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しのぶの演劇レビュー
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2014年06月04日

こどもの城・青山円形劇場/ネルケプランニング『赤鬼』06/04-15青山円形劇場

 中屋敷法仁さんが野田秀樹さんの戯曲『赤鬼』を演出されます。ベルリン国際映画祭・最優秀女優賞を受賞したばかりの黒木華さんの主演が話題になっていますね。『赤鬼』の作品紹介は公式サイトでどうぞ。⇒野田さんが演出された2004年タイ・バージョンのレビュー

 主要4人のキャストの他に男性アンサンブル3人が出演する、身体表現に重点を置いた演出でした。赤鬼役を演じる小野寺修二さんが振付も担当されており、緻密に組み立てられていて、息の合ったコンビネーションに何度も魅せられました。さすがは小野寺さん!

 青山円形劇場を完全円形で使う舞台を観たことのない方は、ぜひこの機会にどうぞ。上演時間は約1時間40分。
 ※6/9(月)19:30の回は公演中止。6/13(金)15時、6/14(土)13時&17時に追加公演あり。

【舞台写真↓中央は黒木華 撮影:宮川舞子】
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 ⇒村上湛さんの劇評「2014/6/14 青山円劇カウンシルファイナル〈赤鬼〉」(2014/06/15)
 ⇒CoRich舞台芸術!『赤鬼

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 ある日、村の砂浜に肌の色も言語も違う異人が打ち上げられる。
 村人はそれを「赤鬼(小野寺修二)」と呼び、村八分にされている 「あの女(黒木華)」が 呼び寄せたという偽りの噂が広まる。
 赤鬼は人を喰うと誤解され、村人に迫害されたあげく 処刑されることが決定する。
 あの女は徐々に赤鬼と心を通わせ、 赤鬼が人でなく花を食べること、理想の地を求めて浜にやってきたことを知り、 白痴の兄「とんび(柄本時生)」、嘘つきの「ミズカネ(玉置玲央)」と共に、 赤鬼を救出しようとするが・・・。
 ≪ここまで≫

 丸いお盆状のステージと、それをぐるりと囲む通路という2つの演技スペースが、互いに逆方向に傾いていている抽象美術です。円形であることと高低差を生かす演出が効果的でした。海になったり洞窟になったり、照明、音響の変化と俳優の動きで舞台の表情が変わります。俳優は客席通路も頻繁に通りますので、舞台がかなり近く感じられました。
 4人の主要人物を演じる俳優も、アンサンブルと同様に色んな人・モノを演じます。神経を研ぎ澄ましてお互いを見つめ、感じながら、ひとつひとつの動きを積み重ねていっているのが伝わってきて、その緊張感がとても良かったです。

【舞台写真↓左から小野寺修二、黒木華 撮影:宮川舞子】
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 排他的な浜辺の村に得体のしれない怪物が漂着し、貝を取って暮らすある女性(黒木華)がそれを受け入れようとしますが、彼女自身もよそ者としてずっと村八分にされていました。鬼といえば日本だと「桃太郎」「こぶとりじいさん」などのおとぎ話や、戦後の童話「泣いた赤鬼」などがすぐに思い浮かびます。この『赤鬼』もまた寓話的で、作中で起こる事件を追いかけながら、その奥に見えてくる普遍的なメッセージや、並列に走っている何かを想像させてくれます。今回は3人の男性アンサンブルの存在感が大きく、主要人物だけにとらわれることなく、常に抽象世界や現実社会のことを頭に置きながら観ることができました。

 オツムの弱いトンビ役の柄本時生さんの、とぼけていて柔らかい存在感が良かったです。トンビはストーリーテラーでもあるので、柄本さんのひょうひょうとしていていながら冷めてはいない姿勢が、観客に『赤鬼』をちょっと遠くから眺める視点を与えてくれていたように思います。

【舞台写真↓中央:小野寺修二、舞台手前:黒木華 撮影:宮川舞子】
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 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 結末は過去レビューなどでお読みいただけたらと思います。自分で確かめられたわけではないのですが、Google検索だとレビュー下方も自動的に表示されてしまうらしく、ネタバレ以降は容易に書けなくなりました。

 今回は赤鬼(名前はアンガス)のバックグラウンドに、より興味がわきました。野田さんの演出の『赤鬼』3バージョンではこういうことはなかった気がします。アンガスはどうやら英語圏※の人間で、大きな船に乗って航海をしてきて、仲間とともに島への上陸機会を探っていました。まずアンガスが1人で島に潜入して上陸可能かどうかを調べ、可能ならば一斉に鐘の音を鳴らして合図をする予定になっていたのです。手紙が入った空の瓶は大きな船からアンガスへのメッセージでしたが、日に日に流れ着く本数が少なくなっていたことを、彼自身も知っていました。水銀の船に乗って海に出た時、あの女(名前はフク)もアンガスも、既に棄てられた人間だったんですね。
 ※英語圏と書きましたが、赤鬼は何語かわからない言葉も口にしていますので、特に言語の種類は重要ではないかもしれません。

 水銀の「偽り(いつわり)は真実の悪阻(つわり)」というセリフが好きでした。そして、アンガスの言葉がわかるようになったせいでアンガスの気持ちがわからなくなった、つまり言葉を知らなかった時の方が通じ合えた、というフク(あの女)の認識に共感しました。人間同士、深く知れば知るほど違いに気づきますし、「もっと知りたい」「分かり合いたい」という欲も大きくなるものですよね、困難なことなのに。「鬼が人を食うんじゃない。人が鬼を食らうんだ」にも納得です。恐怖も暴力も、生み出すのは怪物の方ではなく人間なのだと思います。

【舞台写真↓左から黒木華、柄本時生、玉置玲央、小野寺修二 撮影:宮川舞子】
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青山円劇カウンシルファイナル ※舞台写真は主催者より提供。
【出演】あの女(フク):黒木華、トンビ(ふくの兄):柄本時生、水銀(みずかね):玉置玲央、赤鬼(アンガス):小野寺修二 アンサンブル:竹内英明 傅川光留 寺内淳志
脚本:野田秀樹 演出:中屋敷法仁 振付:小野寺修二 音楽:阿部海太郎 美術: 照明:松本大介 音響:加藤温 衣裳:高木阿友子 ヘアメイク:大宝みゆき 演出助手:入倉麻美 舞台監督:宮田公一 川除学 制作協力:上澤田幸子 制作助手:新田朋子 広報:丹典子 票券:北澤芙未子 制作:藤井良一 プロデューサー:伊藤達哉 赤羽ひろみ エグゼクティブ・プロデューサー:志茂聰明 松田誠 企画・制作:ゴーチ・ブラザーズ 主催:こどもの城 青山円形劇場/ネルケプランニング
チケット一般発売 2014年5月10日(土)10:00 全席指定・税込 6500円
http://akaoni2014.com/
http://www.aoyama.org/topics/2014/akaoni.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2014年06月04日 23:47 | TrackBack (0)