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2014年04月10日

【写真レポート】アクターズワークス「小川絵梨子シーンスタディ」【3】小川語録2

 アクターズワークスが主催する「小川絵梨子シーンスタディ」に俳優として参加してきました。小川さんの発言をまとめたエントリー【小川語録2】です。

 ※計4回のレポートです⇒〔3日間のあらまし〕〔小川語録1〕〔小川語録2・当ページ〕〔しのぶの感想

 【小川語録2】
 ・相手を動かすための言葉をかける
 ・自分の演技は相手がつくってくれる/自分ひとりで時間を埋めない
 ・戯曲『12人』シーンスタディーのノートより
 ・自意識をコントロールする具体的な手段
 ・リスクを取って挑戦する/一番難しいところに素敵なものがある
 ・演出家・小川絵梨子から俳優へのお願い

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 ■相手を動かすための言葉をかける

 小川:セリフをしゃべる前の(戯曲にも書かれていない)「えっと」という言葉はいらない。それは自分のペースにしてしゃべろうとしている。迷わずポンと行ってください。不安にならずに進めてください。そうすれば相手が(反応を)くれるから。

 小川:相手と関わるためにしゃべれば、自分の中に意識が戻ることはない。自分の内面に向いた言葉は説得力を持たない。自分から意識をはずすことで、俳優は自由になっていく。

 小川:セリフは相手にかけてください。相手を動かすための言葉をかけるんです。会話はキャッチボールではなくラリー。しゃべり終わった後に自分の自意識に戻らないこと。自分の意識は体の中じゃなく、伸ばした手の先にある。前に出した手が握っている杖にある。その杖を周りが支えてくれる。

 小川:意図的な準備をして、感情を作ってから、しゃべるのはだめ。気持ちの準備はしないでください。入っていこうとするのではなく、入りたくなるようにする。そうすれば次のモーメントが生まれて、相手から(反応を)もらえる。


 ■自分の演技は相手がつくってくれる/自分ひとりで時間を埋めない

 小川:話すときも、聞いていること。相手を受け入れて、本当に聞く。とっても難しいことだけど、しゃべっていても素直に、そのままに、聞いてください。

 小川:あなたの感情は、外側が、相手が作ってくれる。かといって空っぽで向かって来られてもダメなんだけどね。

 小川:根が育つから木は育つ。その根が育つのは太陽があるから。太陽とは相手のこと。相手を立てれば、自分に返ってくる。

 小川:目の前にいる人たち、可愛いよね。ありがとうって言って、(反応、存在感を)もらうんだよ。ジャッジするんじゃなく。

 小川:なんとなく自分ひとりで時間を埋めるのはだめ。自意識が出ちゃうと変な“待ち”時間になる。具体的な助けを求めて、“待ち”にならないようにする。基本的には自分じゃなくて相手。相手に自分を見せてあげる。そうすれば変な“待ち”の時間にならない。

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 ■戯曲『12人』シーンスタディーのノートより

 小川:怒っていたり、怖そうな言葉ほど、いい感じに話す。自分がリベラルに見えるように。自分の役の弁護人になってください。自分の役はバカじゃない。

 小川:たいていの戯曲では、(登場人物が)何かを打破しようとして物語が進むものです。セリフを感想文には絶対にしないこと。セリフは感想ではなく、意図のある、他者と関わっていく言葉です。前へ、前へと相手に渡すこと。それを積み重ねていく。

 小川:チャンスがあれば動く。飛び込むことが大事。シャットダウンしない。飛び込んで話す、動く。どんどん工夫して。動けばわかる。フィジカライゼーション(physicalization:身体的に表現すること)は大切。たとえばイスに座るだけでも10パターンはできる。セーフゾーンでちまちましていては成長しない。

 小川:セリフを言った後に気持ちは出てくるもの。気持ちは後からついてくる。
 小川:語尾を引っ込めるともったいない。相手に渡せるようにしてください。

 小川:ここは本番前の稽古場じゃない。ワークショップです。失敗なんてない!飛び込んで!100点なんてない。何も怖くない。自分を信じてください。自分を60%信じていても、残りの40%のダメなところに固執して落胆して(シャットダウンして)しまうことがよくある。悪い方を見つけて注目すると「あーダメだー!」となってアワアワと慌ててしまう。プラスの方を信じてください。「私、けっこういい感じじゃね?」という風に。「私、ちゃんとできてるかも…!」と信じると、のびのびできる。でないと延々と“できない地獄”に入ってしまう。2%でも信じられたら占めたもの。「水の上を歩け!」と言われて、「それ…できるかも!」と信じられたら奇跡。それが私たち(演劇人)がやっていることです。

 小川:私が俳優だったら“暑い”という設定はラッキーだと思う。“暑い”という感覚を使えるから演技のチョイスが増える(ハンカチで汗を拭く、仰ぐなど)。設定は「感じなくちゃダメ」なんじゃなくて、「使える」と思えばいい。常に“暑い”と思い続けるのは、なしですよ。そんなの無理だし(だって実際は暑くないんだし)、常に「暑い」と思い続けるのは芝居に参加していない証拠。例えば「ここは高田馬場だ!」って常に思ってなくても、今、私たちは高田馬場にいますよね。そういうことです。


