ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの新作、劇団公演です。上演時間は約2時間25分(休憩なし)。ままごとの大石将弘さんが出ていらして、ちょっと不思議で嬉しい気持ち。
ごく一般的な会社員たちの日常の風景かと思いきや…するりとブラックに反転。まどろっこしいやりとりのナンセンス・コントは別役実戯曲のよう。そういえば12月には別役さんの新作をKERAさんが演出されるんですね。
⇒CoRich舞台芸術!『社長吸血記』
≪あらすじ≫
社長が行方不明になって数か月。屋上でいつものようにランチを取って、通常通りの業務をおこなっている社員たちだが、さすがに不安になってきた。警備員がのん気にしていると、「昔、このビルで働いていた」という不審者たちが屋上に集まってきて…。
≪ここまで≫
具象美術ですが壁に映像が映し出されたり、会社員以外のエピソードが突然挿入されたりするので、謎解きにわくわくしたり、軽妙な会話にワハハと笑うばかりではいられず、「一体これは何なの…?」と考えざるを得なくなります。私は最後まで関連や意味はわからなかったですが(そんなのもともとないのかもしれませんが)、終演した時にはうっすらと、人間性を失った私たちの話なのかな~と思いました。
練りに練られた言葉遊びやナンセンス・ギャグが積み上げられていくと、可笑しさが増すだけでなく恐ろしさも沸き起こってくるものなんですね。嘘が高じてホラーになるというのか。
ここからネタバレします。
会社員たちの会話から、老人から大金をだまし取るあくどい商売をやっていることが判明。なんと体を売って顧客を獲得する演習まで行っています。若い社員たちは金にまみれて金銭感覚がおかしくなっている様子(社員旅行のビンゴの景品の1等賞がヨットだったりする)。警察(みのすけ)ともべったり癒着していて、暴力も殺人も厭わない…。ギョっとするほどの悪口が飛び交い、当然のように非人道的なことが行われるのは、意外性があって可笑しいのですが、起こっていること自体は怖いことです。それをなんでもなさそうにスルーしている登場人物たちは、色んな不祥事、事件を見てみぬふりをしている私たちと重なります。
“昔このビルで働いていた人たち”は会社ごっこをしていました。事業が何かもわからないまま、次のステップへと進んでいることにしてしまう大人たちは滑稽というより恐ろしくて。すべては警備員(喜安浩平)が見た夢だったのかもしれませんが。
最後にはお隣のビルもアパートもひどく傾いて、舞台全体がSFの廃墟のようになりました。「本当は自分がいるビルの方が歪んでいるのかもしれない」という意味のセリフがあり、劇場自体が斜めになったような感覚が得られました。
自称探偵(山内圭哉)の手帳に書かれていた「意味を成していない言葉」がすごく可笑しかったです。「マンボウは寿命が来たら、死ぬ」「イカの寿司が、在る」など。
42nd SESSION
≪東京、福岡、大阪、新潟≫
出演:三宅弘城、大倉孝二、みのすけ、喜安浩平、犬山イヌコ、峯村リエ、村岡希美、皆戸麻衣、水野小論、猪俣三四郎、小園茉奈、大石将弘、鈴木杏、岩崎う大(かもめんたる)、槙尾ユウスケ(かもめんたる)、山内圭哉
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 美術:BOKETA 照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音楽:和田俊輔 音響:水越佳一(モックサウンド) 映像:上田大樹(&FICTION) 衣装:三大寺志保美(三茶茶房) ヘアメイク:宮内宏明(M's factory) 演出助手:相田剛志 ステージング:KENTARO!! 殺陣指導:明樂哲典 舞台監督:菅野將機(StageDoctor Co,Ltd.) プロデューサー:高橋典子 制作:青野華生子 前田優希 川上美幸 川上雄一郎 仲谷正資 票券:北里美織子 広報宣伝:米田律子 制作:北牧裕幸 企画・製作:シリーウォーク キューブ
【休演日】9/29 10/7,14【発売日】2014/07/14 (全席指定/税込):6,900円(当日・前売共) 学生割引券:4,300円(前売のみ/チケットぴあのみ/劇場受付にて学生証提示) リーズナブルな価格で多くの学生の皆様にご覧頂くため、学生割引券をご用意致しました。 ※学生割引券は当日指定席引換券となります。当日、劇場受付にて開演30分前(開場時間)より指定席券とお引き換え致します。
その際、必ず学生証をご提示ください。学生指定席は、通常の席に比べてややご覧になりにくいお席になる場合がございます。二名様以上の場合、お席が離れる場合もございます。なお枚数には限りがございます。また、学生証のご提示がない場合は一般料金との差額をいただきます。
http://cubeinc.co.jp/stage/info/nylon42nd.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。