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2014年06月04日

【写真レポート】Studio Life『トーマの心臓(Kabinettチームのゲネプロ)』04/28紀伊國屋ホール

 舞台『トーマの心臓』は男優集団スタジオライフの代表作中の代表作。原作は萩尾望都さんの同名少女漫画です。⇒萩尾さんが登壇された製作発表レポート
 今回は1996年の初演を含めて8回目、4年ぶりの上演となります。キャスト違いで4チームあり、私はKabinettチームのゲネプロ(本番同様に行うリハーサル)を拝見させていただきました。上演時間は約3時間(途中休憩10分を含む)。

 メインの登場人物であるユーリ(=ユリスモール)、エーリク、オスカーという少年たちの役は、劇団で長年活躍してきた俳優から若手へとバトンタッチしていきます。今回は3役とも私にとっては初めての顔ぶれでしたが、原作の核となるメッセージがぶれることはなく、懐かしくも新しい『トーマの心臓』に出会えました。
 老舗の劇場である紀伊國屋ホールは、劇団が重ねてきた年輪が感じられるこの作品にぴったりだと思います。

【舞台写真↓左端はエーリク:田中俊裕、右端はオスカー:仲原裕之】
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 ●Studio Life『トーマの心臓
  東京公演:5月24日(土)~6月22日(日)@紀伊國屋ホール
  大阪公演:7月11日(金)~13日(日)@梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
 ⇒製作発表レポート(劇団提供)
 ⇒初日レポート(劇団提供)
 ⇒CoRich舞台芸術!『トーマの心臓

 以下、私が撮影したつたない写真ですが、Kabinettチームのメインキャストの様子が伝わるかと思います。よかったらご笑覧ください。

 4年振りに『トーマの心臓』(⇒2010年のレビュー)を拝見して、改めて、あの大作漫画が1本のお芝居にまとめられていることに感心しました。音楽や大道具の配置、ステージングなどがほぼ変わっていないのは、多くのファンに愛され続けているからでしょうね。何度も観ている観客にとっては、字幕のセリフももう様式美の域。舞台美術は進化していて、例えば上手の階段の意匠は繊細かつ美しくなり、下手のベッドや柱の間を埋める壁の素早い転換はとても快いです。スピード感と動きがあることも、いいアクセントになっていました。

【舞台写真↓左から、オスカー:仲原裕之、エーリク:田中俊裕】
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 エーリク役は田中俊裕さん。元気いっぱいで一本気なところに嘘がなく、学友たちに徐々に心を開いていく素直さに、子供らしい愛らしさがあります。
 オスカー役の仲原裕之さんは、恥ずかしながらキャスト表で確認するまで仲原さんだと気づきませんでした…!『LILIES』のシモン役の印象が強く残っていたのもあると思いますが、やはりオスカーとして存在することが、すっかり板についているからではないでしょうか。

【舞台写真↓左から、オスカー:仲原裕之、エーリク:田中俊裕】
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 松本慎也さんがユーリ役に初挑戦されました。優等生のユーリはある事件以降、「自分には人を愛する資格がない」と固く心を閉ざしています。ユーリの行動は、自分自身をとがめて罰する強い意志が、そのまま他者(主にエーリク)への妬み、恨み、怒りへと反転して噴出するようでした。松本さんがストレートで説得力のある、新しいユーリ像を生み出してくださったように思います。

【舞台写真↓左から、エーリク:田中俊裕、ユリスモール:松本慎也】
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 『トーマの心臓』が長らく支持されているのは、少年たちの間で育まれていく愛情がいわゆる恋愛感情だけではなく、他者を無償で慈しむ心だからだと思います。今回の上演でも、その愛情を信じることができました。

 若手キャストの献身的な姿勢はもちろんですが、今回はベテラン勢の支えが大きかったですね。3人のメインキャストを含む学生たちを取り巻く大人の登場人物たちとは、たとえばオスカーとただならぬ関係にあるミュラー校長(曽世海司)、ユーリの母(楢原秀佳)、エーリクの義父(楢原秀佳)、そして夭逝したトーマの父母(山﨑康一、石飛幸治)などです。Studio Lifeの舞台『トーマの心臓』の世界を知り尽くした先輩劇団員の皆さんが、余白を豊かに満たす演技をしてくださいました。

【舞台写真↓左から、ユリスモール:松本慎也、オスカー:仲原裕之】
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 特に印象に残ったのはシュヴァルツ(エーリクの義父)とシェリー(ユーリの母)を演じた楢原秀佳さん。穏やかな笑顔に、辛い人生の全てを受け入れて赦す、心の静けさが見えるようでした。大人役ではなく学生役ですが、私がいつも気になって仕方がないアンテ役は、宇佐見輝さんでした。わがままなトラブルメーカーの行動、言動に、人間らしさが凝縮されているように思うのです。宇佐見さんはエネルギッシュに演じていらして目を引きましたし、好印象でした。

【動画↓ 初演から今までの記録映像です!】


【Kabinettチーム 出演】ユリスモール:松本慎也 エーリク:田中俊裕 オスカー:仲原裕之 レドヴィ:関戸博一 アンテ:宇佐見輝 バッカス:原田洋二郎 サイフリート:青木隆敏 ミュラー校長:曽世海司 シュヴァルツ(エーリクの義父)/シェリー(ユーリの母):楢原秀佳 ヴェルナー氏:山﨑康一 ヴェルナー夫人:石飛幸治 シャール:山本芳樹 クローネ:石飛幸治 カイザー:牧島進一 ヘニング:山﨑康一 ブッシュ/エリザ(ユーリの祖母?):緒方和也 その他:澤井俊輝 鈴木翔音 若林健吾 千葉健玖 藤波瞬平 他 ※Auslese・Spatlese・Riesling・Kabinettのクアドラプルキャスト公演 
原作:萩尾望都 脚本・演出:倉田淳 舞台美術:乗峯雅寛 舞台監督:倉本徹 音響:竹下亮(Office my on) 照明:阪口美和 衣装:竹原典子 ヘアメイク:河村和枝(p-bird) アクション:渥美博 演出助手:平河夏 大道具:俳優座劇場 宣伝デザイン:福田真一 イラスト:東逸子 デスク:武井啓子 制作:稲田佳織 大野純也 宮崎千琴 横塚夏奈 プロデューサー:河内喜一朗
一般<前売> 5,800円 一般<当日> 6,000円 club LIFE会員<前売・当日共> 5,600円 ウイークデイ・サンキューチケット<前売限定販売> 3,900円 ※未就学児童入場はご遠慮ください。
劇団HP:http://www.studio-life.com/
「トーマの心臓」公演HP:http://www.studio-life.com/stage/toma2014/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2014年06月04日 11:14 | TrackBack (0)