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REVIEW

2015年03月29日

【オーディション】カンパニーデラシネラ「「白い劇場」シリーズ第2回公演オーディション(2015年春)」05/18-19実施(申請書類受付期間:4月24日~26日)

 小野寺修二さんが主宰されるカンパニーデラシネラ(⇒facebookページ)が、3年がかりで取り組むプロジェクト「白い劇場」シリーズの参加者を、再度募集します(⇒告知エントリー)。

 第一弾『分身』は無名のダンサー、俳優が心をひとつにして作品のためにまい進する、素晴らしい作品でした。技術と高い志に裏付けられた、娯楽性に富んだスリリングな舞台で、幅広い層の観客にお薦めしたいと思いました。

 詳細は公式サイトで2015年4月上旬に告知予定。秋にもオーディションが開催されるそうです。
 ⇒告知されましたので加筆しました(2015/04/04)。

 ●カンパニーデラシネラ「白い劇場」シリーズ・オーディション
  第2回公演の日程と会場:2016年3月@シアターX
 ・オーディション
  オーディション日程:2015年5月18日(月)・19日(火)
  応募条件:小野寺修二演出作品を観劇したことのある方・原則30歳以下
  料金:無料
  申請書類受付期間 :2015年4月24日(金)~ 4月26日(日)
  ※合格者は年数期間行うカンパニー稽古に参加。
   その後、2015年11月ごろに第二回公演の出演者を決定。
   カンパニー稽古中のギャラは発生しません。

●「白い劇場」シリーズ 第2回公演 出演者 募集! ※公式サイトより

オーディション開催 《 2015年5月18日(月)・19日(火)》
公演日程:2016年3月下旬
(@両国 シアターXカイ)  

小野寺修二カンパニーデラシネラでは、
「白い劇場」シリーズ出演者を募集しています。
デラシネラの活動に興味ある方のご応募、お待ちしております!

【白い劇場シリーズ】
デラシネラが2014年度から始める新企画。
全ての出演者を公募し、マイムの動きをベースに台詞を取り入れた独自の演出で注目を集めている。
今年度は春と秋に公募を行い、2016年3月公演。

春期オーディション:2015年5月18日(月)・19日(火)
申請書類受付期間 :2015年4月24日(金)~ 4月26日(日)

応募条件:小野寺修二演出作品を観劇頂いたことのある方・原則30歳以下
応募方法:申請内容を記載の上、下記アドレスに送信ください。
その後4月中に、オーディションについての詳細をご連絡差し上げます。
shiroigeki(a)gmail.com  ※ (a)を@に変更して送信下さい。
(パソコンからの受信が可能なメールアドレスでのお申し込みをお願い致します)

オーディション参加料金:無料

申請内容:
1. 氏名(ふりがな) 2. 年齢(生年月日) 3. 身長 4. 活動歴 
5. 志望動機(200字程度) 6. 小野寺修二演出作品でご観劇頂いた作品名 
7. 5月18日19日 10時~22時で参加が難しい時間帯がある方はお知らせ下さい。

参加頂く日時は、上記2日間の内、いずれか数時間です。
会場は、都営大江戸線・都営新宿線 森下駅 徒歩5分です。


※応募者多数の場合、書類選考を行わせて頂きます。
※もし5月に入ってもこちらからの返信がない場合、恐れ入りますが上記アドレスまでご連絡下さい。
※春期オーディション通過者は、二次審査としてカンパニー稽古に参加頂きます。
 (カンパニー稽古参加期間中のギャラは発生しません)
※2016年3月公演の出演者は、2015年秋頃決定予定です。


主催 : 株式会社デラシネラ
助成 : アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
協力 : 公益財団法人セゾン文化財団

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 10:37 | TrackBack

2015年03月28日

カンパニーデラシネラ『分身~ドストエフスキー「二重人格」より~』03/25-29シアターX

 小野寺修二さん率いるカンパニーデラシネラの白い劇場シリーズ第一回公演です。オーディションで選抜された若い俳優、ダンサーが出演し、小野寺さんとパートナーの藤田桃子さんは出演されていません。

 ⇒舞台写真 ⇒稽古場写真
 ⇒CoRich舞台芸術!『分身~ドストエフスキー「二重人格」より~

 ※レビューは2016/06/05にアップしました。

ダイジェスト映像↓

 ≪あらすじ≫
 真実を追求する男性が青い服の女性に一目ぼれ。でもなかなか彼女に会えなくてジリジリする。ある日、勤務先の同じ部署に自分とそっくりの男性が新たに配属され、戸惑う。
 ≪ここまで≫

 テーブルと椅子と小道具(紳士ものの山高帽、マフラー、ジャケット、タイプライター、ワイングラス等)以外に何もない空間で、人が動き、語ります。音楽、効果音、そして照明の変化によって津次と新しい景色が見えてきます。

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 劇場公式サイトより
ある男がもう一人の自分を見つけてしまう。 もう一人の自分は、 男の生活をどんどん奪っていく。 男は、自分と全く正反対で、 要領よく社会に溶け込んでいく。

今回カンパニーデラシネラは、新企画「白い劇場シリーズ」を立ち上げます。 単発ではない、長期的な視野に立ってメンバーを募りたい思いです。
昨年頃から、ここへきて急に団体について考えるようになりました。2008年に名乗り始めたデラシネラですが、あっという間に7年、これまでは反対を思っていたのに不思議です。 ここのところ観た劇団の、団体力が眩しかったのかもしれません。僕が何か方向性をようやく見出し始めているのかもしれません。 共通言語、経験を共有することの贅沢、思いつきでは手に入れられない何か。直感。随分鼻息荒く、昨秋、オーディションを催しました。
こちらのブルンブルン空噴かしの状況は、周りにしたら関係なく。字ヅラの宣言には何の力もない。何だかそんなことを思いました。 何も始まっていない。進め方は直感で決めよう。出演者はこれまでを考えると随分多い13名にしました。
3月の公演に向け1月から稽古を始めています。こんなに贅沢に時間を使える機会はこの先ないのではと。直感はあっていた。そんな予感を含みつつ、この新たな企画を、大切に進めていこうと思うのです。
第一回公演、ご来場を心よりお待ちしております。
 ≪劇場公式サイトより≫

追加公演3月28日(土)18時開催決定!
出演:荒井志郎、王下貴司、大庭裕介、京極朋彦、田中弘志、遠山悠介、野坂弘、久野祐希奈、崎山莉奈、仁科幸、花島令、浜田亜衣、増井友紀子
演出:小野寺修二 照明:吉本有輝子 音響:井上直裕 池田野歩 衣装:駒井友美子(静岡県舞台芸術センター) キャスト協力:山口茜 演出助手:藤田桃子 稽古場助手:田口瑠風 舞台監督:橋本加奈子 当日運営:市川美紀 イラスト・チラシデザイン:チャーハン・ラモーン 制作:カンパニデラシネラ 助成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団) 協力:公益財団法人セゾン文化財団 提携:シアターX 主催:株式会社デラシネラ
一般発売日 2015年2月21日(土) チケット料金:(日時指定・全席自由・税込) 一般前売 3,000円 当日 3,500円 ※プレビュー公演 2,000円・未就学児の入場はご遠慮頂いております。・開場は開演の30分前を予定しております。
http://www.onoderan.jp/website/
http://www.theaterx.jp/15/150326-150329t.php

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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2015年03月27日

【写真レポート】SPAC「「ふじのくに⇄せかい演劇祭2015」プレス発表会」03/16アンスティチュ・フランセ東京エスパス・イマージュ

 SPAC・静岡舞台芸術センター(⇒公式ツイッター)が「ふじのくに⇄せかい演劇祭2015」を開催します(過去エントリー⇒)。

 昨年に続いて今年もゴールデンウィーク期間です。SPACの演劇作品は新作2演目と再演1演目、日本からは鳥取の「鳥の劇場」のお芝居が1演目と、静岡で新製作する体験型演劇が1演目。海外からは台湾、韓国、レバノン、ベルギーの4演目が来日します。
 映像上映や連続シンポジウム、お茶詰み体験や地元ホームステイ等、関連企画も盛りだくさんです。

