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2014年04月04日

【写真レポート】SPAC「ふじのくに⇄せかい演劇祭2014」プレス発表会①03/27アンスティチュ・フランセ東京エスパス・イマージュ

 SPAC・静岡舞台芸術センター(⇒公式ツイッター)が「ふじのくに⇄せかい演劇祭2014」を開催します(過去エントリー⇒)。

 今年は開催時期がゴールデンウィークに変わりました。SPAC製作の2演目と日本のお芝居が1演目、フランス、ドイツ、スペインの5演目の他に、映像上映が4つあります。

 SPACが製作した舞台『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』(演出:宮城聰)と『室内』(演出:クロード・レジ)が、今夏のアヴィニョン演劇祭に公式招聘されるというビッグニュースの報告会もありました。

 ※2回に分けて写真レポートを掲載します。⇒写真レポート②
 ※長いレポートですので、写真を目印にして、気になる演目からご覧ください。

 ●SPAC「ふじのくに⇄せかい演劇祭2014」公式サイト
  2014年4月26日(土)~5月6日(火・祝)
  会場:静岡芸術劇場、舞台芸術公園、他
  ・ステージ数が少ないのでご予約はお早めに!※完売演目あり。
  ・東京・静岡間の夜行バスあり!
  ⇒CINRA「東京中心ではない多様性のあり方 芸術総監督・宮城聰に聞く

 ■演劇祭のキャラクターの名前を募集中!

 宮城:演劇祭のキャラクターをSPACの衣裳部が作りました。目と鼻と口でできています。静岡の町をうろうろすることになりそうです。夏目漱石流に言いますと「名前はまだない」(笑)。今、名前を募集中です。可愛がってやってください。

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 ■アンスティチュ・フランセ日本・芸術部門主任のディアーヌ・ジョスさんのご挨拶

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ディアーヌ・ジョスさん

 ジョス:SPAC『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』が今年のアヴィニョン演劇祭の公式プログラムに招聘されました。宮城さんの才能の偉大さと、その才能が世界有数の演劇祭から認められたことを示す、非常に意義深いものです。クロード・レジと日本の俳優の皆様たちによる『室内』もアヴィニョン演劇祭で再演されます。

 数年来、SPACはフランスを代表する演出家や劇作家を招いて来られました。その交流と成果としての共同製作、そして何より人と人との関係が日仏文化関係の中心にあって、それをさらに豊かに強いものにしてきました。私共とSPAC、そしてSPACとフランスのアーティストや演出家との交流関係は既に長きに渡り、そして今後も続いていくことでしょう。

 宮城様、そしてSPACの皆様の飽くことのない芸術的な交流への熱意に、この場をお借りして私個人としても心から御礼申し上げます。皆様、ぜひ静岡でお会いしましょう。

 ■芸術総監督より「ふじのくに⇄せかい演劇祭2014」のテーマについて

 宮城:今の世界情勢、とりわけアジアの情勢について、かつて歴史上で起こったことが繰り返されるのではないかと、不安に感じられていることと思います。夏目漱石は小説「三四郎」の中で「日本より頭の中のほうが広いでしょう」「とらわれちゃだめだ」と書いています。日露戦争に勝って日本の文化的なナショナリズムが高まり、一種の盛り上がりのようなものが多くの国民の中に生まれていたであろう時期に、漱石は警鐘を鳴らしていた。本当にそういう時代に今、日本が突入した感じがするんです。

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宮城聰さん

 日本ばかりではなくアジアの国々でも、経済のグローバリズムの渦中で国内のさまざまな不満や格差が広がる中、文化をナショナリズムの道具にして不満を外に向けていくような動きや力学が働いている。これは歴史上いろんなところで、何度も何度も、繰り返されていることですよね。
 我々芸術に関わっている者が、そういう状況で一体どういうスタンスを取ればいいのか、どういう活動をすればいいのかが、本当に問われている。まさにアーティストとして正念場に差し掛かろうとしていると思います。我々が表現者としてできるほとんど唯一のこととは、「多様な価値観をひとつのお皿の上に併存させて、その状態自体が面白い、楽しい、盛り上がることなんだという実例を示すこと」。表現をする側が出来ることは、そのことだろうと僕は考えているんです。

