マームとジプシーの藤田貴大さんが野田秀樹さんの1983年初演戯曲『小指の思い出』を演出されます。藤田さんがご自身以外の劇作家が書いた戯曲を演出されるのは初めて。
最初の10分ぐらいは、尖がった現代ドイツ演劇みたいでめっちゃくちゃかっこ良かった!藤田さんの演出力、センス、そしてアーティストとしての強さを見せつけられました。また藤田さんが自作以外の戯曲を(藤田さんの言葉で翻案せずに)演出されることがあれば、ぜひとも観たいと思いました。
2015年夏に新演出での『cocoon』再演ツアーが決定。オーディションが開催されます。ご興味を持たれた女性は『小指の思い出』をご覧になっておくといいと思います。
東京芸術劇場「小指の思い出」。野田秀樹さんの原作も知らず舞台も未見、あらすじを読んだだけで拝見。演出の藤田貴大さんがご自身の方法で世界を作られていて素晴らしい。演劇公演の形、舞台と客席の捉え方が野田さんとは異なる。セリフが聞こえづらいストレスはあったが「cocoon」より私好み。
— 高野しのぶ (@shinorev) 2014, 9月 29
⇒公演特設ページに藤田さんのロングインタビューあり
⇒観客席からの手紙「夢の遊眠社『小指の思い出』(1986年9月)劇評」
⇒CoRich舞台芸術!『小指の思い出』
私は大絶賛された『cocoon』も前作『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと----------』も、センチメンタルすぎる部分が苦手で、もしかすると藤田演出とは相性が合わなくなったのかな…と思っていたんです。でもそういうわけじゃなかったみたい。以下、facebookで少し書き残していた日記を載せておきます。
音楽で、詩で、魂が宿った小さな叫びでした。個人的にはこういう方法で野田さんの言葉を聴けたのは幸せでした。
あうるすぽっとで上演された中野成樹さん演出の『長短調(または眺(なが)め身近(みぢか)め)』は、原作戯曲『かもめ』を現代日本を舞台に大胆に翻案・演出しつつ、チェーホフ戯曲の核を伝えてくれた傑作だったと私は思ってるんですが、今作もそのような方向の演出だったのではないかと思います。ただ、私は『小指の思い出』を全く知らないのでわからないのですが。
また、この2つ(『小指の思い出』と『長短調』)の公演に共通するのは公立劇場の企画だということ。普段は小劇場で自分たちの仲間と創作している若い演出家に、大きな空間とそれなりのバジェット(おそらく)とプロの人材を提供し、自由に挑戦させているのは、公(パブリック)ならではだと思います。東京に暮らす一演劇ファンとして感謝します。
※以下、『小指の思い出』は暗唱できるぐらいだという演劇研究者のひびのけいさんのツイートです。ご参考まで。
藤田貴大演出『小指の思い出』。大方の人にとって物語を語る努力を放棄してる演出は失敗作。台詞をほぼ暗唱できる人間にとって物語の再構成の巧みさと様式美を追求した演出はたまらない魅力。よく知られた古典のつもりで好きなように料理した藤田の「幼さ」と卓越した演出の才能のアンバランス。
— ひびのけい (@hbnk) 2014, 9月 29
夢の遊眠社時代の野田秀樹が錯綜した筋を少しでもわからせようと商業演劇顔負けのベタでクサい演出をしてたのと対照的に、藤田は野田の詩的言語に相応しい、美しく創意に満ち溢れた仕掛を舞台に施す。「やり過ぎ」の部分もあるとはいえ(エコーきかせた音響とか)それで作品の一部の魅力は引き立つ。
— ひびのけい (@hbnk) 2014, 9月 29
たとえれば高橋悠治『ベートーヴェン「春」ランダムアクセス』ツィンマーマン「ユビュ王の晩餐のための音楽」。引用された音楽が切断・蹂躙されたのちも美しさを保っていることの驚きと喜び。日本語戯曲でも屈指の美しさを誇る遊眠社時代の野田の台詞は文脈を断ち切られその詩的生命だけ生け捕られる。
— ひびのけい (@hbnk) 2014, 9月 29