 ※長いレポートですので、写真を目印にして、気になる演目からご覧ください。

 ●SPAC「ふじのくに⇄せかい演劇祭2015」公式サイト
  2015年4月24日(金)~5月6日(水・祝)
  会場:静岡芸術劇場、舞台芸術公園、他
  ⇒BricolaQ「SPAC「ふじのくに⇄せかい演劇祭」プレス発表会」(落雅季子)
  ⇒Next「コア・コンセプトは、アングラ演劇50年

【写真↓左から(敬称略):ダニエル・ジャンヌトー、鈴木一郎太、西尾佳織、宮城聰】
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 ■アンスティチュ・フランセ東京館長のジャン=ジャック・ガルニエさんのご挨拶

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ジャン=ジャック・ガルニエさん

 ガルニエ:毎年このように「ふじのくに⇄せかい演劇祭」のプレス・カンファレンスを行えることを大変光栄に思っております。SPACは何年も前からフランスの重要な劇作家、演出家を数多く招聘しており、そこから数々の作品や出会いが生まれています

 今年は演出家のダニエル・ジャンヌトーさんが来日し、同演劇祭で新作『盲点たち』を発表します。ジャンヌトーさんは2009年の『ブラスティッド』、2011年の『ガラスの動物園』に続いて、今回で3度目の来日になります。このような蓄積が日本とフランスの交流の核となり、豊かで強く結ばれた関係が築かれているのです。

 この場をお借りしまして、宮城様、SPACの皆様にお祝いを申し上げたいと思います。昨年のアヴィニョン演劇祭でのご成功、おめでとうございました。それでは、今年の演劇祭の豊かなプログラムについて宮城さんのお話を伺いたいと思います。


 ■芸術総監督より「ふじのくに⇄せかい演劇祭2015」のテーマ、全体概要について

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宮城聰さん

 宮城:今年のコンセプトは“アングラ演劇50年”です。僕の前にSPACの芸術総監督をされていた鈴木忠志さんが創立された早稲田小劇場が、今年でちょうど50年目になります。1960年代の半ばに早稲田小劇場、状況劇場、天井桟敷、転形劇場、あるいは黒テントの前身の団体が活躍し、日本のアングラ小劇場運動がスタートしました。50年も経ったことに驚きます。50年目にしてその遺産がいかに継承されているのか、あるいは発展を見せているのかを見ていただきたい。これが1つ目です。
 もう1つは、日本のアングラ小劇場ムーブメントと似た、一種のシンクロニシティーとして海外で登場した、オルタナティブな表現。海外で生まれた双子のようなものを見ていきたい。アングラ小劇場ムーブメントの核となる考えとは、ひとことで言うと反・権威、半・自然主義。それからフォークロア、つまり民族的なもの、プリミティブなものに対するリスペクトですね。そして「芸術以下」と見なされていた身体芸やサーカス、あるいは呪術といったものの復権。そういうものを共有している表現を、海外から集めたプログラムになっています。


 ■SPAC『メフィストと呼ばれた男』(日本) 写真:(C)日置真光 ⇒公式サイト

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 解説:ヒットラー政権下、ドイツ最高の俳優と呼ばれながら、時代に翻弄された天才俳優の姿を通し、芸術とは、劇場とは一体誰のものかを問う、社会派作品です。昨年のアヴィニョン演劇祭で絶賛された『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』以降、挑戦を続ける宮城聰の日本初演作品です。

 宮城:この戯曲を書かれたトム・ラノワさんは僕とほぼ同い年のアントワープの劇作家です。なぜ僕が、自分の得意なジャンルとは言えないリアリズム的な演劇を取り上げることにしたかと言うとですね、あの…非常に、僕はまあ…数年前までは全く想像していなかったんですが…ひとことで言うと、日本が、戦争に近づいている。戦争する国に近づいている、という状況に突入してしまってですね、公立劇場はこういう時に何ができるんだろう、あるいはどうすればいいんだろうと考えていたんですね。その時の唯一の参考例がドイツだったんです。つまり1930~40年代にかけて、ヨーロッパを震源として戦争に突入していく時代に、公立劇場の制度が整っていたのはドイツだけだった。ですので第二次世界大戦直前に公立劇場がどうしたか、あるいは公立劇場のアーティストがどうしたかを学ぶお手本はドイツの公立劇場だと考えて調べてみたところ、このトム・ラノワさんの戯曲を思い当たったわけです。
 もともとはトーマス・マンの息子であるクラウス・マンが1936年に出した「メフィスト ある栄達の物語」という小説です。ナチス政権自体が右肩上がりの時代の中で、ベルリンの国立劇場(正しくはプロイセン州立劇場かもしれませんが)の芸術監督だった男が、いかにして出世していくのかを描いています。その後、イシュトバン・サボーというハンガリーの監督がドイツで映画化したり、フランスの太陽劇団が舞台化したりしています。今回上演する『メフィストと呼ばれた男』(原題:Mefisto For Ever)はその小説を基にはしているんですが、かなり自由な翻案をされている前半部分と、さらにその後、1945年ぐらいの状況までを書き継いでいる作品なんです。
 僕は、日本に公立劇場が増えてきている中で、公立劇場の芸術監督やそこで仕事をする俳優やスタッフたちが、この戦前のドイツの公立劇場のことを考えるきっかけを提起したい。僕一人では到底、答えの出ない問題なんですが、この作品を上演することで皆が考えるきっかけになったらいいなと、切実に思っています。皆が考えるところから連帯が生まれていけばいいなと、今、切実に願っています。

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 宮城:『メフィストと呼ばれた男』は、僕にとってはほとんど初めてに近い“リアリズム式”の演劇です。「1932年に本当にこういう人たちがいた、そしてそれは今の僕たちに本当に近い存在なんだ」と思ってもらう。そういう意味で、極めてリアルであることが求められるタイプの戯曲なんですね。こういう戯曲をそっくりそのままの形で演出するのは、僕にとってはほぼ初めてのことなので、大コケするかもしれないんですけれども(笑)、ここに込められた問題意識を一人でも多くの方に共有していただければと思っています。

 時事通信記者:宮城さんは今の政治、社会情勢の中で今年が決定的な年になるというご認識だと思いますし、それは私も共有しているところです。今年、演劇人も含む表現者がこの1年で何を、いかに表現したかは、20年、30年後まで評価をされ続けるのではないか。その意味でも非常に重みのある時期だと思うんですが、その中で宮城さんは敢えてリアリズムに基づいた作品を、もしかしたら今までよりもリアリズムよりの演出で表現することを選択された。そこにはどういう意味があるんでしょうか。

 宮城:(熟考の末に口を開いて、静かな声で)どんな作品を作る時ももちろん、僕は過去を参照するわけなんですが…特に日本では公立劇場がまだ黎明期で、言ってみれば今、公立劇場にいる人は皆、もっぱら「公立劇場を根付かせなければいけない」という方向でがんばっている。根付かせる時の“気の遣い方”として結果的に、その時代の空気を読む方向に行ってしまう。「今、こういう空気だよね」と空気を読み、それに従うことによって、自分たちをその地域に根付かせようと考えてしまう。…そういうことが…起こりやすい、あるいは起こっているのではないか。
 作品が本当に固有の状況を考えるヒントになるためには、メタファ(比喩)を使えないような気がしたんですね。何らかの意味で普遍化する手法は使えないんじゃないかと思って。「本当に今、1932年のベルリンの公立劇場にいたら。自分がスタッフ、俳優、演出家としてその現場にいたら、どういう風に考えるんだろう」と、特有の状況に自分を置いて考えて欲しい。僕も考えているんだけど、皆もこのことについて考えてみて欲しい。少しでも仲間を増やしたい。そのためには今申し上げたように、一切抽象化できないんじゃないかと思ったんですね。


