6月にロンドン在住の俳優指導者の山中結莉(やまなか・ゆうり)さんによる、一般向けのワークショップに参加しました。結莉さんのワークショップを見学させていただき、自分も体験したくなった、というか、すべきだと思ったんです。
⇒公式サイト プロの俳優向けワークショップ⇒レポート ⇒告知エントリー
参加者は講師と制作者を含んで計14名。参加者の内、少なくとも3名は私のサイトでこのワークショップを知って申し込みをされたようです。ありがとうございました!
⇒結莉さんのブログ「「<埋れた声 VOICE>を掘り起こす --- 身体と表現 ワークショップ」終了!」
まず、参加者の1人が開始時刻になっても現れず…。会場は駅から遠く、バスかタクシーに乗る必要がある距離ですが、そのことをわかっていらっしゃらなくて、歩いて来られたんです。しかも間違って反対方向に歩いていたので引き返したりもして…お気の毒に。制作さんが電話で連絡を取ると、その方は「本当にすみません!先に始めておいてください!」とおっしゃったんですが、結莉さんは「待ちます。全員そろわないことには始められません」とお返事。たぶん30分以上は遅刻されたと思うんですが、その方の到着を待ってから開始しました。始めてみてわかったんですが、待つことは必要でした。同じ空間にいる人たち全員で行う/作るものだから、何かが欠けていたり、例外扱いを許したりしてはいけないんですね。
プロの俳優向けワークショップと同様、自己紹介はしません(遅刻者を待っていた時間の手持ちぶさた感は凄かった・笑)。五感を開く体操をして、「ありがとう」とあいさつするワークをしてから、全員でそれぞれのニックネームをつけていきます。私がこれまでに参加したワークショップでは「自分が呼ばれたい名前を自分で名札に書く」のがほとんどでしたから、とても新鮮。みんなにじろじろと見られる緊張感と、大勢に注目されることの恥ずかしさ、嬉しさも体験できました。
そして私はなんと「桐壷」と呼ばれることに…衝撃!!(「桐壷」以外に出た案は「かおるさん」と「貴子(たかこ)」) 桐壷とは「源氏物語」の光源氏の母親です。高貴で美しいってこと?!ひょえー!もったいない!嬉しい!でも、薄幸の代名詞でもあるわよねっ!!(笑) 皆さんにじっくりと品定めされた末に名づけられた名前から、想像がぐんぐん広がり、しばらく興奮状態でした(笑)。
そしてニックネームを覚えるワークが始まりました。バックグラウンドも年齢も不明だから、敬語を使わないし、誰もが平等でいられます。自己紹介をしないことって偉大!
参加者は俳優などの実演家より、社会人の大人が多かったです。ペアになったりチームに分かれたりして、一人ひとりと真正面から出会って、じっくり知り合っていきます。普段の生活ではあり得ない機会だと思いました。テーマが「<埋れた声 VOICE>を掘り起こす」なので、各自が感じたこと、思いついたことなどをどんどんと動きに、声に、言葉に出していきます。たとえば目を閉じて身体をある状態で静止させて、頭に浮かんでくることを言っていくワークでは、驚くべき発想がじゃんじゃん飛び出て来るんです(銭湯に象がいて体重計に乗っている等)。「ごく普通の人間の創造性ってすごい!」と思いました。
他者を知るだけでなく、知らなかった自分を知るという点で、生涯忘れられないであろう体験をしました(笑)。あるワークでリーダーシップのある中年男性と組んだ時、「桐壷さんは、意外なことに、笑顔が可愛らしいんですよ!」と言われたんです。のけぞりました…。「意外なことに」て…。そういえば、私とペアになった人は皆、最初にちょっとたじろぐような仕草をされていた気もする…(汗)。「私、そんなに怖いんだ、怖がられるタイプなんだ…」と思い知らされました。もともと緊張や真剣さが露骨に顔に出る(目がぎらぎらしてしかめっ面になる)タイプなのは自覚しているつもりでしたが、そこまでとは……。だってその方は参加者全員に向かって「こんなに怖そうな人でも笑うんですよ!しかも意外なことに、その顔が可愛いんですっ!!」と言い放ったわけですから(笑)。褒められて嬉しい気持ちはもちろんありましたが(エヘヘ)、戸惑いは最高潮。あぁ学んだ、しのぶは学んだよ…。このことをきっかけに、私は女性らしい柔らかさのある、明るい色の服を着ることにしました(マジです)。せめてそういう努力をしないとね私!
プロの俳優向けワークショップと同じワークも行いましたが、過程や結果、効果も違ったように思います。結莉さんが参加者によって内容をその都度変えていく(いわばオーダーメイドにする)のもわかりました。お昼休みを含んで計7時間というのは短いですね。心なしか結莉さんはプロ向けの5日間の時よりも少々急ぎ気味だったように思います。参加者からも結莉さんからも「次は1泊2日にしよう」「野外の自然の中でやろう」といった声が上がっていました。
いつもはワークショップの見学者である自分が参加者になることで気づいたこともありました。ワークに参加しない見学者(=部外者)がいることは、良くないですね…。やっぱり視界に入ると気になるし、知っている人だと恥ずかしさや遠慮する気持ちが生まれ、外に向かわずに内にこもろうとする控えめな態度にもなってしまいます。私にとって今後の重要な課題です。
終了後は1階のレストランで希望者参加の懇親会があり、8人でゆっくりフィードバックをしながら語らうことができました。それぞれに本名や職業を告白していくと驚きの連続!あらためて「ワークの時に知らなくてよかった」と思いました(笑)。そして「あの時は~~だった」「~~と感じていた」等と感想をシェアしてくことで、また新たな発見が!初対面の人たちとこんなにも心を開いて話せるなんて、すごく幸せでした。指導者が結莉さんのようなプロであることが前提ですが、演劇の手法を用いたコミュニケーションのワークショップは本当に有効です。肩書きや経歴、立場などを取り払い、お互いに1人の人間として交流することで、他者を尊重する気持ちと、自分自身を認める意識も生まれます。学校、企業など色んなコミュニティーで実施されて欲しいと強く願います。
※写真は公式facebookページより無断転載。
2014年6月29日10:00 - 17:00
会場:食育・体験レストラン栗の里 二本松店(笹生農園):http://www.kurinosato.com/
参加費2500円
https://www.facebook.com/events/318450938305830/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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