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2014年03月23日

【写真レポート】アクターズワークス「小川絵梨子シーンスタディ」【1】3日間のあらまし

 アクターズワークスが主催する「小川絵梨子シーンスタディ」に俳優として参加してきました。講師の小川さんから見学ではなく参加するよう勧められ、主宰者で俳優指導者・女優の柚木佑美さんが快諾してくださったので、合計3日間ガチンコで闘ってまいりました…!
 4回に分けてレポートします。⇒〔3日間のあらまし・当ページ〕〔小川語録1〕〔小川語録2〕〔しのぶの感想

 ●アクターズワークス
  「現場で活躍する映画監督や演出家のワークショップ第二弾
   小川絵梨子シーンスタディ」告知エントリー
  期間:2014年03/17(月)~19(水)
  時間:3日間とも13:30~17:30(結果的に3日間とも18時を過ぎました)

 小川さんは第3回小田島雄志・翻訳戯曲賞、第19回読売演劇大賞優秀演出家賞・杉村春子賞、第48回紀伊國屋演劇賞個人賞、第55回毎日芸術賞・第16回千田是也賞、第21回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞されている、日本で今もっとも注目を集める30代の翻訳・演出家の一人です。
 ⇒プロフィール(カムトゥルー内)(シス・カンパニー内
 ※小川さんの発言を掲載している過去エントリー⇒

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 私が観たいストレート・プレイを作ってくれる日本人は小川さんではないかと、この数年ずっと思ってきました(⇒私のインタビュー記事、⇒俳優の演技についての個人的考察 ⇒書評)。
 小川さんのワークショップの内容と彼女の発言を、俳優や演出家の皆さんと共有したい。それによって彼女のような演出家と協働できる作り手が増えて欲しい。また、俳優の仕事とは何で、一体どういう職業なのかを、私が体験したことを通じてお伝えしたい。そんな思いでまとめた長文レポートです。よかったら観客の皆さんも読んでいただけたらと思います。

■3日間のあらまし

 参加者は男女半々で12名(時々13名)。アクターズワークスなどでキャラクター&シーンクラスまで修了した俳優のみを対象にした、ハイレベルなワークショップです。

【 1日目 】

 ●自己紹介
 車座になって名前を言っていく。全員がこの場で呼ばれたい名前の名札をつけています。

 小川:今回のワークショップにおける私の目的(仕事・ミッション)は、俳優のインナーワーク(内面・感情の訓練)等のワークショップから、本番用の実際の稽古場へと橋渡しをすること。顔合わせ、稽古、本番を3日間で疑似体験する試みです。
 柚木:日本の俳優が稽古場でダメ出しを言われて落ち込んでしまうのは、演出家が“先生”でもあるから。皆さんに「自分は大丈夫だ」と思ってほしい。そのために小川さんに来ていただいた。

 ●鬼ごっこ
 まずは普通の「鬼ごっこ」から。鬼を1人決めて、タッチされたら手を挙げて鬼であることを宣言し、誰かを追いかけることの繰り返し。大人が本気で爆走。私はしょっぱなに転んで左ひざを打撲。次は「名前鬼」。ルールを忘れました…というか最初に思いっきり間違えて皆に笑われました。ここでも汗だく。

 ●ゲーム
 勝つごとに1~3点もらう。減点もある。自分で加算して最後に得点を発表。一位と二位、そして最下位とブービー賞には、小川さんが翌日に飲み物をプレゼント。

 1.「ジェスチャーゲーム」:2チームに分かれてチーム対抗戦。各チーム内の1人がお題をジェスチャーで表現し、早く正解を出したチームが勝ち。正解するごとにジェスチャーをする人は変わる。お題は「世界の国の名前」「映画の題名」「戯曲の題名」。正解が出たら全員が床に座る(その早さを競う)というルールだったため、スクワットを数十回やることに。筋肉痛確定。
 2.「ウィンクキラー」:全員でトランプを引いてキラーを決定(1人また2人)。全員で室内を歩く内、ウィンクをされた人は倒れて離脱。キラーを探す心理戦になる。
 3.「主犯共犯(ジェダイVS帝国軍)」:全員でトランプを引いて帝国軍を決定(主犯1人と共犯2人)。全員が目を閉じて待つ中、音をたてずに、主犯の命令で共犯2人がそれぞれに誰かを叩く。目を開ける。叩かれた2人が他の人々(=ジェダイ)と協力して帝国軍を探す。ジェダイの中に帝国軍が紛れた状態での心理戦・嘘つき合戦になる。

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 ここまでで2時間経過。

 ●公開お悩み相談室
 参加者の質問や相談に小川さんが答えていく。小川さんが約1時間半しゃべりっぱなし。

 ●戯曲『12人』シーンスタディー
 男女の比率を均等にしてランダムに2チームに分けて、小川さんが配役発表。鬼ごっことゲームの間に参加者を観察して配役を決めたと思われる。登場人物を『12人』から『8人』にして上演。人数合わせのためにAチーム、Bチームの両方に出る俳優あり。
 ※『12人』は『12人の怒れる男』(⇒Wikipedia)の舞台を現代日本に置き換えた小川さんの戯曲です。⇒過去レビュー

 Aチーム、Bチームの順に1~15ページまで読む。

 小川:明日に向けての宿題です。できればセリフは覚えないで。顔を台本に向けなくてもいいぐらいにしてくること。何をしなきゃとか考えなくていいように。相手のセリフを追わなくていいように。70%ぐらいは相手と居られるように。聞いていられる状態にする。自分がその場にどう居て、どう聞くか、なぜ発言をしないのかが重要。