 ■SPAC『ふたりの女 平成版 ふたりの面妖があなたに絡む』(日本) 写真:(C)橋本武彦 ⇒公式サイト

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 解説:50年に渡り日本のアングラ小劇場演劇シーンを疾走してきた唐十郎の『ふたりの女』。小劇場スピリットを燃やし続ける宮城聰が、その演出術を駆使した初演から6年。再演を熱望する声に応え、伝説の舞台が野外劇場に帰ってきます。

 宮城:アングラ小劇場ムーブメントが始まった1960年代は、まさに政治の時代だったと言ってもいいと思うんです。僕はまだ小学校1年生ぐらいだったんですが、母親が仲間たちと「日本にもう一度徴兵制が布かれたらどうしよう」と話していたり、母親が「そんなことになったら、息子の代わりに私が行く」と言うのを、子供心に聞いた覚えがあります。そういう時代に、社会とアーティストにどういったかかわり方があったのかを、今回の演劇祭を通じて考えることが出来たらと思っています。
 “政治の季節”という言い方はちょっと軽いかもしれないですが、今回はベイルートの作品も上演します。政治の嵐が吹き荒れている中で、人間の生、すなわち生きることそのものを見つめたい。あるいはその暴風雨の中で、自分がなぎ倒されていかないように、どういうことを考えなくちゃいけないのか。自分というものを地に立たせるために、もう一度自分の中を見るにはどうしたらいいのか。そういうことも今回の演劇祭を通じて考えていきたいです。
 『ふたりの女』においても、最初の場面にはデモ隊が登場します。政治の暴風雨、たとえば今日でいえば“排外主義の気分”といったものが、ものすごい勢いで吹き荒れている中で、風になぎ倒されずに自分を見つめていく1つの手法として、演劇をもう一度見直していきたいと思います。


 ■ダニエル・ジャンヌトー演出・SPAC『盲点たち』(日本・フランス) 写真:(C)Pierrick Blondelet ⇒公式サイト

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 解説:人間の深い闇や絶望をあらわにするメーテルリンクの作品。そこでは沈黙や生活が重要な意味を持っています。本作の上演エリアは闇に覆われた静岡、日本平の山の中。声と気配によって浮かび上がる生と死の深淵は、まさに劇的な体験となるでしょう。世界初演となるSPAC『盲点たち』、どうぞご期待ください。

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ダニエル・ジャンヌトーさん

 ジャンヌトー:今回、日本に戻って来るのは3回目です。SPACで3度目の仕事をさせていただくことになり、本当に幸せだと思っております。というのは、私はSPACのチームをとても愛しているからです。SPACで2回、作品を作った経験は、私の仕事上でも人生においても、最も重要なもののひとつだと思っております。宮城さんが作り上げたこのカンパニーの皆さんのお仕事は、真面目さ、情熱が他のカンパニーと比べても深いものであり、そのおかげで私がいつも演出家としてやっている仕事よりも、もっと遠くまで行けるような気がしています。
 「メーテルリンクの『盲点たち』を日本平の森の中で上演する」という宮城さんからのご提案は、この作品をより深い意味を持って上演できる環境を与えてくださいました。人間の普遍的なものを表現するのに適した環境だと思います。
 『盲点たち』はメーテルリンクの一幕劇のシリーズの短い作品の1つです。そのうちの1つである『室内』はSPACでクロード・レジさんが演出されました。これらの作品はもともと人形劇として書かれ、人間のいわば“内部”で上演されることを前提として書かれた作品です。この作品は非常にドラマティックで、まず一番初めは一人の神父に連れられて、12人の盲人たちが森の中にやってきたところから始まります。そして彼らの唯一のガイドである神父が、彼らを置いてどこかに行ってしまった…と思いきや、盲人たちはやがて、神父が彼らのすぐそばで亡くなっていることを発見します。森から連れ出してくれるはずのガイドが亡くなっていると気づき、盲人たちは自分たち自身の死の予感さえ感じるようになっていきます。
 というわけで、一見、暗いお話なんですが、メーテルリンクはベルギーのフランダース地方の出身で、フランダースにはブリューゲルという有名な画家がおりますように、ブリューゲル作品によく見られるある種のユーモアがふんだんに含まれている作品でもあるのです。フランス語で書かれた演劇作品の歴史においても、非常に動きが少ない作品であるにも関わらず、最もラディカルで、最も暴力的であるとも言えます。

 稽古を始めてもう2週間ぐらいになるんですが、稽古をする度にこの作品がいかに普遍的かということに気づかされます。非常にシンプルな言葉で書かれており、プロフェッショナルな俳優、それからアマチュアの俳優がセリフを口に出す度に、その言葉が本当に彼らの口から出たように感じられることがよくあります。素晴らしいチームを提供していただけたので、稽古をしていてとても楽しいです。俳優たちはそれぞれに演技のスタイルも表現の仕方も全く異なります。『盲点たち』は人類全体を表現しているような作品なので、それが非常によく伝わるチームになっております。私は日本の俳優が大好きです。私は日本に来て日本の俳優と仕事をしている時の方が、自分がいい演出家になっている気がします(笑)。ありがとうございます。

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 宮城:僕は昔から、そして今も、人形劇にとても興味がありまして、演出で2人1役という手法をずっとやっております。生身の俳優を敢えて人形のようにしていく手法です。『盲点たち』の場合はその逆で、そもそも人形劇のために書かれたメーテルリンクのこの戯曲が、生身の俳優によって演じられれば、通常の演技のコード(code)や、ありきたりの文法が使えなるんですね。僕の関心と全く反対のアプローチなのに、僕が見たいもの、似たようなものが見えてくる気がしていて、とっても楽しみにしています。


 The Japan Times記者:どういう鑑賞方法になるのかを教えてください。

 ジャンヌトー:1公演で100人ぐらいのお客様に観てもらいたいと思っています。照明も衣装もございません。俳優にはその日、着ている服で出てもらいます。観客は舞台芸術公園のBOXシアターの近くに集合し、そのまま谷底の方に降りて行って、皆で森の中をさまよっていただきます。この作品に登場する12人の盲人たちと同様に、観客がBOXシアターから森の中へと歩いて行くところから、作品が始まっているようにしたいと考えています。
 フランスでは1年前に上演したんですけども、会場は劇場でしたし、全く違う条件でやりました。2つのバージョンの共通点は観客と俳優の間に全く違いがないことです。観客には森の中の開けている場所でイスに座っていただきます。イスはあらゆる方向を向いており、どこを向けばいいというものはありません。俳優も観客も混じり合っていて、観客が座ると同時に俳優も座ります。俳優は12人で、あちこちに散らばっています。観客が「なんだこれは!」と怒りだして、事件が起こってしまった…という感じで、俳優が話し始めるのです。日常生活の中からお客さんを手でそっとすくい上げて、だんだんと非日常的な体験へと連れて行くような作品です。非常に特異な、極端な経験にまで連れて行きます。

 ジャンヌトー:この作品は30年以上前、私が少年の時に出会い、そのころから上演したいと思っていました。さらに言うと、これは私が演劇をやりたいと思ったきっかけになった作品だと思うんです。宮城さんが先ほど「1960年代に民衆的な演劇を求める」という話をされていました。この作品はまさしく誰の手にも届く作品でありながら、人間の非常に深い心理、深淵を語ることが出来るものです。その意味では理想的な作品だと思います。
 最後に付け加えますと、この作品では全く何も、見るものがありません(笑)。私は演出家になる前は長らく舞台美術家として活動しており、たとえばクロード・レジ作品の装置を作っていました。私の舞台美術家としての野心は、舞台の上に美しいイメージを作るのではなく、観客の心の中に強烈なイメージを作ることでした。この作品はまさに、全く何も見ないのに、見終わると、心の中に沢山のイメージが生まれ、観客がそれを持って帰ってくれるものだと思います。私は観客の想像力、クリエイティビティを深く信じています。