 今の状況では、自分たちと感覚の違うもの、生理的に違和感があるもの、価値観を異にするものを排除したくなる。「同質性の中で一緒にやる方がいい」「価値観が違う人は出て行ってくれ」「別の価値観を持った人間同士でくっつけばいいじゃないか」といった感覚が蔓延しかねない。歴史を見てもそうですよね。
 そういう時にアーティストがやれることとは、「同質の価値観を持つ単一の人たちの中でできる表現もあるけれど、ひとつのお皿にいろいろな価値観が併存している方が豊かで面白い」と、観た方に実感していただくこと。それによって「ちょっと感じが違うと思っていたけれど、排除しなくてもいいのかな…」とか「一緒にやっていった方が、むしろ社会は衰弱しないのかな…」と感じてもらえればと思っています。
 いろんな価値観があり、多様性があり、日本にも世界にも色んな人がいることを、楽しんでもらう。「色んな人がいることって、なかなか面白いよね」と感じてもらう。それがこういう状況の中でせかい演劇祭をやることの意義じゃないかと思っています。


 ■SPAC『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』 ⇒過去レビュー 写真:(C)日置真光
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 解説:「ふじのくに⇄せかい演劇祭2012」で連日、超満員となり、2013年のフランス・ツアーでも大成功をおさめた宮城聰演出による祝祭音楽劇の頂点。ふたたび日本平の野外劇場に舞い降ります。

 宮城:今年のアヴィニョン演劇祭に行く前に、静岡で上演させていただきます。ものすごく煎じ詰めて言ってしまいますと、この作品で僕が伝えたいことは「芸術文化における“オリジナル”なんていうものは、この世に存在しない」ということなんです。さっき文化的ナショナリズムの話を申し上げましたけれど、今のような状況だと、どこの国も「○○は私の国がオリジン(起源)である」「世界中に広まった○○はもともとは私たちの国の文化だった」「私たちの国には純粋に培養された○○という芸能、芸術、文化がある」「○○は他にないものですよ」ということを、何かにつけて言いたがるんですね。
 しかし、僕の管見(=狭い考え)かもしれませんけど、今までいろいろな文化芸術を見てきた結論は、純粋培養で他からの影響を受けずにその地域だけで育まれた芸術文化に、たいしたものはないということ。いや、それはほぼ存在しないのだということ。これが僕の考えです。

 宮城:今日(こんにち)凄いと言われている芸術や文化は常に、自分たちの持っているものと外から来た異物との出会いと、相互の化学反応、変容によって洗練されて、今のクオリティーに達しています。歴史の授業では古代ギリシャの彫刻の“八頭身”はギリシャ人の発明だと習いましたが、実際ギリシャに行って色んな彫刻を見てみますと、さまざまな美意識がぶつかり合って、一種の“いいとこ取り”をして生まれてきたことがわかります。
 アジアの芸術もそうです。たとえば『マハーバーラタ』はその典型ですね。インド人は当然のようにインド独自のものだとおっしゃる。もちろんインド人が千年以上に渡り、『マハーバーラタ』を使って歴史、道徳、哲学を学んできたことには敬意を表すべきです。しかし思想や芸術性がひとつの土地独自のものだということは、ほとんどあり得ない。必ず外部からの影響を受けたり、場合によっては先住民の思想や美意識の影響を受けたりしている。
 ですから、仮に『マハーバーラタ』が平安時代の日本に伝播され入ってきたとしたら、日本の当時の美意識と『マハーバーラタ』の思想や内容が何らかの化学反応を起こして、新しい物として立ち上がっていただろう…それを今試しに僕らがやってみよう…というのが、僕が演出した『マハーバーラタ』の趣旨なんですね。ですから観ていただいた方には、文化芸術の混交と、混交によってしか文化芸術の洗練はあり得ないということを感じていただければと思っています。


 ■SPAC『タカセの夢』
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 解説:静岡のティーンエイジャーによる世界レベルのコンテンポラリー・ダンス。『ユメミルチカラ』というタイトルだった初演から4年。東京、大阪、韓国で喝采を浴びてきました。

