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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2014年06月18日

笑の内閣『ツレがウヨになりまして』02/28-03/04 KAIKA

 笑の内閣は高間響さんが作・演出・出演される劇団です。『ツレがウヨになりまして』は2012年初演、今回は札幌、東京、京都の3都市再演ツアーです。私が拝見した京都公演の上演時間は約1時間35分。

 「CoRich舞台芸術まつり!2014春」審査員として拝見しました(⇒92本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。下記にも転載しました。 

 ⇒朝日新聞「ひと」欄「高間響さん ネット右翼を芝居にした劇作家・演出家
 ⇒CoRich舞台芸術!『ツレがウヨになりまして
 ⇒togetter「ツレウヨの感想まとめ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 「日本と、あなたの愛を取り戻す。」
 京都市に住む女子大生、日向あおいは最近同棲中のツレ、富山蒼甫の様子がおかしいことに気をかけていた。気になりパソコンを覗いてみると、そこには韓国への罵詈雑言が。心配するあおいをよそに、蒼甫はK-POPアイドルばかりよぶ近所のスーパー・フジマーケットにデモにでかける。
 どうしちゃったのツレ?なにがあったのツレ?
 笑の内閣、次なる全国ツアーは、愛国心を問う思想系ラブストーリー。
 初演時よりますます嫌韓デモが激しくなる中、
 ネット右翼をぶった斬る。
 全国ツアーついに最終戦!京都で終わる、恋物語。
 ≪ここまで≫

 ■社会とがっぷり四つに組むドタバタ喜劇

 笑の内閣の過去作品は『非実在少女のるてちゃん』と『65歳からの風営法』永田町公演(関連リンク⇒)を拝見しています。『ツレがウヨになりまして』は、ネット右翼になった若者とその恋人の女子大生を軸に、日本で起こっている反韓運動を時事ネタてんこ盛りでわかりやすく描くドタバタコメディーでした。

 黒い幕で囲まれた舞台の中央奥に、少し斜めに張り出した台が置かれています。後で黒いソファなどが出てきましたが、装置と呼べるようなものはほぼそれだけだったでしょうか。今公演は再演である上に、多地域ツアーの最終地ということで、俳優の演技に安定感があり、これまでに私が観た作品に比べると全体的に素人っぽさが減って、空気の密度も高かったです。

 とはいえ俳優さんはもっと稽古して欲しいし、人物の配置や場面転換には大いに改善の余地があるし、美術や衣装の詰めも甘いです。ソファの黒ガムテ貼ってる感はどう受け取ればいいのか…最初は戸惑いました。でも、そういう品質は決して重要ではないんですよね。笑の内閣のお芝居は、市井の人々の、市井の人々による、市井の人々のための社会派喜劇として最高峰かもしれません。だってすっごく面白かったんだもの!

 お芝居が始まる前の開場時間はずっと、劇団主宰の高間響さんが舞台に立って前説をされていて、それも面白かったです。CoRich舞台芸術まつり!のことも紹介してくださいました。
 終演後は大賑わいの物販スペースで公演パンフレットを買いました。脚本は売り切れてしまったので、代金を支払って後日配送にしてもらいました。過去公演のDVDを数本、お土産に買って帰る方もいらっしゃいました。もっと深く知りたい、そして家族や友人にも知らせたいという気持ちになる作品だったのだと思います。

 ここからネタバレします。

 幕が開くなり高間さんが、米国国歌の音楽にのせて「君が代」を歌いました。最高。

 女子大生のあおいは「国よりも私を愛して」と歌いますが、恋人の蒼甫は「女の代わりはいっぱいいても、祖国の代わりは無いんだぞ」と言い、2人は別れてしまいます。でも最後には「日本がどんなにダメな国でも愛するのと同じように、私は蒼甫がどんなにダメ人間でも愛してる」というあおいの思いが通じます。主題歌『ツレウヨのテーマ』の蒼甫のパートは「(女の)代わりはあっても 君の代わりはいないから 日本より君を取り戻す」となります。

 「愛する日本を守るために、日本に頼まれてもいないのに韓国を殴ると、日本に嫌われる」という、日本を擬人化したたとえ話が秀逸でした。尊王の志をもって反韓運動をする蒼甫を、天皇陛下(が乗り移ったスーパーの店長)が説得するなど、タブーとされがちな題材をギャグにするセンスがかっこいいです。

 あおいが鞄からマイクを取り出して突然歌い出すのは楽しいですね。デュエットになったのも良かった。LED照明で歌の場面を盛り上げるあざとさも良いです。ただ、マイクの取り出し方の工夫と稽古はもっと必要だと思いました。劇団☆新感線のおポンチ系作品を参考にしてもらいたいです。
 選曲も狙いがしたたかでしたね。山口百恵のナツメロ、竹内まりあ「元気を出して」、大塚愛「さくらんぼ」など。あおいの友人の中道役の高瀬川すてらさんは歌がお上手でした。
 
 細かいことですし作品評価には全然関係ないのですが、在学中の娘の同棲を刑事である父親が許していたのはなぜだったのかしら。私は婚約前の同棲には反対なので、許可する根拠が知りたくなりました。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫ ※メモしたことのみ。
 出演:高間響 辻大介(大阪大学大学院准教授)
 
 高間:学歴も高くなく仕事もうまくできない僕にとっては、演劇が受け皿だった。演劇すらなかったらネトウヨになっていた可能性もある。
 辻:2007年の私の調査に基づいた考えですが、ネトウヨは承認欲求が高い。嫌韓・嫌中といった排外的な姿勢になる人は、周りの人間関係がよくなくて、孤立感、孤独感を持っている人が多い。国を愛することを否定されるとカチンとくる。「愛国心が高くて許容範囲は広い」のは高学歴&高収入の人が多い。

 観客:自分の意見を言うと「それは左翼なのか右翼なのか」と2択を迫られてしまう。
 辻:左翼、右翼というのが、メディアの力によってわかりやすい「キャラ設定」になってしまっている。

≪北海道、東京、京都≫
出演:鈴木ちひろ、清水航平、伊藤純也(劇団オレと松本)、由良真介、山下みさと、髭だるマン(劇的細胞分裂爆発人間和田謙二)、ピンク地底人2号(ピンク地底人)※東京・京都公演のみ、高瀬川すてら(劇団ZTON)→私が拝見した回は高瀬川すてらさんが出演。※札幌・京都公演のみ、高間響
※私が観た回のゲスト:上原日呂(月曜劇団)
脚本・演出:高間響 演出補:由良真介・山下みさと 制作:前田瑠佳 舞台監督:稲荷十中連合×the★plankton 照明:山本恭平  音響:神田川雙陽(劇団粋雅堂)  衣装:橋本源氏(劇団EVE) 宣伝美術:大隈武蔵 企画制作・主催:笑の内閣 共催:フリンジシアタープロジェクト 提携:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場・北海道演劇財団  supported by KAIKA
【発売日】2013/12/01 ※早割は1月31日まで実施
・一般チケット 早割 2,000円 前売 2,500円 当日 3,000円
・学生チケット 早割 1500円 前売 2000円 当日 2500円 ※要証明書
http://warainonaikaku.sitemix.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2014年06月18日 22:41 | TrackBack (0)