 ■『例えば朝9時には誰がルーム51の角を曲がってくるかを知っていたとする』 ⇒公式サイト
  演出:大東翼[(株)大と小とレフ]、鈴木一郎太[(株)大と小とレフ]、西尾佳織[鳥公園]

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 解説:さまざまな土地で滞在製作に取り組んできた演劇ユニット“鳥公園”の西尾佳織さんと、地元静岡で個性的な活動を続ける2人がタッグを組んで、町が舞台の演劇に挑戦します。SPACがある静岡市駿河区池田地区に出現する架空の町をめぐる冒険。演劇版ロールプレイングゲームのような作品です。世界初演となるSPACの体験型演劇です。

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鈴木一郎太さん

 鈴木:今回はSPACのこの機会に呼んでいただいて、非常に光栄なんですが、戸惑っています。ご存知かと思いますが、僕は演劇の経験は皆無です。僕を支えてくれる唯一の頼りは、このポスターに書いてある「さっ、出かけましょ!空気を読まなくていい世界へ。」というキャッチコピーですね(笑)。演劇界から呼ばれて、空気を読まないという役割を、最後までちゃんと全うしたいと思っています(笑)。
 普段は商店街の街づくりや福祉業界での仕事、木こりたちとのプロジェクトなど、街のいろんな場面でアートプロジェクトを展開することを生業としています。とんでもないほど多数おこなわれている日本のアートプロジェクトの中でも、街を舞台にしたものは多く、街を舞台にした演劇のことも聞いております。その中で「違った視点で街を見ると、こんなものが、あんなものが見えてくる」「街の暮らしが見えてきて面白い」といったものが大半を占めることが気にかかっています。そこには「社会の中でアートがこれだけ結果を出せるんだ」という成果を出すためだったり、「街に効果を残したい」という思惑があると思うんですね。ただ今回はその軸がなく「街で作品を作ってください」というご提案だったので、「他人が他人の街に行って違った視点を持ち込むことで、他人の生活を勝手に見たてて面白がる」ようなことは止めようと思います。現段階では「架空の街を実際の街の上にかぶせていく」という方法を取ろうという話になっています。

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西尾佳織さん

 西尾:静岡芸術劇場から歩いて25分ぐらいの池田という街の中で演劇をやります。池田についての一番の印象は土地が余っていて、余白があるなぁということ。ちょっとびっくりしたんですよね。静岡に毎週通って鈴木一郎太さんと大東翼さんと作っているんですが、私が「静岡」とざっくり捉えていたものの中にも、色々あるんだなと感じています。
 最近読んだ小説でグっときたことがありました。飛行機から爆弾が落とされる時、ボタンが押されて投下されちゃうと、爆弾が落ちることはもう決まってる。人は終わりの予感があって初めて、爆弾が飛行機から発射されてから地面に着くまでの時間について、ものすごく考えられる。逆にそういうことがないと、人は“今ここ”をあまり感じられなかったり、考えられないんじゃないか。そういうことが書かれていたんです。爆弾というと大層なことですが、起こってないことについて考えることはとても難しいし、何でもそうだなと思います。
 誰も皆、自分の住んでる場所はあるはずで、街というのは日本中、世界中にあるはずなんだけど、なかなか街をとらえることはできない。私たちが今回やろうとしていることは、出掛けて行って、“今ここ”という時間に向き合うこと。ただ、それはあくまでも“仮想”なので、結局、現実には追いつかないんですよね。作品に参加しているうちに、何かを見て、面白いことが起こるかもしれないんですが(色々準備します)、でも結局、観客は自分の街での自分の生活があるから、行き来することしかできない。見て、いろいろ考えたり感じたりはするけれど、「(現実への)追いつかなさ」もあることを描きたい。作品を見て、体験しても、生きている時間には絶対に追いつかないものがある。そこに帰っていかなければと話しています。

 鈴木:他人の街に入って他人の生活を見ると、ある程度想像できますよね、あそこにはおばあちゃんがいるとか、子供が住んでいるとか。そうやって少しは想像できるんですが、結局はわからない。たとえば誰かが亡くなる等の大きな出来事があった時、想像をする幅がすごく狭まると思うんです(「悲しいだろうね」といった気持ちばかりになるから)。逆に些細な日常になればなるほど想像がどんどん及ばなくなる。池田の街の当たり前の日常の中に入らせてもらうので、一人ひとりの生活の違いが、違うまま、そこにある状態だと思うんですね。実際に行ってみても、想像は及ばない。追いつけない。西尾さんが言う「追いつけなさ」というのは、街と、そこに行く人との距離感の話じゃないかと思っています。
 演劇に携わっている西尾さんと、もともとアーティストだった僕、そして建築の大東と、全く違うバックグラウンドの人間が、街というものを介して、予定調和にならないようなコラボレーションを、ぐずぐずと(笑)、クリエーションの中でやっていけたらなと思っています。

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 宮城:地域の劇場はどうやって開くことが出来るのかを考えています。主に東京で演劇活動をしていた時は、「演劇は民衆的な表現ではない」なんていう考えは1%も浮かばなかったんですが、SPACで各地の劇場に行ってみると「演劇は敷居が高い」と本当にしばしば言われる。とても意外で、最初の内は全くよくわからなかったです。先ほど申し上げた戦前のドイツの劇場について調べてみると、やっぱり劇場というのはひとことで言うと、教養があったり余裕があったり、持ち家があるような恵まれた人が行く場所。つまり演劇がわかる人たちというのは、社会の上澄みだっていうんですね(笑)。当時のドイツの世の中ではそれが当たり前のように思われていて、劇場から疎外されて、はじきとばされている人たちが、ナチス党に投票していった。静岡に来て「演劇は敷居が高い」という言われ方を初めて聞いて、ドイツの例は僕にとって遠い話じゃないと感じています。

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宮城聰さん

 今あらためて「民衆的な表現」とは何だろうと考えずにはいられない。ファシズム的なものが出てくる時は必ず、「民衆的な表現」が常に正しいとされる。「民衆的な表現」を錦の御旗にして、「民衆的じゃない」という理由によって、さまざまなものが弾圧され、多様性が失われていく。僕らが果たして本当に「民衆的な表現」をやれているかどうかを、常に自分に問わなくてはいけない。「民衆的な表現」という言葉は、僕にとってはあまりいい印象のない言葉だったんです。しかし今、世の中に、それこそ戦前のドイツやかつてのソ連のようなものを思わせる“気分”が蔓延してくる中では、「民衆的な表現」の真の意味を考え直さなければいけない。そして別の意味で言えば、僕らが「SPACは民衆的な表現をやっている」と胸を張って言えなければ、戦前のドイツの公立劇場と同じようなポジションに追いやられていくだろうとも思うんですね。

 我々が同じ過ちを繰り返さないためには、我々自身が「民衆的な表現をしている」と断言できる資質を持たなければいけない。「民衆的」とは「既に世の中に作られている過半数の人がそう思い込んでいる価値観を追認すること」ではない。過半数の人の価値観を追認することを「民衆的」とは言わないのは確かなんだけれども、じゃあ何が「民衆的」なのか。そこを本当に考えなくちゃいけない。劇場を開いていくことには、そういう僕自身の問題意識もあるんです。今回の西尾さん、鈴木さんの作品が、僕にとっての刺激になってくれるんじゃないかと、とても期待しています。