『小指の思い出』。物語は十章と複数のプロローグ・エピローグに分断され「演奏」される。原作が未だ囚われていた、時間的持続(=はじめ、中、終わりというアリストテレス的時間)の呪縛を無造作に断ち切り、各々10分に満たない音楽/ナンバーが脈絡なく連なるレビュー構造に読み替えるその大胆さ。
— ひびのけい (@hbnk) 2014, 9月 29
『小指の思い出』初演の1983年以降野田が走ることになった大衆化路線を批判し、本来野田が走るべきだった(だが今ほど広範な支持は得られなかっただろう)路線を示唆する藤田貴大演出を見て野田は何を思っただろうか。小田島雄志がほぼ寝倒し大笹吉雄が憮然として拍手しなかったのは見ただろうが。
— ひびのけい (@hbnk) 2014, 9月 29
『小指の思い出』俳優陣ではまず飴屋法水。意識せずして感情が全身に表れるそのヒステリーの身体をふんだんに、だがやり過ぎることなくさらけ出し、全盛期・俳優野田秀樹の「全身で歌う身体」の存在感に拮抗する。飴屋演じる粕波聖子の台詞の一部を話す青柳いづみや宮崎叶夢も藤田演出をよく体現する。
— ひびのけい (@hbnk) 2014, 9月 29
赤木圭一郎役の勝地涼は健闘するも、台詞を言い直したりテンポが遅れたりする箇所が数度あり、藤田演出の音楽性を考えるとかなりのマイナス。当たり屋文左衛門役の松重豊、段田安則の当たり役だけにどうかと思ったが、しり上がりによくなる。唯一、花登筺の芝居のパロディの文脈が欠如してたのは残念。
— ひびのけい (@hbnk) 2014, 9月 29
大好きな俳優だが、今回山内健司は可哀想なほどミスキャスト。台詞を張って言うと無理矢理感が出る。テンポの早い芝居になると身体の反応が追いつかない。遊眠社芝居の対極にある身体性を持った山内を敢えて配する面白さを狙ったのだろうが、単に場違いなだけで、早く青年団にお帰りと言いたくなる。
— ひびのけい (@hbnk) 2014, 9月 29
文脈が異なるのですが、村上湛さんのツイートもご紹介しておきます。
「昔ながらの“遊芸”に立ち返る」と安直に説くが、琴・三弦を弾き、花を立て、茶を点じ、香を聞き、藝者藝人に祝儀を包み、そうした本当の「遊芸」を心得た者は決してこんなことは言わぬもの。これらすべてを楽しむ身として敢えて言わせて頂く。「一流の遊芸に『誰もが気軽に楽しめる』ものなどない」
— 村上湛 (@PontmrcyMarius) 2014, 9月 24
出演:勝地涼、飴屋法水、青柳いづみ、山崎ルキノ、川崎ゆり子、伊東茄那、小泉まき、石井亮介、斎藤章子、中島広隆、宮崎吐夢、山内健司、山中崇、松重豊 ミュージシャン:青葉市子 Kan Sano 山本達久
脚本:野田秀樹 演出:藤田貴大 音:zAk 照明:富山貴之 衣裳:スズキタカユキ ヘアメイク:赤松絵利 舞台監督:森山香緒梨 技術監督:小林清隆、今野健一 主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 東京都/東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団) 制作協力:マームとジプシー
【発売日】2014/07/26 【全席指定・税込】S席5,500円 A席4,500円 高校生割引1,000円 25歳以下(A席)3,500円 65歳以上(S席)5,000円
『小指の思い出』&『半神』セット券:「小指の思い出」と国際共同制作「半神」のお得なセット券を販売します。
料金:9,000円/1名様分(全席指定・税込・S席・枚数限定) セット券発売開始 2014年7月19日(土) ※劇場ボックスオフィスのみ取扱い
http://www.geigeki.jp/performance/theater058/
特設ページ:http://www.geigeki.jp/ch/ch1/t058.html
『半神』:http://www.geigeki.jp/performance/theater063/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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