前川知大さんが作・演出される人気劇団イキウメの新作です。上演時間は約1時間35分。
劇場の壁が露出した状態のブラックボックスでの、予想以上にコンセプチュアルな作品でした。映画「マトリックス」を思い浮かべました(お話は全然違いますが)。
イキウメというと物語の面白さで引きつける作品も多いですが、今回は俳優の演技でじわじわと積み上げられていくような感じ。作品創作においても俳優の比重が高くなっているのではないでしょうか(予想にすぎませんが)。所属俳優の実力が上がっているのだと思います。
【舞台写真↓左から:盛隆二、浜田信也、安井順平(撮影・田中亜紀)】
⇒CoRich舞台芸術!『新しい祝日』
≪作品紹介・あらすじ≫ 公式サイトより
私が生まれた日。彼らが自由を勝ち取った日。
彼女の尊厳が失われた日。二人が未来を手にした日。
誰かが小さな嘘をついた日。神が人知れず死んだ日。
全てが過去となった日。あなたが再び生まれる日。
全ては必ず、平日に起こるだろう。
明日はきっと祝日になる、永遠の祝日に。
<ストーリーライン>
ある会社、
働き盛りの男が一人で残業している。
男はふと不安に駆られる。
自分はなぜここにいるのだろうと、立ち止まる。
見慣れた社内を見渡していると、
いつの間にか道化のような奇妙な男がいることに気がついた。
道化のような男は、会社員の男に現実の見直しを迫る。
今見えてる現実は本物なのかと、その「現実」を壊し始めた。
男は道化に誘われるまま、立場も名前もない「世界」へ入っていく_。
≪ここまで≫
ピエロ風の衣装の男(安井順平)に自分の世界を壊されて、無理やりに別の世界へと飛び込んだ汎一(パンイチ:浜田信也)。少しずつ手探りで周囲の人々と交流し、コミュニティーに参加していきます。
主役の浜田信也さんがスリムな上半身を披露。胸板の厚さ、肩から腕の筋肉にびっくり!いつの間にこんな肉体派に!(昔からだったらすみません) 素敵でした。
【舞台写真↓左から:安井順平、浜田信也(撮影・田中亜紀)】
ここからネタバレします。
大きなバランスボールを使った3対3のポートボールは、それぞれに対抗意識丸出しの演技が可愛らしかったです。大窪人衛さんの役名は「敵意」なんですね。
学校のクラブ活動(?)ではアップ(準備運動)ばかりを繰り返し、何をするクラブなのかが最後までわからないのもいいですね。手段の目的化がよくあらわれています。
ルール(だと信じている何か)を守り、周囲に合わせて生きていると、自分が何をしたいのか、何者なのかがわからなくなってくる。外側にいる誰か(このお芝居の場合はピエロ)がそれに気づかせてくれて、新たに人生をやり直しても、また同じことを繰り返してしまう。最後に一人だけ舞台に残った汎一は、転がっていたダンボール箱を組み立てて、再びデスクの形に戻しました。また同じループにはまるのか、それとも自分で人生を切り開いていくのか。どちらとも受け取れる終わり方だったと思います。
≪東京、大阪≫
出演:浜田信也 安井順平 伊勢佳世 盛隆二 岩本幸子 森下創 大窪人衛 澄人 橋本ゆりか
脚本・演出:前川知大 ドラマターグ・舞台監督:谷澤拓巳 美術:土岐研一 照明:松本大介 音楽:かみむら周平 音響:青木タクヘイ 振付:丸山和彰 衣裳:今村あずさ ヘアメイク:西川直子 宣伝美術:鈴木成一デザイン室 宣伝写真:野口博 舞台写真:田中亜紀 制作:湯川麦子 プロデューサー:中島隆裕 演出助手:郷淳子 演出部:渡邉亜紗子 照明操作:芦辺靖 音響操作:鈴木三枝子 大道具制作:C-COM舞台装置 運搬:マイド 当日運営:藤木やよい 主催:イキウメ/エッチビイ
[一般前売開始] 2014年10月11日(土)
前売 4,200 円 / 当日 4,400 円(全席指定・税込) ※未就学児童入場不可
追加公演 12/7(日)18時開演の部 <10月25日(土) 発売開始>
http://www.ikiume.jp/
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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