2009年初演の米国戯曲の本邦初演です。女性戦場ジャーナリストが登場する男女4人芝居で、演出は宮田慶子さん。上演時間は約2時間35分(途中休憩1回を含む)。
先月の『信じる機械』も女性戦場ジャーナリストのお話だったので、社会問題を扱うシビアなストレート・プレイを想像していたのですが、“恋愛もの”と受け取っていい感じでした。最初はどう観ていいのかわからなかったのですが、終盤に入ってぐっと集中して観られるようになりました。
⇒CoRich舞台芸術!『永遠の一瞬 -Time Stands Still-』
ロビーで戯曲掲載の悲劇喜劇2014年 08月号を販売中。写真集なども置いてあります。
≪あらすじ≫ 公式サイトより
舞台はニューヨーク、ブルックリン。イラク戦争の取材中、路上爆弾で負傷したフォトジャーナリストのサラを、恋人であり、職業上のパートーナーでもあるジェームズはいたたまれない思いで迎えに行き、二人のアパートに戻ってくる。
彼らの友人であるリチャードが、若いガールフレンドのマンディーを伴い見舞いに訪れる。屈託なく、幸せそうな二人の姿に、サラとの結婚を切り出すジェームズだが・・・・・・。ギブスをしていた足、包帯で吊っていた片腕、爆弾の破片による顔の傷が癒えるころ、サラとジェームズの関係にも変化が訪れる。
≪ここまで≫
一緒に暮らすこと、結婚すること、子供を作る・産む・育てることは、する/しないも含めて、人間という動物の普遍的なテーマとして扱われることが多いです。このお芝居では恋仲で年頃の男女が2組登場しますから、結婚するかしないか、子供を産むか産まないかが、のっぴきならないテーマになっています。そしてもちろん職業や生き方についても。
愛し合っているはずの男女が、お互いにどうしても相容れないと気づき、相手を立てれば自分が死んでしまうほどの齟齬があらわになる瞬間に、本物の葛藤が見えてドキドキします。そしてそれをどう乗り越え、どんな始末をつけるのか。全てを見届けてから、自分に照らし合わせたり、他の事例と比べたりして考えるのが楽しいんですよね。
ストレート・プレイは、ある物語を詳細に示すことで物語以外の何かが立ち現われたり、フィクションが現実を映す鏡として機能したりするのが魅力だと思います。あくまでも初日の時点ですが、この作品は面白いストーリーを説明してくれたけれど、それ以上には届いていないように思いました。全体的にもっと知的に、示唆的にコントロールされた、洗練された演技・演出の方が私好みです。
いわゆる「赤毛もの」のような演技も気になりました。たとえば編集者リチャードの若い恋人のキャラクターは、少々戯画化され過ぎな気がしました。彼女は「世間」として「普通」でいてくれたらいいのではないかと。
ほんっとにどうでもいいことですし、きっと共感は得られないと思うのですが…ものすごく印象に残ったので書いちゃいますっ。この舞台での中越典子さんの声の出し方は、若松武史さんに似ていますよね…!? 低い声を出す時にのどもとでグルっとしてる感じが…(ああ言い表せない)。外見は似ても似つかないお2人ですが、もしかしたらお顔の骨格が似てるのかも?(どーでもいいですよね…スミマセン)。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
平和な暮らしのリアルと戦場のリアルとが重なる部分を感じ取りたかったです。日常でありながら戦場と重なることで、その差異もよりくっきりするのではないかと。天国と地獄を同時に受け取る瞬間というか。
舞台奥の上手上部に吊られたディスプレイに、サラが撮影したと思われる報道写真が映し出されました。違う写真へと変わる時に映像上の工夫があったんですが、ない方がいい気がしました。できればパッパッと次の写真に移って欲しかったです。写真が説明として使われているように感じたのも残念。
ジェームズが、戦場に居る人々が登場して独白していくお芝居を観て大いに怒り、「事実を演出し、歪曲している」等と酷評する場面がありました。それは戦場を語る登場人物を観る客がいる、この『永遠の一瞬』という公演そのものでもありますよね。観ている最中にハっとしたり、考えさせられたりしたかったです。
出演:中越典子、瀬川亮、森田彩華、大河内浩
脚本:ドナルド・マーグリーズ 翻訳:常田景子 演出:宮田慶子 美術:土岐研一 照明:中川隆一 音響:上田好生 衣裳:髙木阿友子 ヘアメイク:鎌田直樹 演出助手:渡邊千穂 舞台監督:大垣敏朗 プロンプ:池田朋子 制作助手:吉田友香 映像製作・操作:井口雄一郎 制作担当:田中晶子
【休演日】7/15,22【発売日】2014/05/10 A席5,400円 B席3,240円 Z席 1,620円(公演当日、ボックスオフィスのみでの販売。1人1枚、電話予約不可)
http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/140701_001635.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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