 小川:戯曲内で議論される事件について把握しておいてください。登場人物たちは初対面です。初対面だから、誰もがいい風に思われたい。相手に感じ良く居てください。常に役として居ること。この場で起こることが全て。

 18時25分解散。

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 【 2日目 】

 ●ゲーム
 1.「ジェスチャーゲーム」:お題は「東京の地名」「料理の名前」。やはりスクワットで汗だく。
 2.「ウィンクキラー」:キラー2人から開始。私は初めてキラーになり撃沈。ウィンクで両目閉じちゃうし…。
 3.「裏切り」:小川さんが考案したゲーム。2人1組のペアを作り1人だけ余りを出す。余りになった人は2人組になれるよう他のペアに突進。ペアになってる人々は自分の相手を裏切って、余りの人とペアになることができる。皆、1人になりたくないので叫び、走り回り、くっついて離れてが延々と続く…。私は人数の関係で不参加で高みの見物。めちゃくちゃ面白くて笑いが止まらず、お腹が痛くなりました。
 4.「主犯共犯(ジェダイVS帝国軍)」:私は初めて共犯になり勝利(⇒打ち上げで“魔女”呼ばわりされご満悦)。

 ここまでで約1時間経過。

 ●戯曲『12人』シーンスタディー
 Bチーム、Aチームの順に読む。その後、小川さんによるノート(ダメ出し)と宿題。

 小川:登場人物は4日間ずっと法廷で傍聴していた。だからしゃべりたくて仕方ない。世間話はもっとわいわいして。ヴォーカル・エナジー(声の力)を上げて。エネルギーを高くしてください。

 小川:『12人』はリアクション芝居。話すことだけじゃなく、リアクションでその人物がどういう人なのかわかる。具体的なことを想像してください。言葉が具体的であることが大切。

 小川:どんな事件だったのか視覚化しましょう。被告が父親に殴られてボコボコにされたのなら、どういう風に?体にあざもあったでしょう。きっと法廷で写真も見たよね。エリートのお父さんの顔写真も、放火された家の写真も。4日間を視覚化して具体的に想像しておく。裁判で聴いてきたことを視覚化する。自分の中に持っておく。事実を体に落としていかないといけない。

 小川:長いセリフを言う人は、しゃべってる時ほど、聞いてください。相手の話を聞いているのが大事。しゃべっていることに自意識を向けないこと。大事なのは自分のペースじゃなく、作品のペース。

 小川:小道具を(自分で持ってきて)使っていいので、自分の役ができる作業を探ってください。具現化するのがいい。

 簡単な装置を建て込んで、18時15分ごろ解散。

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 【 3日目 】

 ●戯曲『12人』シーンスタディー
  各チームに10分間の作戦タイムを与えた後、Aチーム、Bチームの順に読む。その後、小川さんによるノート。

 小川:なるべく広く、自分からスペースを使うこと。果敢にやっていってください。
 小川:ぼんやり感想を言ってるみたい(それではダメ)。文頭にある「えー…」というセリフでも、他者と関わろうとしている「えー…」にしてください。言葉が停滞しないことが大事。このお芝居の登場人物はみんな、納得できる評決を出したいんです。

 ●エクササイズ (約20分間)
 「トラスト(TRUST・信頼)」:6~7人が立って円になり、中央に1人立つ。中央の人は周囲の全員とひとりずつアイコンタクトを取ってから、目を閉じて体の力を抜いて、左右前後の自由な方向に倒れる。それを周囲が力を合わせて受け止め、もとの位置に戻してあげる。何度か繰り返してから、中央に立つ人を交代していく。倒れるには勇気がいる。受け止める側は倒れる人を怖がらせないようにする。お互いに味わう。

 小川:中央の人は自分の意志じゃなく、流れるままに飛び込んで。力を抜いて、棒になってください。倒れるのに不安にならないで。この面子なら絶対に受け止めてくれる。大丈夫!
 小川:あせらない。不安にならない。私たちが自分を信じなければ、受け止められない。私たちも彼女(=中央の人)の重みを感じさせてもらいましょう。彼女の重みを感じられることを喜んでください。
 小川:これは芝居と同じこと。舞台上で起こることと全く同じです。倒れてきてくれるから、受け止められる。
 小川:でもTRUSTをやったからって、一緒にやった人全員を信じなきゃダメってことじゃないですよ(笑)。

 ●戯曲『12人』シーンスタディー
 Aチーム、Bチームの順に読む。その後、小川さんによるノートと今回のワークショップのまとめ。

 小川:最初の1日目からたったの3日間で、皆さんはここまで自分でやったんです。シーンスタディーはたった2日間で、ぐんぐん良くなりました。相手のために、芝居のために、進めることができていた。みんなが(何かを)持ってきて試そうとしてくれた。自信を持ってください。現場なら稽古初日にこれぐらいできるといいですね。

 18時10分ごろ終了。装置や荷物を片づけて撤収。そして打ち上げ。


 ※計4回のレポートです⇒〔3日間のあらまし・当ページ〕〔小川語録1〕〔小川語録2〕〔しのぶの感想

写真提供:アクターズワークス、高野しのぶ
アクターズワークス「現場で活躍する映画監督や演出家のワークショップ第二弾 小川絵梨子シーンスタディ」
期間:2014年03/17(月)~19(水)
告知エントリー:http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2014/0201172728.html


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Posted by shinobu at 2014年03月23日 15:33 | TrackBack (0)