新国立劇場演劇研修所の8期生による自主公演です。5月のUSY-PRODUCEとは違って、インターネット上では公開されていない発表会でした。上演時間は1時間20分。
『LONG AFTER LOVE』といえば2000年にTPTで観た公演のタイトルと同じです。2回観に行ったんですよね~懐かしい!関連レビュー⇒1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
今作でも男女のエロティックな闘いを味わうことが出来ました。三島由紀夫戯曲ってほんっとにバカで美しくて素敵だな~(笑)。
4ヶ月スパンだった自主企画、『LONG AFTER LOVE―道成寺・葵上―』が終わった。終わった。 pic.twitter.com/CHNSH0a2i4
— HANANO (@hananotakizawa) 2014, 7月 13
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⇒『近代能楽集』のあらすじはwikipediaに全て載っています。
会場は黒幕で覆われたブラックボックス。細長い演技スペースを2方向から挟む対面客席です。白い木枠だけできたドアが天井から3つ吊り下がり、その上から照らす照明で、床や壁にに木枠の影ができていました。入り口の対面となる会場の奥には、吊り下がったドアと同じデザインのドアが2枚並び、閉じています。このドアも木枠のみなので、奥に照明が仕込まれていているのが見えている状態です。床には黒い木箱が3つほど置かれていて、イスやベッドになります。手作り感のあるシンプルな舞台美術ですが、衣装がしっかりしていたのもあり、片手間の発表会ではなく公演として鑑賞することが出来ました。
『道成寺』『葵上』の順で上演されました。現代口語ではないセリフを滑らかに発語するのに、皆さん、健闘されていました。特に女優さんの艶やかさ、芯の強さ、コケティッシュな魅力が発揮されていたように思います。男優さんは足腰の弱さが気にかかりました。ずっしりと安定していながら、軽やかに動く身体であって欲しいんですよね、何しろセックスの話なので。ほんとに呆れるほどセックスの話ですよね、この戯曲…笑っちゃう!
近代戯曲をしかつめらしいだけにせず、コメディーとして観られるところまで作ってくださったんだなぁと思いました。役を知り、詳細まで具体化すれば、観客はその役のさまざまな面を見つけることができます。そんな公演では笑い声と鼻をすする音が同時に聞こえたりするものです。私はそういうお芝居が好きなんですよね。
ここからネタバレします。
●『道成寺』
主役の踊り子(清子)を演じた荒巻まりのさんは、言葉と体と心が一致した説得力のある演技を見せてくれました。若い瑞々しさも踊り子らしくて良かったです。クローゼットから出てきた時、彼女はすっかり別人に変身しているわけだから、もっと前との違いがわかる演技・演出にしても良かったのではないかと思いました(照明や音響の変化も含めて)。自然のパワーを感じたかったです。むせかえるほどに。
巨大なクローゼットの競りに参加する金持ち3人が、ザコキャラに見える演技なのはもったいないと思いました。
『道成寺』と『葵上』の間の転換はダンスで構成されていてとても良かったです。早足で勇んで歩いていた男性が、突然バタン!と床に倒れるのってショッキングだしセクシー。小野寺修二さんのパントマイムを思い出しました。
●『葵上』
看護婦※(池田碧水)に爆笑!ほんっとに可笑しいですよね、この役。何がリビドーだよ!って思う(笑)。成熟した大人とはいえない看護婦が“性的コンプレックスを克服した大人”のセリフを言うギャップが面白いです。看護婦の白い制服は、頭にナースキャップを載せてるとコスプレにしか見えないんですよね、今の時代。意図したのかどうかはわかりませんが、そこがまた可愛い!池田さんは『道成寺』の大家さん役もコミカルな愛されキャラでした。
※今は「看護師」ですが昔の戯曲なので「看護婦」としています。
紫色の着物をしっかりまとった六条(滝沢花野)は貫録があり、丁寧な演技をされていました。セリフの分析も細かくしてらっしゃるように思いました。光(永澤洋)はちゃんとイケメンでしたが、どんな女性も身を任せてしまうほどのセクシー・ガイというわけではなかったので、そこまで目指してもらいたいなと思いました。なんたってあの謎の看護婦もものにするわけだし!
病室の窓の横の壁にかけておいた、白い半透明の大きな布が、六条と光が乗っていた船の帆になったり、病床の葵の上半身に覆いかぶさったりしました。シンプルながら効果的な演出だと思いました。
@hananotakizawa ご来場くださった皆さま、支えてくださった方々、同期、一緒に押し進めてくれたメンバー、本当にありがとう。本当に本当に。
— HANANO (@hananotakizawa) 2014, 7月 13
【出演】清子/若林葵:荒巻まりの 主人:坂川慶成 客A/若林光:永澤洋 客B/六条康子:滝沢花野 客C/管理人/看護婦:池田碧水
作:三島由紀夫 企画・構成:荒巻まりの/滝沢花野 振付:稲継美保 照明:薄平広樹(8期生) 選曲・効果:富田詩生 音響操作:鈴木麻美(8期生) 当日制作:西岡未央(8期生)
協力:新国立劇場演劇研修所 演劇研修所第9期生、第10期生 劇団熱血天使様 渋井千佳子様
無料・要予約
https://www.facebook.com/nnt.dramastudio.tokyo
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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