 メルラン・ニヤカムさんからのビデオメッセージ↓

 ニヤカム:『タカセの夢』は何のお話でしょうか?子どもたちに希望を与えるためのものです。

 宮城:『タカセの夢』はSPACの製作したダンス作品です。振付・演出はカメルーン出身でパリでご活躍のメルラン・ニヤカムさんで、僕は人間としても非常に尊敬している方。出演者は静岡県内の中高生です。登壇しているこの3人は、5年間続いているスパカンファンというプロジェクトの一番初めから、ずっと参加しているメンバーです。3人とも始めた時は中学1年生で、この春から高校2年生ですね。

 ↓出演者の宮城嶋静加さん
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 宮城嶋:中学1年の時と、高校生になってからの作品に対する気持ちがすごく変わっているのを感じています。最初のころは先輩や、ニヤカムさんのテンションや体力についていくのが精いっぱいだったんですが、今はみんなを引っ張っていかなきゃいけない。技術だけでなく気持ちや、作品を理解して演じるということを考えながら、どうしたらニヤカムさんや私たちが伝えたいことを、お客さんに伝えられるのかを常に考えています。それがだんだんわかってきたのは成長したからかなと思います。今年で5年目になって、まだまだ技術も精神的にも足りないところはあるけど、集大成として、お客さんに届けたいものを届けられたらいいなと思っています。

 ↓出演者の秋山実優さん
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 秋山:私は踊ることも、メンバーもニヤカムさんもSPACも、みんなすごく好きで、この作品をやることが本当に楽しすぎて、全然離れられないでいます。今回が5年目で私たちの集大成になります。ニヤカムさんはよく私たちのことを手にたとえるんです。ちょうどメンバーが10人で指が10本あるから。手のひらがないと指が立てないように、私たちもニヤカムさんや木野彩子さんやスタッフの方々に支えられて、舞台で生き生きのびのびと踊ることができます。そういう感謝も忘れずに、今年は今まで以上に張り切って、はじけて、踊っていきたいと思っています。

 宮城:アシスタントの木野彩子さんは大変優れたダンサーで、ご自身でも作品を発表されています。

 ↓出演者の高瀬竣介さん
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 高瀬:自分はメンバーの中で唯一の男で、最初は自分の演技に自信がなくて、稽古も通うのが辛くて嫌だったんです。でもニヤカムさんが温かく、みんなを家族の一員として見てくれて、ニヤカムさんと木野さんとメンバー12人が、自分にとって居やすくて心地よい環境になって、会えることがすごく楽しくなりました。年を重ねていくうちにメンバーが若い子たちに変わっていって、自分が引っ張っていかなきゃいけない立場になった。そうしたら自信がついてきて、自分が恥ずかしがってはいられないなと思っています。今は学校にいるうちからいつも「早く夏にならないかな、早く稽古始まらないかな」と思うようになりました。今年が最後になると思います。今まで以上の、最高の公演になるように、子供らしい、子供ならではのパワーをお客さんに届けられたらいいなと思います。がんばります。

 宮城:僕はこの作品はもう何べん観たかわからないんですけど(笑)、とにかく何べん観ても毎回別の世界に連れていかれるんですね。観終わった後に高い敷居をまたがないと元の世界に戻れなくなるんです。
 ニヤカムさんはモラルや体の在り方、生き方などの全てにおいて、あまりにも純粋な方。あんなに計算や処世術といったことを持ち込まないで、今日の資本主義社会でやっていけていること自体が驚きです(笑)。そういう意味で非常に珍しい人なんですね。“今日の社会”においては特殊な人物で、“本当の世界”から言えば非常に真っ当な人かもしれないんですけど。
 ニヤカムさん自身は自分は孤独だなんて言い方は絶対しないけれども、今の世界では途方もない孤独においやられていると思います。それは母国カメルーンにおいてさえも。この「社会から切り離されてしまったが、もっと巨大な世界とは密接に結びついている」という感覚が、『タカセの夢』という作品の世界そのものなんじゃないかと思います。
 高瀬くんは最初にまるでニヤカムさんの少年時代の分身のように出てくるんです。夢想の世界にしか自分の居場所を見つけられない少年がたった1人で登場し、だんだんと大きな世界と結びついていく。最後は子供たち10人が、先祖から子孫にいたる大きな流れの、リングの中のひとつの輪となっていく。そういうエンディングです。まだご覧いただいてない方には、ぜひご覧いただきたいと思います。


