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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2014年03月15日

サンプル『シフト』03/14-23東京芸術劇場シアターイースト

 松井周さんが作・演出される劇団サンプルが、2007年に上演した『シフト』を再演します。初日の上演時間は約2時間(休憩なし)。

 めっちゃくちゃ刺激的で面白かったです!ある意味過激と言える性的表現がありますので、私の感覚ですとR25ですね。ただ、その表現方法が…私にはツボ!(笑) ミーハーな言葉で言うと、“尊敬すべき変態”が観られるので(笑)、大人はシアターイーストに行くべし!(心が大人なら10代でも大丈夫♪)

 緻密に組み立てて連携する俳優の演技と、美術、照明、音響、衣装などのスタッフワークとの融合から生まれる劇的時間は、まさに舞台芸術。ダムのある村の小さなコミュニティーがそのまま“世界”の姿になり、凝り固まった因習という近景と、人類の歴史という遠景の両方の視座を得て、私たちが生きる今も自ずと浮かび上がります。

 【舞台写真 撮影:青木司 左から奥田洋平、野津あおい】
sample_shift1s.jpg

 ⇒CoRich舞台芸術!『シフト

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 山と川に囲まれた村。
 元々の村はダムの建設によって沈んでいる。
 大型スーパーの進出はその村を危機に陥らせる。
 村民は伝統を蘇らせ、村おこしをはかろうとする。
 村のある家に、都会から男がやってくる。
 娘と結婚するために。
 村では今、外からの血が必要とされている。
 ≪ここまで≫

 初演同様、相撲の土俵を模したステージでした。天井からはいくつも綱がぶら下がり、綱の先には透明のラップにくるまれたさまざまな物体が揺れています。たとえば洋式トイレの便座、自転車、障子の木枠、たまねぎの束など。物をひっかける部分は丸い輪っかになっていて、首を吊り用の綱にも見えます。その綱と物がセットで命を示しているように思いました。
 土俵の綱に沿うようにきれいに配置されていた干し草は、俳優が動くごとにバラバラと散らばり、ステージを汚していきます。土俵の中の人々は干し草の中にいる家畜にも見えました。

 あえて強烈にキャラクタライズされた登場人物たちの常軌を逸した行動を笑いながら、自分もまた他者から見ればただの変態なのだと心の中で嗤いました。…それにしても俳優の変態っぷりは凄いです……。強靭な理性と技術がないとできないんじゃないでしょうか……特に家具と…(言えない)。初演で古舘寛治さんが演じていたおじさん役を、武谷公雄さんが演じているとわかった途端、「うわああぴったりだっ!!!」と思って吹き出してしまいました(失敬!)。武谷さんは真性マゾだとおもふ。

 松井さんが当日パンフレットに書かれているとおり、『「伝統」や「習慣」はそのように始まり、終わり、いずれ、また始まる』のだと思いました。どんなものも生まれて生きて、思いもかけない事件をきっかけに、あっという間に滅ぼされ、衰弱して消え入ります。私もやりたいことを成し遂げられず、志なかばで、「間に合わない」で死ぬでしょう。それが地層になっていくんですね。

 【舞台写真 撮影:青木司 右は黒宮万理】
sample_shift3s.jpg

 ここからネタバレします。後から書けたら書きます。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:松井周 天野天街

 松井:犬のブリーディングを人間でやったらという発想。別の視点で人間を描こうとした。

 松井:吊り下がる物がラップに巻かれてるのは量販店「ドン・キホーテ」のイメージ。商品の羅列。資本主義の幽霊というか、生ものに触れられないイメージ。
 天野:床に敷かれた藁がエロティックですね。卵も出てくるし。

 天野:「(そんなに忘れっぽいと)将来自伝書けないよ」「指紋だらけ」というセリフが印象に残った。

 天野:異世界を(緻密に)構築してしまうと夢でなくなる。部分だけを作る方が広がりがある。

 松井:このお芝居は23日までやってます。“相撲みたいな芝居”と言っていただければ。(会場で笑いが起こる。全然違うし!)
 天野:(サンプルは)新・土着系、または土足系とか。
 松井:あ、土着、いいですね。よくアングラって言われるんですが(そうでもないので)。


サンプル:13
【出演】吉田鷹男(みすずの婿):古屋隆太(サンプル・青年団)、安藤(花屋店主・大手建設会社の息子・真性ペドフィリア):奥田洋平(サンプル・青年団)、恵(ダムで息子を亡くした老女):野津あおい(サンプル)、二子(晴子とみすずのおば):兵藤公美(青年団)、晴子(みすずの姉):黒宮万理(少年王者舘)、鍋島(養鶏所経営・二子の情夫・晴子とみすずの実質的な父?):武谷公雄、みすず:市原佐都子(Q)
脚本・演出:松井周 舞台監督:谷澤拓巳 舞台美術:杉山至+鴉屋 照明:木藤歩 衣裳:小松陽佳留(une chrysantheme) ドラマターグ:野村政之 WEBデザイン:斎藤拓 宣伝写真:momoko japan フライヤーデザイン:京(kyo.designworks) 制作:冨永直子(quinada)、富田明日香 企画:松井周、三好佐智子(quinada) 主催:サンプル、quinada 助成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団) 、芸術文化振興基金 提携:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
【発売日】2014/01/25(全席自由席・整理番号付)
一般    前売:3,500円、当日:3,800円
<前半割> 前売:3,200円、当日:3,500円 ※3月14日~16日限定
学生    前売・当日共:2,500円(来場の際、受付にて学生証提示)
高校生以下 前売:1,000円(東京芸術劇場ボックスオフィスにて前売のみ取扱い)(来場の際、受付にて学生証提示)
※高校生以下チケットの当日の販売はありません
http://samplenet.org/2013/12/06/13_shift/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2014年03月15日 00:39 | TrackBack (0)