 共同通信記者:どのようなスタイルのパフォーマンスになるのか、もう少し具体的に教えてください。

 西尾:おそらく3チームごとに分かれてツアーをします。ただ歩くだけではなく、きっと俳優に出会うと思います。何かのフィクションに出会うんですが、出会い方の按配を考えています。ツアーのガイドが目の前にいるけれど、面白そうなことが背後で起こっていたり。「これを見たらいいのね」と安心できる状態ではないところに、お客さんを持って行きたいと考えています。


 ■中島諒人演出・鳥の劇場『天使バビロンに来たる』(日本・鳥取) 写真:(C)中島伸二 ⇒公式サイト

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 解説:鳥取市で“鳥の劇場”を運営し、地域の中で国際的に開かれた作品作りを続ける中島諒人。今回、彼が描くのは古代都市バビロンを舞台にした、大人も子供も楽しめるポップな社会劇です。「人間が社会の中で自由に生きていくために必要なものは何なのか」というテーマのもと、地域資源としての演劇や、社会のためにできることを問い直す本作は、静岡初演となります。

 宮城:東京で活動していた演劇人が東京以外の地域に行って、そこに劇場を作って、「多様性」を持ち込む。多様性を容認するとは、ひとことで言うと「寛容」でしょうか。僕よりもさらに一層、地域の中に「寛容」を持ち込む実験にフォーカスした活動をされている中島さん。本当に尊敬しています。楽しみにしています。


 ■林麗珍(リン・リーチェン)演出・無垢舞蹈劇場出演『觀 ~すべてのものに捧げるおどり~』(台湾) 写真:(C)CHIN Cheng-Tsai ⇒公式サイト

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 解説:今、注目を集める台湾舞踊界で、その頂点に君臨する無垢舞蹈劇場の初来日公演がついに実現します。世界各国で絶賛されているこのダンス・カンパニーを率いるリン・リーチェンは、ヨーロッパのテレビ局により「世界を代表する振付家8人」に、アジアからただ1人選ばれました。9年をかけて完成させたこの『觀』は、台湾の神話や民族儀礼などを原点としながら、極度に集中した身体により、高度に抽象化されたビジュアルで作られております。

 宮城:いま世界の10本の指、あるいは5本の指に入ると言っていいかもしれない振付家あるいはダンス・カンパニーを並べた時に、まだ日本に来ていないのは無垢舞蹈劇場だけです。これは断言できます。なぜ今まで紹介されなかったのか。本当は国立劇場などで招聘してくれればいいのではないかと思うんですが。僕らが日本で初めて無垢舞蹈劇場を紹介できることになったのは、身に余る光栄なことだと思っています。これも1965年ごろ提起された、一種の近代的なものに対する批判、近代の芸術のパラダイムに対する批判から生まれた作品だと僕は考えています。ただ、それが驚くべき高度な次元まで洗練された。この地点まで行き得るということを見るだけで、僕らはとっても励ましを受けることが出来る。そういう作品です。


 ■イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー演出『ベイルートでゴドーを待ちながら』(レバノン) ⇒公式サイト

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 解説:中東メディアで絶大な人気を誇る俳優による2人芝居が、この度、日本で初めて上演されます。しゃべりまくる2人の男。とりとめのないようなやりとりの中に浮かび上がるのは、長い内戦と宗教対立によって疲弊した、レバノン国民の絶望的な日常でしょうか。サミュエル・ベケット作『ゴドーを待ちながら』のシチュエーションにより、アラブ人演劇人特有の辛辣な風刺を交えて、祖国を描きます。中東のカルチャー・シーンの今を知るためにも貴重な作品です。

 宮城:日常そのもの、現実そのものが、何よりも不条理だという中で生きている人たちが、一体どうやってその中で理性を保って行くのか。自分を見つめることが、一番のギャグになってしまう。自分の存在そのものを笑うことによって、自分を理性的に見る力を獲得していく。これも演劇の力をあらためて考えさせてくれる作品だと思います。


 ■イ・ユンテク(李潤澤)×演戯団コリぺ『小町風伝』(韓国) 写真:(C)演戯団コリペ ⇒公式サイト

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 解説:安アパートで孤独に暮らす老婆は、ある朝目覚めてインスタントラーメンを作りながら、かつて自分を激しく愛した若き軍人との恋を思い出す。もともと沈黙劇として上演された『小町風伝』。その語られなかった台詞が韓国演劇界の巨匠イ・ユンテクによって本作にあらわれます。韓国の伝統芸能の要素を多彩に取り入れた本作にご注目ください。

 宮城:太田省吾さんは沈黙劇で世界的に知られるようになりましたけれども、『小町風伝』が岸田國士戯曲賞を受賞したことからもわかるように、『小町風伝』には沢山のセリフが書かれていました。実際に上演された時には僕も観ましたけれども、本当にわずかなセリフしか残らなかった。しかし、台本にはおびただしいセリフが書かれています。そのセリフがですね、これほど素晴らしい台本だったのか、身を斬るような、切実な言葉の群れだったのかと、あらためて驚かされた。ユンテクさんが水面下に沈んでいた言葉を地上に噴き出させた、そういう作品だと思います。


 ■ジャン=ミシェル・ドープ演出『聖★腹話術学園』(ベルギー) 写真:(C)V. Vercheval ⇒公式サイト

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 解説:昨年大きな話題を呼び、最新作も話題を集める鬼才アレハンドロ・ホドロフスキーの書き下ろし作品を舞台化したのは、常に新たな表現を模索するベルギーの劇団ポワン・ゼロ。等身大の人形を操りながら、奇妙な学園の生徒たちを演じる6人の俳優。人形の顔はそれを操る俳優たちにどこか似ています。ユーモラスで妖しい空間をお楽しみください。

 宮城:ホドロフスキーといえば、僕にとっては寺山修二とのシンクロニシティーで出てきた双子なんです。今回の演劇祭では寺山の『田園に死す』とホドロフスキーの『ホーリー・マウンテン』を同時上映する企画もあります。『ホーリー・マウンテン』って日本語に訳すと“恐山”じゃないですか(笑)。
 ホドロフスキーが戯曲を書いて30代の演出家が演出しています。夏にアヴィニョン演劇祭のオフで観たんですが、人形劇の劇団だったわけじゃないのに(笑)、「人形を使ってやると面白いんじゃないか」という一種の思い込みをとことんまで突き詰めて、「こんなに人形を巧く使えるのか!」という域にまで行っているんですね。僕は詩的な部分まではセリフの意味がわからなかったんだけれども、身体がそのままホドロフスキーの世界になっていると思いました。前衛というくくりとは関係なく、どなたが観ても「人間って面白いことを考える生き物なんだな!(笑)」と痛感させてくれる作品です。


 ■ポスターの絵について
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 宮城:この絵を描かれた前澤妙子さんは静岡県出身の画家です。つい最近までパリで創作活動をされていました。僕はオルタナティブ、あるいはアングラ小劇場というものは、普通に暮らしている今の日常とかけ離れた夢の世界にあるものじゃなくて、別の言い方をすれば、「日常から逃避して、そこでマニアックに遊んで、また日常に帰ってくる」という世界ではなくてですね、日常のただなかにある裂け目のようなものとして存在していなければ、その価値はないと思っていたんです。ちょうど前澤さんの絵は、普通の意味で可愛いと言われるような世界の中に、裂け目のようなものが覗いている。そう思って、是非この絵をポスターに使わせて欲しいとお願いしました。


 ■「ふじのくに野外芸術フェスタ2015」

  「ふじのくに野外芸術フェスタ2015」は5月15日から7月12日まで、静岡市内と伊豆の国市で開催。詳細は公式サイトでどうぞ。
 アヴィニョン演劇祭で大絶賛を浴びた『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』(関連エントリー⇒)が、同演劇祭と同じくリング状の舞台を採用して上演されることにご注目!