 ■KUDAN Project『真夜中の弥次さん喜多さん』 ※前売り完売 ⇒過去レビュー

 解説:アッと驚く仕掛け、スピーディな展開は最後まで目が離せない。しりあがり寿と天野天街、漫画界と演劇界を代表する二人の鬼才による奇想天外演劇。静岡初演となる今公演は1回限りのステージです。

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天野天街さん

 天野:この紹介映像はネタがばれないように派手なところを削ってますので、普通のお芝居みたいに見えてますけど(笑)、秒単位でおかしなことが起こっていきます。とても小さな劇場でやることを前提として作った芝居です。初演は2002年ですから12年前です。去年も東京で上演したんですが、ほとんど何も変えていません。いつもは本当に小さな小屋で細かいことをいっぱいやるんですが、今回は広い劇場です。それはそれで見え方も面白いんじゃないかと思います。…あまり内容のことは言いたくないんですね、実はね(笑)。

 KUDAN Projectは小熊ヒデジと寺十吾という2人の俳優の2人芝居のためにつくったユニットです。それぞれに別の劇団をやっていて、こういう芝居をやる時に集まります。『真夜中の~』は12年の間に中国や東南アジアでも上演しました。「この世界は、有るのか無いのか」「私という存在は、居るのか居ないのか」に特化した、「明確なものとはいったい何なんだろう」「わかってしまったものとはいったい何なんだろう」という話でございます。

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 天野:物語は抽象的ではないんですけどね。原作は十返舎一九の「東海道中膝栗毛」をもとにした漫画で、ヤク中の喜多さんと、喜多さんを恋い慕う弥次さんという2人の男が、お伊勢を目指すロードムービーです。「お伊勢に行けば何とかなる、他のところに行ける」と信じて、伊勢という地続きの場所よりももっともっと遠くのシャンバラ(理想郷)を目指す2人は、一体どうなってしまうんだろう…というのが眼目の漫画であり、芝居であります。
 原作では本当に色んな場所で色んなことが起こります。この芝居はそのロードムービーの中の、ある一か所で、先にも後ろにも、進めないし戻れないような状況下に、色んなものをぶち込むという形を取っております。ともかく、ともかく、色んなことが起こるので、少なくとも飽きるような芝居はございません!(→隣席の宮城さんが笑う) 自分の作品を語るのは本当に苦手なんですが(笑)、そのような感じです。どうもすみません。

 宮城:今年のせかい演劇祭に日本の演劇を1つを選ぶならばコレだと、迷わず思いついた作品です。天野さんはまさに「こういう人も日本にいるんだ!」と驚かされるような方なので(笑)。先ほど多様性や異なる価値観の話をしましたが、「本当にこういう人がいるんだ、人間って捨てたもんじゃないぞ」とつくづく実感させてくれる作品だと思います。


 ■ニコラス・シュテーマン演出『ファウスト 第一部』
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 解説:文豪ゲーテによる『ファウスト』は世界文学の最高峰と評される長編戯曲です。大変注目を集めるドイツの演出家ニコラス・シュテーマンによる2012年の舞台『ファウスト』は、ベルリン演劇祭で高い評価を受け、シュテーマン氏は批評誌の年間最優秀演出家賞に輝きました。二部構成で上演時間が8時間を超える長さにもかかわらず、観客を夢中にさせ続けた作品で、今回は第一部のみを上演。もちろん日本初演です。悪魔に魂を売った天才が見た甘美な悪夢をお楽しみください。

 宮城:第一部のみですが、第一部だけでも数百ページある戯曲です(笑)。この作品を観た時、俳優の魅力というのか、いい役者っていうのはこういうものなのかとつくづく思いました。最初のうちは何人かの役者が役を交換したり、一人の役者がいくつもの役を読んだり、稽古場であたりをつけているような感じで始まるんです。だんだん主役が決まっていくんだけれども、いわゆる美形、美声、体のキレといった普通の物差しで測れるような良さとは全然違っていて、ともかく目が離せなくなってくるんですね。シュテーマンさんはドイツを代表する演出家で、その初めての日本公演ですので、ぜひご注目ください。


