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2014年03月10日

松竹『スーパー歌舞伎II(セカンド)「空ヲ刻ム者 ―若き仏師の物語―」』03/05-29新橋演舞場

 市川猿之助さんが主演されるスーパー歌舞伎II(セカンド)第一弾『空ヲ刻ム者』を拝見。作・演出はイキウメの前川知大さんです。佐々木蔵之介さん、浅野和之さん、福士誠治さんら現代演劇の俳優も出演されています。上演時間は約4時間20分(途中30分、20分の幕間を含む)

 若手演劇人である前川さんの歌舞伎界デビューなので楽しみにしていました。最後まで観ての感想は…ひとことで言うとこちら↓

 ⇒CoRich舞台芸術!『空ヲ刻ム者 ―若き仏師の物語―

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 舞台はいにしえの日本。
 ある山間の村に、十和(とわ 市川猿之助)という才能に恵まれた若い仏師がいた。しかし彼は、村人たちの暮らしも病床の母親も救うことのできない仏教に苛立ちを募らせていた。
 十和の幼なじみの一馬(かずま 佐々木蔵之介)も不作に苦しむ村人たちを憂い、彼らの暮らしをよくするため、都に出て官吏の道を選ぶ。一方、母の死と都から来た役人との争いから十和も村を出なければならなくなる。その後、牢に入れられ、盗賊と交わりながら成長する十和。かたや都に出たものの下級役人として無力感を募らせる一馬。それぞれの思いを胸に別々の道を歩んだ十和と一馬。一度は分かれた二人の道は、やがてまた交わる日を迎えるのだが…。
 ≪ここまで≫ 

 定式幕が開くと口上が始まってびっくり。お芝居を観に行くというより「猿之助に会いに来た」という感覚が歌舞伎の醍醐味だな~。「~~申し上げ奉りまする」って素敵な日本語ですよね。一人ずつ味わわせていただきました。

 十和と一馬の心境の変化が衣装の色合いで几帳面に表現されていたので、登場の度に楽しかったです。たとえば「黒が増えた/黒地にラメになった/紫を被った」など。猿之助さんの装いがどんどん派手になっていって、終盤は大胆なアクロバット&スペクタクルに。最後はもうストーリーなんてぶっ飛びましたね(笑)。そう考えると、もっと設定や展開はシンプルにしてもいいんじゃないかと思いました。いろいろ削ってしまっても大丈夫じゃないかと。

 最初の幕間(30分)は2階のかべす茶屋で、開演前に予約していた肉うどん(800円)をいただきました。美味しゅうございました。
 こちらの会場限定のお酒↓、新橋演舞場2階ロビーで販売中。本数制限がありますので、開演前の早目のご購入がよろしいかと。

 ここからネタバレします。

 猿之助さんとのNHK大河ドラマ「風林火山」 (2007年) での共演から始まり、現代現劇でのご縁を経ての今回の歌舞伎出演だったと、蔵之介さんが口上でおっしゃっていました。

 「大きな目的のためには犠牲を厭わない」「○○(たとえばお上、たとえば仏像)のためなら命もかける」なんてことは美談でもなんでもなく、「目の前にある命が大事」という力強いメッセージを伝えてくれました。こういう真面目なところが前川作品の好きなところです。

 巨大な装置が入れ替わったり、額縁を覆うほど大きな布の幕を何度も衣替えしたり、どっさりと音がするほどの大量の紙吹雪を降らせたり、大がかりで豪華な演出も楽しめましたが、私が一番好きだったのは十和の母が亡くなる場面。ばったり倒れたりせず、客席に背を向けてゆっくりと舞台奥へと歩いて去っていきました。その時、ステージはドライアイスの煙でしめやかに覆われ(死者が登場する場面はドライアイスあり)、母の向かう先には大きな鏡が設置されていました。背中と顔が同時に見えたり、立ち去るようでいて、実はこちらに向かっているようにも受け取れたり、色んな想像ができました。その後、十和を守った仏師見習いの伊吹と、十和の師匠となる仏師の九龍も同様に死者として登場するので、生者と死者をつなぐ媒体として仏像(=鏡)の存在を感じることができました。

 十和は再び仏師となった時に、「仏なんてない。仏像(=鏡)に映るのは自分自身だ」という境地にたどり着きます。十和と彼の作った“仏像”(木くずのみ)のおかげで一馬は目を覚まし、2人は農民を武装させて利用しようとする貴族たちに反旗を翻しました。しかし、多勢に無勢。絶体絶命のピンチに陥ったその時、巨大な不動明王像が出てきて(九龍の魂が入ってる?)、2人の敵を一掃してくれるのです。さらには空飛ぶ道具をプレゼントしてくれたので、十和と一馬は武装した農民たちが集まる朱雀門へと(彼らを止めるために)飛んでいくことができました(ここで宙乗り)。となると、「やっぱり仏は存在した(困った時の神頼み)」ってことになったんじゃ…。ま、いっか!


≪東京、大阪≫
【出演】十和:市川猿之助 長邦:市川門之助 双葉:市川笑也 菖蒲:市川笑三郎 興隆:市川寿猿 喜市:市川弘太郎 時子:市川春猿 吾平:市川猿弥 九龍:市川右近 伊吹:福士誠治 鳴子:浅野和之 一馬:佐々木蔵之介 森一生 ほか
作・演出:前川知大 スーパーバイザー:市川猿翁 美術:堀尾幸男 照明:原田保 音楽:長沢勝俊 音楽:藤原道山 衣裳:毛利臣男 音響:山見孝 振付:尾上菊乃丞 舞台監督:井口祐弘 林和宏 制作:岡崎哲也 真藤美一 小野田惠 本田景久 企画協力:パルコ ケイファクトリー 製作:松竹株式会社
【休演日】3/17 【発売日】2014/01/25 1等A席15,000円 1等B席11,000円 2等A席7,000円 2等B席5,000円 3階A席5,000円 3階B席3,000円 桟敷席16,000円
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/2014/03/post_56.html
http://www.shochiku.co.jp/play/enbujyo/schedule/2014/3/post_137.php
http://www.kabuki-bito.jp/news/2013/11/post_956.html


※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2014年03月10日 18:19 | TrackBack (0)