新国立劇場演劇研修所8期生が出演する『朗読劇 少年口伝隊一九四五』初日を拝見。上演時間は約1時間5分。⇒昨年のレビュー ⇒挿絵入りの本
『少年口伝隊~』は2008年に井上ひさしさんがの日本ペンクラブのフォーラムのために書き下ろされた戯曲で、同研修所2期生が出演し、栗山民也さんが演出されました。それ以来、2012年を除いて毎年夏に同研修所で上演されています。
新3年生が出演するので毎年キャストは一新され、その度に新しい『少年口伝隊~』に出会えるのです。今年は初めて母と一緒に観劇しました。
⇒CoRich舞台芸術!『朗読劇 少年口伝隊一九四五』
≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
ヒロシマの人々の思いを、井上ひさし氏の思いを、口伝する
「広島がヒロシマになった日。」
昭和20年8月6日、一発の原子爆弾が広島の上空で炸裂した。
一瞬にして広島は壊滅。このときから、漢字の広島は、カタカナのヒロシマになった。
かろうじて生き延びた英彦・正夫・勝利の三人の少年は、やはり運よく助かった花江の口利きで中國新聞社に口伝隊として雇われる。
新聞社も原爆で何もかも失ったため、ニュースは口頭で伝えるほかなかったからだ。
三人の少年は、人々にニュースを伝えながら、大人たちの身勝手な論理とこの世界の矛盾に気がついていく。
やがて敗戦。......そこへ戦後最大級の台風が広島を襲う。
≪ここまで≫
今年はなんとホラー色が強くなり、テンポのいい掛け合いによって畳みかけるように恐怖が襲ってきました。語りと演技の切り替えもくっきりしており、声色の使い方も今までより幅広くなっていたように思います。また、腹の底から凄味のある太い声が出ていて、怒りがより直接的に噴出しているように感じました。
あまりに理不尽で、みっともないことだらけの今の日本に生きていて、私自身、沸き起こってくる怒りをどうすればいいのかわからないことが多いものですから、まっすぐな怒りを言葉にしてくれる少年3人にこれまで以上に共感し、「もっと怒れ~!!!」と応援したいような気にもなりました。
こちら↓はチラシを使った装飾。先日同様、工夫してくださっていて楽しいです。
ここからネタバレします。
生き残った少年3人が伝える中國新聞社のニュースは今の日本の報道と似ていますよね。1945年9月の枕崎台風によって起こった“山津波”は、今年8月の広島土砂災害と重なります。
気になったのは、最初から「今から不幸が起こりますよ~」という不穏な空気が流れてしまっていたこと。冒頭から原爆投下までは、7つの川に抱かれたこの上なく美しい広島の平和な日々を、幸せいっぱいに表現してほしいです。
【出演(8期生)】花江さん:荒巻まりの、池田碧水、鈴木麻美、滝沢花野、西岡未央、勝利:薄平広樹、哲学じいたん:坂川慶成、英彦:永澤洋、正夫:堀元宗一朗、手榴弾を持っていた日本兵:田部圭祐(6期生)、頼田昴治(6期生)
【作】井上ひさし【演出】栗山民也【ギター】宮下祥子【音楽監督】後藤浩明【模型作製】尼川ゆら【照明】服部基【衣裳】中村洋一【音響】秦大介【映像】井形伸一【方言指導】大原穣子【ヘアメイク】前田節子【演出助手】泉千恵【舞台監督】米倉幸雄【研修所長】栗山民也【制作】新国立劇場
【発売日】2014/07/04 一般 A席 2,100円 B席 1,600円 学生料金 チケット料金の半額
http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/140923_005447.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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