 ■日仏合作『ジャン×Keitaの隊長退屈男』 ※世界初演
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 解説:フランスの演出家ジャン・ランベール=ヴィルドが、SPACの肉体派俳優、三島景太の演技に一目ぼれして実現したフランスと日本の合作。昨年から2ヶ国で稽古を重ね、ついに誕生する一人芝居。朽ちた櫓に浮かぶイワタニ隊長。果てなき夢想の行く末は!?

 宮城:今、映像で写されていたのはフランスでの試演会の様子です。ほとんどの観客は日本語のセリフがわからなかったはずなのに、みんな感動してしまったそうです。
 今日(こんにち)、“男の誇り”ってなかなか見つけ出すことができませんよね。夢だ、虚妄だ、既にそんなものあり得ないと言われるような“男の誇り”を追及していく内に、意外にもフランス人のジャン・ランベール=ヴィルドと三島景太の共通項があぶりだされてきて、それが観客に伝わったんじゃないかと。体だけ見ていても十分楽しめる、そういう作品だと思います。


 ■スペインの体験型演劇『よく生きる/死ぬためのちょっとしたレッスン』
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 解説:コロンビア出身の文化人類学者でもある演出家エンリケ・バルガスによる参加型演劇です。スペインのバルセロナの劇団テアトロ・デ・ロス・センティードスの劇団名の意味は“五感の劇場”。さまざまな特技を持ったパフォーマーや多様な専門分野の研究者で構成され、エンリケ・バルガスとの共同製作を続けています。人間の感覚を総動員し、手探りで楽しむこの作品。参加者自身が主役となる新感覚の体感型パフォーマンスです。
 ※会場は静岡県職員会館もくせい会館です。

 宮城:『真夜中の弥次さん喜多さん』と同様にネタバレになるので何一つ言えないんです…。何も知らないで体験していただく。それに勝ることはないですね(笑)。とにかく体験していただく作品です。


 ■ジゼル・ヴィエンヌ演出『マネキンに恋して-ショールーム・ダミーズ-』 
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 解説:演出家、振付家、人形作家とさまざまな肩書を持つフランスの異才ジゼル・ヴィエンヌ。彼女とロレーヌ国立バレエ団のコラボレーションで生まれたこの作品は、バレエというジャンルを超えた斬新な光景を見せてくれます。無表情で不気味なマネキンを演じる美しいバレリーナと、ジゼル自身が創作した生身の人間のような人形は時に官能的で、時にシュールでもあります。歌う場面を除けば、まったく言葉のない舞台でありながら、観客の脳裏には実にさまざまな言葉が飛び交います。この強烈な観劇体験から得る衝撃は、くせになるはず。

 宮城:ジゼル・ヴィエンヌさんは僕が今とっても注目しているアーティストで、もともと人形劇の出身です。この後に続く『Jerk ジャーク』という作品と2つ合わせてご紹介したいと思ったのは、『マネキンに恋して』と『ジャーク』という彼女の代表作の2つは、ちょうど南極と北極のように彼女の幅の両端を示していて、両方を観ていただくことによってアーティストの全貌が把握できると思ったからなんです。


 ■ジゼル・ヴィエンヌ演出『Jerk ジャーク』 
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 解説:ジゼル・ヴィエンヌ演出によるもう1つの作品です。1970年代、アメリカで実際に起きた連続少年殺人事件を基にした問題作。自作の等身大人形と俳優を共演させ人間に潜む暗闇を描いてきたジゼル・ヴィエンヌ。この作品ではグローブ・パペットを使い、俳優ジョナタン・カプドゥヴィエルの膝の上で実際に起こった惨劇を再現します。2つの人格を演じ分ける俳優の演技力と卓越した腹話術に観客の心はかき乱されます。原作はアメリカのゲイ・カルチャーを牽引し続けるデニス・クーパー。なお、今作品には刺激の強い表現がありますので、18歳未満の方はご遠慮いただきます。