 ちょっと過激で楽しそうな路上パフォーマンス『身も心も』についての解説と、演出家ブリュノ・シュネブランさん、宮城さんからのひとことはこちら↓。

 解説:昨年の水上パフォーマンスが好評を博した「イロトピー」が、静岡で1か月にわたる滞在製作をおこないます。『身も心も』は食と身体をテーマにした作品です。

 写真:(C)Jean E. Roché
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 ブリュノ・シュネブラン(演出):我々の社会に残っている共喰いの痕跡を、この作品で語ります。誰かを愛することは最後には食べてしまうことです。俳優たちの役割とは観客に食べられること。俳優の身体そのものが演劇です。すぐにお会いしましょう。

 宮城:静岡県内のわさび畑やしいたけの栽培所、海に近い市場でさまざまな食材を仕入れてきて、それを“食べられる樹脂”のようなものを使ったりしながら加工します。単純に言うと、人間の臓器の一部分のような造形物にするんです。美味しいものなんですが、パっと見るとグロテスク。それを俳優が体に貼り付けて町中に繰り出し、出会った人に体の一部分を食べてもらうという、驚くべきパフォーマンスです(笑)。


 プレス発表会 司会:布施安寿香 横山央 フランス語同時通訳:横山義志


ふじのくに⇄せかい演劇祭2015 WorldTheatreFestivalShizuoka under Mt. Fuji 2015
主催:SPAC静岡県舞台芸術センター ふじのくに芸術祭共催事業 後援:静岡県教育委員会、静岡市、静岡市教育委員会
http://www.spac.or.jp/worldtheaterfestivalshizuoka_2015.html

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2015年03月26日

東宝『十二夜』03/08-30日生劇場

 ⇒CoRich舞台芸術!『十二夜

 レビューを公開したのは2017/03/30です。

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
船の遭難で離ればなれになった双子の兄妹。
絡み合った片思いの糸をほぐしてくれるのは「時」だけ―

双子の兄妹セバスチャンとヴァイオラ(音月桂・二役)の乗る船が、見知らぬ土地イリリアの沖で遭難した。岸にたどり着いたものの、兄は溺れたと信じて絶望するヴァイオラは、護身のために兄の服に身を包んでシザーリオと名乗り、オーシーノ公爵(小西遼生)に仕えることにする。

そのオーシーノが恋をしているのは、父と兄の喪に服している伯爵家の若きオリヴィア(中嶋朋子)。彼を拒み続けるオリヴィアに想いを伝えてもらおうと、 オーシーノはシザーリオを使いにやる。オーシーノに恋心を抱くヴァイオラは切ない気持ちを抱えオリヴィアの元へ向かうが―。

オリヴィアはシザーリオを本当の男性だと信じて恋に落ちてしまう。一方で、ヴァイオラの双子の兄セバスチャンが現れる。
奇跡的に助かった彼は妹と同様にイリリアの街に着き、そこで偶然にもオリヴィアと出会い……。

そしてオリヴィアに密かに恋する執事マルヴォーリオ(橋本さとし)に仕掛けられた悪戯が、物語をさらなる狂騒へと駆り立ててゆく。
 ≪ここまで≫


≪東京、大分、大阪≫
【出演】
ヴァイオラ/セバスチャン:音月桂 
オーシーノ:小西遼生
オリヴィア:中嶋朋子
マルヴォーリオ:橋本さとし(五十音順)

フェイビアン:青山達三
サー・アンドルー:石川禅
サー・トービー:壤晴彦
フェステ:成河
マライア:西牟田恵
船長:宮川浩
アントーニオ:山口馬木也(五十音順)

アンサンブル(五十音順):生島翔 内田紳一郎 折井理子 キムスンラ 河野しずか 佐々木誠二 扇田森也 平野潤也 真瀬はるか

作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:ジョン・ケアード
美術・衣裳:ヨハン・エンゲルス
音楽・編曲:ジョン・キャメロン
照明:中川隆一
音響:本間俊哉
ヘアメイク:Eita(Iris)
ファイティング:渥美博
音楽監督:長野佳代
演出家アシスタント:今井麻緒子
美術補:マット・リース(ヨハン・エンゲルスのオリジナルデザインに基づく)
美術・衣裳助手:岩田ゆう子
演出助手:上田一豪
舞台監督:宇佐美雅人
制作助手:藤岡陽子
プロデューサー:小嶋麻倫子
宣伝美術:タカハシデザイン室
宣伝写真:二石友希
宣伝ヘアメイク:Eita、遠山直樹(Iris)
宣伝スタイリスト:青柳美智子
製作:東宝
【休演日】3/11,18,25 S席:12,000円 A席:7,000円 B席:4,000円 ベンチ席:12,000円 (税込み)
http://www.tohostage.com/12ya/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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2015年03月25日

東宝/エイベックス・ヴァンガード/エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ『死と乙女』03/19-28シアタークリエ

 『死と乙女』はチリの劇作家アリエル・ドーフマンさんの戯曲で、私は10年以上前に一度拝見したものの、内容はほとんど忘れてしまっていました。観られてよかったです。やはり素晴らしい戯曲でした。
 ドーフマン戯曲といえばドーフマンさんが新国立劇場のために書き下ろされた、同じく三人芝居の『線の向こう側』がすごく好きなんです。

 谷賢一さんがシアタークリエで大スターを演出することにも非常に興味を惹かれ、観に行きました。上演時間は2時間20分強、途中1回の休憩を含む。1200円のパンフレットに載っていた翻訳の青山陽治さんによる、劇作家ドーフマンについての解説がとても充実していて読みごたえがありました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『死と乙女

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
火花の散るような 激しい葛藤が繰り広げられる 濃厚な心理劇

独裁政権が崩壊して間もなくの、南米のとある国。
かつて学生運動に参加していたポーリナ(大空祐飛)は、
独裁政権下で誘拐・監禁され拷問を受けた記憶に今も怯えている。

ある晩、夫の帰りを待っていると1台の車が近づき、
弁護士である夫のジェラルドー(豊原功補)が降りてきた。
車がパンクし、通りがかりに送ってもらったという。

ジェラルドーを車で送った医師・ロベルト(風間杜夫)の声を聞き、
彼こそ、シューベルトの四重奏曲「死と乙女」を流しながら、
自分を拷問した男だと確信する。

何が正義で、何が真実なのか―
3人それぞれにとっての真実と、そこに絡む駆け引きを解きほどき、
人間の心に潜む「悪魔」をあぶりだします!
 ≪ここまで≫ 

 舞台はしゃれたコテージのようなデザインで、高級感のあるリビング。舞台奥の薄いカーテンの向こうには広いバルコニーがあります。南国らしいすがすがしい空気と開放感が見て取れますが、偶然の出会いから始まった事件は、そんな爽やかさとはかけ離れた、息も詰まるものでした。控えめだけれど出るところは出る音響が効果的。照明も繊細で良かったです。

 軍事独裁政権下の出来事を扱う三人芝居ですが、凄惨さよりもサスペンス色が濃く、娯楽作として楽しめます。ミュージカルがよく上演されるシアタークリエで、このような戯曲が上演されていることがとても意外で、演劇ファンの私としては、そこに意味を見出したくなりました。
 「観客に「私なら、どうするだろうか?」と考えて欲しい」という演出家(谷賢一)の言葉は、同じく演出家であるSPACの宮城聰さんも先日仰ったことなので、作り手の感覚は繋がっているのだなと再確認しました。比喩で抽象化せずリアリズムで直接的にという選択が、危機感と切実さゆえだとすれば、それは恐ろしいことだと思います(ツイッターで投稿した感想に加筆&修正)。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 ポーリナはロベルト(風間杜夫)が自分を強姦・拷問した医師だと信じ、彼を椅子にしばりつけてさるぐつわをかませます。ポーリナの夫ジェラルドー(豊原功補)は自分を助けてくれたロベルトがそんな人物だとは思わないし、ロベルトも否定しますが、銃を持つ彼女の前に2人の男性は服従するしかなく、駆け引きが始まります。

