかな~。彼女が尾上、児玉、高橋の間で揺れ動いていたからなのかしら。
舞台でシーン稽古が始まると、熱心に演じているのに誰もその稽古を見ないどころか、雑談を始めてしまいます。この場面は人間のわがままさ、愚かさを表現しつつ、稽古の長期間を短く凝縮しているのではないかと考えました。とても面白かったです。
きっとまた血の参事が起こるんだろうなと思ったら、やっぱりそうでした。読めちゃったのは残念。
ふしぎな軽み、意外性、衝撃はあるけど、重みやまとまった空気感は重視されていないように感じました。そこが岩松作品らしさというか、独自性なのだと思うのですが、今作は私にはちょっと物足りなかったですね。初日だったせいもあるかもしれません。
岩松了プロデュース Vol.2
出演:安藤聖(劇作家)、梅宮万紗子(妊娠詐欺のアイドル)、尾上寛之(公演を降板した元・宅悦役)、亀田梨紗(ミナミとできてる女優)、児玉拓郎(安藤に首ったけ)、小林竜樹(演出家ミナミ)、駒木根隆介(ヤクザ)、清水優(劇団員)、高橋ひろ無(安藤に惚れて児玉を刺す)、滝沢恵(小道具)、永岡佑(アイドルとヤクザに騙される伊右衛門役)、橋本一郎(舞台監督)、藤木修(高橋ひろ無の付き人)、裵ジョンミョン(宅悦役)、吉牟田眞奈(お岩役)
脚本・演出:岩松了 舞台監督:伊東龍彦/舞台美術:原田愛/照明:杉本公亮/音響:高塩顕 舞台監督助手:吉成生子/照明操作:古矢涼子/衣裳協力:雲出美緒 大道具:ステージファクトリー/小道具:高津装飾美術 宣伝美術:坂村健次/舞台写真:松井康一郎/制作:土井さや佳 制作協力:コムレイド、リトルジャイアンツ 企画・製作:(有)鈍牛倶楽部
【休演日】3/10,16 自由席:3,300円/指定席:3,800円 前半割引 自由席:3,000円/指定席:3,500円
http://www.dongyu.co.jp/iwamatsu-pro/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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