 宮城:題材もそうなんですけど、これも世界から切り離されたと感じている人間が主人公です。おそらく僕の想像では、ジゼルさん自身がそういった感覚を根源に持っているんだろうと思います。自分は世界から切り離されていて、自分だけの小さなカプセルの中で生きてるような感じ。そういう人間が自分を世界に開いていこう、世界と自分の間に橋をかけようとする、その時に、悲劇や滑稽なことが起こる。その時のあえぎやジタバタが、人の奥底に眠っている孤独を引っ張り出してきて、共感を呼んでいるのではないかと思います。
 実は僕は天野さんの作品にもそういう感覚を持っています。自分だけの世界に安住すれば楽なんですけれども、なんとか自分と世界の間に橋をかけよう、手をかけようとする時に、すごくしんどい状況が生まれる。でもそこと向き合い、目をそらさないことから、作品は生まれてくる。そこに僕は希望を感じます。


 ■ドキュメンタリー映画「ピーター・ブルックのザ・タイトロープ(原題)」
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 解説:巨匠ピーター・ブルックの創作現場。その秘められた扉がついに開かれました。飽くなき芸術性の探求とその遊び心をも映像に収めた、演劇ファンならずとも必見のドキュメンタリー映画です。
 ※2014年秋、渋谷シアター・イメージフォーラム他全国ロードショーを予定。


 ■映像作品「ピーター・ブルックのマハーバーラタ」
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 解説:インドの壮大な叙事詩『マハーバーラタ』。1985年にピーター・ブルックが舞台化し、アヴィニョン演劇祭で初演。9時間にも及ぶ上演は世界的な反響を巻き起こし、演劇史に残る伝説となって今に語られます。この作品は1989年に製作されました。


 ■ドキュメンタリー映画「アヴィニョン演劇祭の60年~世界最大の演劇祭はこうして生まれた」
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 解説:第2次大戦後間もない1947年、演出家ジャン・ヴィラールによってアヴィニョン演劇祭は創設されました。ピーター・ブルック、太陽劇団、ピナ・バウシュ等、多くの偉大な芸術家たちがその名を刻んだ「演劇の聖地」は、現在でも「芸術創造のための実験室」という創設時の精神が息づいています。本作はアヴィニョン演劇祭のディレクターを15年に渡ってつとめた、ベルナール・フェーヴル=ダルシエの脚本によるものです。アヴィニョン演劇祭の歴史をおさめた貴重なドキュメンタリー映像となっており、すべての演劇ファンの皆様にぜひご覧いただきたい作品です。


 ■ドキュメンタリー映画「ピーター・ブルックの演劇的冒険―アフリカの100日」 ⇒公式サイト
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 解説:急きょ上映が決まりました。1972年12月、ピーター・ブルックと彼の俳優らによる一座は拠点であるパリを離れ、サハラ砂漠に消えていきました。訪れた村々で言葉の通じない村人を前に即興のパフォーマンスをする俳優たち。奇跡を探求してアフリカの辺境まで数千マイルをめぐる約100日間の驚くべき旅の記録です。1973年の放映より失われかけており、30年以上を経て発見された貴重なドキュメンタリー映像が、静岡で再び明らかになります。

 宮城:最後の映像作品を大変なサプライズとしてご紹介したいと思います。僕は今からもう観たくてしょうがないんです。1972年の作品なので、当たり前ですが当時のミリアム・ゴルトシュミットさんや、今より40年若い笈田ヨシさんが映ってます(笑)。演劇の本質中の本質を探るために旅に出ていったんですね。僕も演劇というものを見つけるために、現代演劇なんてひとつもないところに自分たちの芝居を持って行っていた人間です。

 宮城:ピーター・ブルックほど多様性に価値を見出して、そこにこそ演劇の面白味があると主張し続けている人は他にいないと思います。その多様性のひとつの極点をこのいくつかの映画で見ていただけるんじゃないかと思います。また「アヴィニョン演劇祭の60年」の中には、石切り場で上演され神話となっている、ピーター・ブルック演出の『マハーバーラタ』の様子も少し収められています。そちらもぜひお楽しみいただければと思います。

 ⇒写真レポート②に続く


※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2014年04月04日 16:58 | TrackBack (0)