 美しい大空祐飛さんが耳を疑うような悪口を怒りに任せて吐き出すように言うのには、やはり、驚かされます。でもそれは彼女が誘拐され囚人になっていた時に、実際に言われたことなのです。ただ「ほうきの柄(え)でファックする」は誰かに言われたことではなく、彼女が制裁として医師に対してやりたいことなので…強烈です。彼女が15年間、復讐の機会を待っていた(報復をする想像をして自制心を保っていた)のがわかりますし、その怒りの激しさは計り知れないです。

 大空さんは元宝塚の男役トップスターですので、姿が美しいだけでなく、医師に暴力的に迫る演技は力強く、説得力があります。ただあまりに確信的で堂々としているため、私は中盤までは大空さん(が演じる女性ポーリナ)をすっかり信じきって観る方向に。「あの医師は彼女を拷問して強姦した悪者だ」ということを前提にしてしまったので、他の可能性が見えて来づらかったです。できれば真実が見えない心理劇としても観たいので、主人公ポーリナは弱かったり、甘えていたり、いかにも女性らしい振る舞いや感情表現が、もっとあってもいいんじゃないかと思いました。

 「STUD(種馬)をわざとBUD(花のつぼみ)と言っておき、医師がどちらを言うかで犯人かどうかを確かめる(STUDと直せば彼は犯人)」というトリックをしかけた賢いポーリナ。でもそれが「本当の本当の本当のこと」なのかどうかは、彼女のみが知ることだから、やはり真実はわかりません。
 最後は正装したロベルトとポーリナがコンサートに出かける場面でした。2人は客席側から登場し、他の客(姿は現さない)と歓談してから舞台へと上がります。査問委員会が終了し、やるべきことはやり終えたという達成感があったようですが、2人とも終始晴れやかな笑顔というより、何か秘密を抱えているような神妙な表情もしていました。そこから私の妄想が始まりました。もしかするとシューベルトの「死の乙女」を聴きにコンサートに来たのでは?…ということは、ポーリナはあの時に医師を銃殺し、その犯罪を夫婦で隠ぺいしたのでは…?という疑惑が一気に膨らみました(彼女は「医師が死なない限りシューベルトを聴けない」と言っていたような)。医師は「君が私を殺せば、今度は私の子供たちが君を探すことになる」と言っていました。それが繰り返されるのでは…?

 舞台奥のカーテンの向こうには、冒頭と同じく若い女性が客席に背中を向けて、イスに座っていました。美しい夫婦がその姿を見つめているところで終幕。あの若い女性は現代服を着ていたようなので、私自身ではないかと思いました。『死と乙女』という物語は、私自身の想像の中の虚構でもあり、身近な史実でもあるのだと思います。

【出演】ポーリナ・サラス(妻):大空祐飛、ジェラルドー・エスコバル(夫):豊原功補、ロベルト・ミランダ(医師):風間杜夫
脚本:アリエル・ドーフマン 翻訳:青井陽治 演出:谷賢一 美術:土岐研一 照明:齋藤茂男 衣裳:前田文子 音響:長野朋美 ヘアメイク:田中エミ 演出助手:斎藤歩 舞台監督:菅野將機 制作助手:田中景子(東宝) 黒永郁美(エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ) プロデューサー:小嶋麻倫子(東宝)  佐藤萬之介(エイベックス・ヴァンガード)  山浦哲也(エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ) 製作:東宝/エイベックス・ヴァンガード/エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ
【休演日】3/21【発売日】2014/12/13 全席指定8,800円
http://www.tohostage.com/shitootome/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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2015年03月22日

世田谷パブリックシアター『「地域の物語2015 あっちはこっち、こっちはあっち~介助・介護をかんがえる」発表会』03/22シアタートラム 

 世田パブ開館以来、毎年継続している企画だそうで、もう17年になるんですね。凄い。今回のテーマは昨年に続き「介助・介護」。

 ≪あらすじ・作品紹介≫
介助・介護の現場では、家族として、仕事として、あるいはもっと違うあり方で、誰かの助けを借りる/助けになる、ということが行われています。
私的な生活の場に他者が存在するその現場は、介助する側、される側が、どのように関係し、向き合っていくかが問われる複雑な場所です。
今年の『地域の物語2015 あっちはこっち、こっちはあっち~ 介助・介護をかんがえる』では、そうした現場に仕事や家族という立場から関わる20代から70 代までの参加者たちが、3ヶ月という時間をかけて、改めて自分自身やまわりの人に向き合い、考えてきた成果をまとめました。
シアタートラムに、ぜひ、いらしてください。
みなさんと一緒に考える場がつくれたら嬉しいです。
 ≪ここまで≫


[出演] 新井恵子/内田浩美/小岩井真由美/斉藤みえこ/佐川健之輔/佐藤明子/白鳥義明/田上朋子/chako/中村恵理/中村恵/成島翼/西澤法子/船崎葉子/降矢幸子/ポラン/御原由美子/山口咲貴子/山本恵子/吉田みずほ(WSプロセスのみ参加)船崎葉子/三宅弘朗
[進行役] 花崎攝(シアタープラクティショナー)/山田珠実(振付家・ダンサー)[アシスタント] 山本雅幸(俳優)[主催] 公益財団法人せたがや文化財団[企画制作] 世田谷パブリックシアター[後援] 世田谷区[協賛] 東レ株式会社 平成26年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
全席自由 入場無料(要事前電話申込)
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2015/03/2015_2.html

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2015年03月19日

ゲンロン『高間響(笑の内閣)×東浩紀「笑の内閣が斬る!『福島第一原発観光地化計画』-『超天晴!福島旅行』ゲンロンカフェ版上演+トークショー」』03/18ゲンロンカフェ

 CoRich舞台芸術まつり!2014春で準グランプリを受賞した笑の内閣。その後も東京公演には伺わせていただいています。今回は東浩紀さんが経営するゲンロンカフェで、昨年上演した『超天晴!福島旅行』(⇒CoRich舞台芸術!)の30分ダイジェスト版を上演し、その後に作・演出の高間響さんが東さんとトークをするイベントでした。

 ⇒ゲンロンカフェによる舞台写真、感想まとめなど

 19時開演で21時終了予定でしたが、いつもどおり時間内には終わらず(笑)、私は22時ごろに中座することに。私も母もワインをがぶ飲みする高間さんのことが心配で、壇上に駆け上がってお水を飲むように説得したくなる気持ちを抑えておりましたところ(笑)、なんと高間さんのお母様がニコ生にコメントで登場され、「お水を飲みなさい」とのアドバイス。高間さんはちゃんとお水を飲んでいらっしゃいました(時すでに遅し…だったようですが)。

 テレビは気に入らなかったらチャンネルを変えられてしまうし、漫画は途中で打ち切りになることもあるが、演劇はお客さんを座席にしばりつけて、最後まで観てもらうことが可能である(途中退出する観客もいますが)。それは演劇の強みだということは、私にとって発見でした。「風刺には時間がかかる」というのも納得だったな~。
 ※「「境界のないセカイ」マンガボックス連載終了のお知らせ」というニュースについても言及あり。

 東さんが高間さんに「作品は面白いんだけど、パッケージが弱い(中身はいいのに見栄えが悪い)」「ここぞという時は、アーティストであるだけでなくプレゼンテーターでなければいけない」といったアドバイスをされていて、もっともだと思いましたが、小劇場劇団にはそういうところがとても多いんですよね(パッケージが目立つばかりで中身が薄い場合もあるでしょうが)。