 ■自意識をコントロールする具体的な手段

 小川:失敗しても持続したエネルギーのままでいること。意識がつながっていればいい。

 小川:もし舞台上で気が散ってしまったら、目に見えてるものを利用するといい。たとえば「あの花きれいだな」とか「座っているソファがふわふわだな~」とか。私は匂いや手触りなど、感覚に近い物で意識を戻せと言います。

 小川:恋人同士の役なのにどうしても相手を好きになれない場合、何でもいいから1個でもいいところを見つける。たとえば「服のボタンが好き」でもいい。舞台上で(心身の)シャットダウンをすると、自分が下手に見えてしまう。

 小川:役者が一番困るのが「ヤバイ!」「もうダメだ!」と思ってしまうこと(意識が内向きになってしまう)。たとえば一本のロープのように、支えの棒を(心の中に)持っていて欲しい。自分でわかっていれば道を外さない。あくまでも自分をコントロール下に置いて、手触りを確かめられる状態で居るように。

 小川:舞台上の恋人役のことを「本当に好きにならなきゃ」と思ったらアウト。そんなの不可能でしょう。でも「ここは稽古場で、芝居のためだ」と思えば好きになれる。全部逆の発想です。

 小川:目的と状況は相反するものだから、逆から攻めるのが大事。泣こうとすると泣けない。でも泣くまいとすれば泣ける。悪人を演じるときはそのキャラクターのいい部分を探す。

 小川:怒っていないのに怒る演技をしなきゃだめなこともある。それはなんとかしなきゃいけない。「攻撃する気持ち」にならなくても、「攻撃する」と自分で決めて感情を起こすことはできる。ドライで実践的な方法があるんです。私は「地図を描け」とよく言います。戯曲の地図もありますが、自分の役の地図を。道に迷っても地図があれば戻れる。地図のポイントや曲がり角をきちんとやるようにすればいい。

 小川:やることがない方が不自由。だって何でもやっていいと言われたら、何をすべきかわからない。何をするかを決めると自由になれる。

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 ■リスクを取って挑戦する/一番難しいところに素敵なものがある

 小川:リスクを取ること。怖いところにも行くこと。そして楽に存在すること。準備よりも相手が大事。自分の中に固執しないこと。それが実践につながる。

 小川:道は自分でつくっていくものです。茫洋(ぼうよう)なリハーサルはダメ。自分からトライしてください。行動したからわかる。自分で手触りを感じながら積み上げる楽しさを味わってください。苦手だと思っても楽な気持ちのところで芝居をしない。自分のやりやすいチョイスでやっちゃうと退屈。何も起こらない。守りに入りすぎて自信のない小さなチョイスをしたら、相手は「何がしたいの?どう見せたいの?見せたくないの?」という風に、わからなくなる。リスクを取ることを大事にしてください。そうすれば自由になれる。どんどん前に進んでいくことの面白さを感じてください。それを続ければ絶対に厚みが出る。

 小川:誰でもたった1つの答えを出したいと思うもの。でも、やってみる度に違う答えになることもある。正解はあります、でも全部が正解なんです。全てを抱える力が重要。むしろそれがないと俳優はできない。白黒つけられない真ん中のグレーで居ることは恐ろしいことだと思う。でもそこからしか芸術は生まれない。多様性と着地点のない不安感を持ったまま、いろいろ試してやってみることに楽しさがあります。一番難しいところに素敵なものがある。


 ■演出家・小川絵梨子から俳優へのお願い

 小川:皆さんに(一演出家として)1つだけお願い。演出家も人間です。お願いだから冷たくしないで!(笑) 演出家を見ていれば、その人があせってたり、困ってたりするのはわかるはず。みな同じ人間です。役割が違うだけ。演劇に限らず社会的コミュニケーションの範疇ですよね。ノート(ダメ出し)の時、怖い顔しないで欲しい。「聞いてますよ」と演出家に伝えて欲しい。演出家も見られている方なのだから。見てる方が見られてる方より強い。怖くしないでね!

 小川:ノートはコミュニケーションです。お互いに平等に話せばいい。水掛け論や感情論になるのはproductive(生産的)じゃない。演出家も役者が怖いんです。所詮同じ人間です。人間的価値は全く変わらない。だからこそ稽古場をセイフティー(安全)にしたい。(色んな現場があるけど)自分だけでもそれを守ることを心掛けて欲しい。日本だと誰が売れてるか(人気があるか)で全てのヒエラルキーが決まるので難しいんですが、本質的には演出家も俳優も対等です。
 
 小川:野犬の群れの話は知ってますか?野犬は何かと闘おうとする時、おびえる一匹を皆で食い殺すんだって。だから「私、おびえてるんです!」というアピールはしないこと。キャスティングされたらそれでOK!私はやる気がない人が一番いやです。


 ※計4回のレポートです⇒〔3日間のあらまし〕〔小川語録1〕〔小川語録2・当ページ〕〔しのぶの感想


写真提供:アクターズワークス、高野しのぶ
アクターズワークス「現場で活躍する映画監督や演出家のワークショップ第二弾 小川絵梨子シーンスタディ」
期間:2014年03/17(月)~19(水)
告知エントリー:http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2014/0201172728.html

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Posted by shinobu at 2014年04月10日 14:10 | TrackBack (0)