2013年7月に荻窪に誕生したKARAS APPARATUS(カラス・アパラタス)に初めて伺いました。勅使川原三郎さん率いるダンス・カンパニーKARASの本拠地、になるのかしら。
1階が入口と受付、地下1階がロビー兼ギャラリー(鏡が貼られていて稽古もできるようです)、地下2階がホール(50席ぐらい?)。清潔感があって、アロマが焚かれていて、カジュアルなのに神聖な雰囲気も感じられる創造空間でした。
地下1階でゆったりした後、ホールでアップデイトダンス・シリーズの11作目を拝見。上演時間とトーク込みで約1時間15分。
勅使川さんのダンスを至近距離で観られて、率直なトークも聴けて、2000円…。何なんだこの贅沢さはっ!!
⇒CINRAの勅使川原三郎インタビュー1、2
⇒CoRich舞台芸術!『「目」見るだけでなく』
音楽はベートーベンの交響曲第7番(だったと思います)。勅使川さんのソロの後に佐東利穂子さんのソロ。一人のアーティストが本気で立って、動いている、その姿をごく間近で見つめ続ける、とても濃厚な無言の時間です。勅使川さんは静かに激しく動くのですが、巨木のようにどっしり、ずっしりとした存在感。軸が全くブレない感じ。佐東さんは何かに動かされ、引っ張られ、それに任せて体が引きちぎられるような白熱のダンス。どちらも見ごたえがありました。ダンサーの孤高は尊いです。
コンテンポラリー・ダンス鑑賞は思索の時間だとつくづく思いました。夜8時から1時間強という時間帯もありがたいです。鑑賞後、一緒に行った友人と荻窪のアットホームな居酒屋さんで軽くお食事もできて、至福。もちろん話題はこの公演、そしてKARAS APPARATUSについて。
一般向けのダンス講習も行われている開かれた場なんですね。まず、ダンサーさんは行ってみた方がいいと思います。演劇関係者もきっとうらやましい気持ちになるんじゃないでしょうか。その場で毎日稽古して、毎日変更を加えて、観客に見せる環境があるなんて。観客にとっても、アーティストと対峙して自分自身とも会話するような、決して消費にはならない、幸福な芸術鑑賞でした。
荻窪駅西口の駅の通路にポスター↓が貼られていました。地元密着感もいいですね。
ここからネタバレします。
毎日変わっていくそうなので(だからアップデイト・ダンスなんですね)、ネタバレじゃないかもですが。
最後は照明が暗くなり、部分的に白く照らされます。佐東さんが舞台中央に立っているのだけれど、ぼんやりと見えるのが腰から下だけだったり。佐東さんの姿と影とが、白い光の中央にあり、まるで目玉のよう。タイトルの「目」がここに来たんだなと思いました。
≪終演後のトーク≫
踊ったお2人がそのまま舞台に残ってくださったのですが、勅使川さんがほとんど1人でしゃべりっぱなし!ベートーベンの音楽への思いや幼少のころのことも。ビートルズに「Roll Over Beethoven(ベートーベンをぶっとばせ)」という曲があるけれど、「ビートルズの方がベートーベンにぶっとばされている」と(笑)。「(自分は)音楽の真似をしていた」という言葉に打たれました。
終演後は勅使川原さん、佐東さんのお2人がにこやかに観客を送り出してくださいました。この親密度は何!?素直に感動しちゃいました…。
アップデイトダンスNo.11
出演:勅使川原三郎、佐東利穂子
主催:有限会社カラス
一般 予約2000円(当日2200円) 学生 予約1500円(当日1700円) (開演30分前より受付・客席開場は10分前)
http://www.st-karas.com/karas_apparatus/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。