森新太郎さんがイプセン戯曲を演出されます。『幽霊』はノルウェーで1881年に発表された5人芝居です。上演時間は約2時間10分休憩なし。
意外な演技方法だったので最初はどうやって観ればいいのか、つかみづらかったのですが、慣れてくると乗っかって楽しんでいけました。戯画的で人形めいた演技の会話劇で、岩松了作品のようでもあり。美術がハイセンス!照明とのコンビネーションに驚かされました。
⇒CoRich舞台芸術!『幽霊』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
舞台はノルウェー西部のフィヨルドに臨む名士アルヴィング家の屋敷。
十年前に他界した夫の功績を讃える記念式典の前日、牧師のマンデルスは、信仰に背を向けて生きる未亡人が、故アルヴィング大尉の名声に傷をつけていると非難する。
しかし彼女は、夫の私生活が救いようのないほど堕落していたこと、そして一人息子のオスヴァルのため、世間にはそれをひた隠しにして生きてきたことを告白する。
未亡人が愛のない偽りの人生を送っていたことを知り、牧師はショックを隠しきれない。
そんな中、留学先のパリから帰国したオスヴァルが、女中レギーネとの結婚願望を母親に打ち明ける。
しかしレギーネは、故アルヴィング大尉が放蕩の挙句、当時の女中に産ませた異母兄妹であった・・・・。
≪ここまで≫
誤解や思い込みのせいで皮肉な結末がやってくる、面白い戯曲です。ごくごく素直にイプセンって凄いな~と思いました。
ここからネタバレします。
家具も衣装も現代風でシャープな印象。下手に玄関へと続く廊下があり、中央は四角いステージです。中央より少し上手側の奥に、大きな観葉植物が置いてあります。木の部分がねじれていて、上部に大きな緑色の葉が垂れ下がっています。つまり能舞台なんですね。お能のように登場人物は死者、つまり“幽霊”というわけです。
舞台中央に長さ10メートルはありそうな大きな白いソファが設置されています。下手側は背もたれのあるソファ状ですが、上手に向かって背もたれが徐々に低くなり、上手側はベンチ状です。主な家具はそれだけで、道具を移動させる場面転換もありません。シンプルで見事なステージングだと思いました。
自分は脳軟化症(?)だと告白した息子オスヴァルが、とうとう介護が必要な状態になってしまった瞬間、舞台奥の白い巨大な壁の裏から照明が当たり、壁の骨組みが透けて、まるで柱と窓の組み合わせのように見えてきます。同時に舞台上の家具にも白々と照明が当たり、なんと一瞬にして居間が病室に変貌します。衣装も小道具も何も変わらず、ただ照明が変わっただけなのに!恐ろしい景色でした。
【出演】ヘレーネ・アルヴィング:安蘭けい オスヴァル・アルヴィング:忍成修吾 牧師 マンデルス:吉見一豊 女中 レギーネ:松岡茉優 大工 エングストラン:阿藤快
脚本:イプセン 翻訳:毛利三彌 演出:森新太郎 美術:伊藤雅子 照明:佐々木真喜子 音響:藤田赤目 衣裳:半田悦子 ヘアメイク:川端富生 演出助手:坂本聖子 舞台監督:足立充章 稽古場プロンプター:チョウヨンホ 主催:ホリプロ
指定席 \8,000 コクーンシート \5,000
http://hpot.jp/stage/yurei
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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