 私も高間さんの脚本はとても面白いと思っています。このイベントに母を連れてきたのは、彼女が笑の内閣の過去公演の戯曲を読んでいて、それを好きだと言っていたから。テーマを決めて高間さんに執筆依頼をすれば、色んな立場や視点を公平に描き、自分の主張もきちんと盛り込んで、コメディー要素もふんだんな、楽しくて勉強になる台本を書いてくれそうな気がします(TPOに合わせて下ネタの量の加減は必要だと思いますが)。東さんは(トークのネタとして)高間さんがちゃんとしないといけないよ、という意味の愛あるお説教をされていましたが、私は彼自身じゃなくて、彼を支える人がその役割を担ってもいいんじゃないかと思いました。
 ※あくまでも22時まで観た者の感想です。

前売券2600円 1ドリンク付 ※当日、友の会会員証/学生証提示で500円キャッシュバック
当日券は3100円 (1ドリンク付き)です。ゲンロン友の会会員証または学生証のご提示で2600円(1ドリンク付き)になります。
友の会会員限定席を複数予約される場合は、お連れの方が会員でなくても結構です。
お席はチケットの申し込み順ではなく、当日会場にご来場頂いた順にご案内致します。
開場時間はイベント開始1時間前の18:00となります。
http://peatix.com/event/74392

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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2015年03月18日

【お知らせ】小劇場レビューマガジンwonderlandに私のインタビューが掲載されました

 小劇場レビューマガジンwonderlandの連載企画「観客が発見する 第3回」に私のインタビューが掲載されました。wonderland内の私の原稿はこちら

 2005年から「振り返る 私の20○○年」という年末企画にも参加させていただいていました(⇒2005年)。wonderlandとも、編集長の北嶋孝さんとも、約10年のご縁になるのだなぁと思うと、共有してきた観劇の年月のありがたみがしみじみと感じられて、今回のインタビューをお受けすることにしました。東大生による2013年9月のインタビューもよろしければどうぞ。

 wonderlandは今年の3/31で活動休止されるそうですが、有志が新しい観客発信メディア「WL」を立ち上げるそうです。

Posted by shinobu at 15:20 | TrackBack

2015年03月15日

KAAT×地点『三人姉妹』03/09-22神奈川芸術劇場・中スタジオ

 三浦基さんが演出される京都の劇団地点の新作です。地点の『三人姉妹』は2003年初演で、私は2004年に拝見しています。今回はそのバージョンを一新した演出でした。上演時間は約1時間20分。

 F/T12の『光のない。』初演でショックを受けて、しばらく地点の作品は観ていなかったのですが、2004年の『三人姉妹』は素晴らしかったという記憶があり、久しぶりに拝見しました。観に行って良かったです。ヤバいもの観たい人にお薦めです。『三人姉妹』の役名やあらすじは頭に入れておいた方がいいですね。

 全席自由なので会場へはどうぞお早目に。会場への通路にチラシがまとめて展示されています。折り込みチラシで数種類見かけていましたが、なんと32枚もあったんですね!

 ⇒CoRich舞台芸術!『三人姉妹

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。最後まで完全にネタバレ。古典ですので読んでからご覧になっていいと思います。
県庁のある町でのこと。オーリガ、マーシャ、イリーナの三人姉妹とアンドレイが暮らすプローゾロフ家。旅団長だった父親の一年前の葬儀の記憶もようやくうすれて、末娘のイリーナの「名の日」の祝いが開かれようとしている。春、まぶしい陽光のなか、軍人たちが祝いの会に集まってくる。旧知の中隊長ヴェルシーニンの来訪が、三人姉妹にモスクワの記憶をよみがえらせる。やがては大学教授と期待されている長男のアンドレイとナターシャの恋。家庭を持つ次女マーシャと不幸な家庭生活を送るヴェルシーニンの実りのない恋。トゥーゼンバフ男爵のイリーナに対する片思いは、ソリョーヌイとの対立を生む。アンドレイと結婚し、子供を生んだナターシャの俗悪さが次第に一家を支配する。学者への夢を捨て堕落してゆくアンドレイ。秋が深まりゆく頃、駐屯していた中隊は遠い新しい任地へと旅立っていく。マーシャとヴェルシーニンの別れ。退役してイリーナと新生活に踏み出そうとしていたトゥーゼンバフは、その矢先にソリョーヌイに決闘で撃ち殺される。軍楽隊の響きが遠ざかるなか、三人姉妹の「生きたい」という切実さを残して幕はおりる。
 ≪ここまで≫

 劇場に入って美術を目にするなり「わ、ヤバい!」と小さな声をあげた若い女性がいらっしゃいました。そうですよね…胸躍る舞台美術です。

 俳優は文字通り七転八倒(笑)。怪我が心配なほど。私が観た回はナターシャ役の伊東沙保さんが、床に頭をゴツン!とぶつける音が響きました。這い回って、取っ組み合って、泣いて叫んで、怒って笑って。セリフは解体され、物語も時系列どおりではありません。『三人姉妹』を下地に、人間の人生をギュっと凝縮した小さな塊を、ぶつけて、壊して、ぶつけて…と繰り返しているようでした。それでも「生きていかなきゃ」いけない人類が、何種類も、生まれて、死んで、また生まれるイメージ。うんざりするような繰り返しです。でもそれを目の前で、全身を使って実際に行っている俳優の姿が、まばゆく、そしてバカで、可愛らしく、見えました。

 昼に拝見したサンプルも地点も、アトリエ春風舎で初めて観た団体でした。公立劇場であるKAATでマチソワ観劇するなんて感慨深いです。サンプルの松井周さんと地点の三浦さんは、青年団の同期だそうです。

 ここからネタバレします。

 舞台上には透明の板で作られた大きな壁があり、天井からは白樺の木々が逆さづりにされています。『逆・三人姉妹』みたいで面白いです。舞台奥には鏡が貼られていて、奥行きがとても広く見えて、観客の姿が小さく映っていました。舞台の上下の端には、白い線でローマ数字が描かれています。実は白い粉なので、俳優が踏んだり寝たりすると、衣装にべったりと付いたり、床にパーっと広がって文字が消えます。大きな壁は俳優が手動で動かします。ぐるぐる回転させたり、舞台面側から奥側まで移動させたりもします。透明の板には床と同様に白い粉が振りかけられており、俳優が手で白い粉を拭き取ったり、壁を叩いて床に落としたりもします。 

 オーリガとイリーナの衣装はかなり現代風というか、宇宙服っぽさと同時に昔のグランジ系ファッションを思い起こさせる、ポップなものでした。マーシャはブラウスとフレアスカートだったので少々地味目。ナターシャは薄いピンクのスーツに白いタイツを履いていて、女性の中で一番可愛らしかったです。原作では「ナターシャはセンスが悪い」とされているので皮肉なのかな。ファッションは時代によって評価が変わるという意味だとも受け取れました。私自身も含む、人間の節操のなさが表れています。

 私にとってのクライマックスは大きな壁が客席の方に一番近づいた時。三人姉妹がじっと立って、観客に向かってセリフをはっきりと言う場面です。2004年の全く動かない『三人姉妹』を思い出しました。チェーホフのセリフが、汗だくで、ボロボロになった俳優が絞り出す強い声に乗って、刺さるように胸に届きます。こんなに愚かで醜くて、夢も希望も持てないのは自業自得だともわかっている上で、それでも生きていかなければならない。舞台をしっかり見届けようと見開いていた目から涙がこぼれました。でもその直後、ヴェルシーニン役の小林洋平さんがダジャレを飛ばしたり、チェーホフや観客をからかうような演技をして、場の空気を一転させました。しめっぽくならず、説教臭くもならず、いい感じでした。笑えなかったのは残念だけど。
 個人的には、ここで終わってくれても良かったな~。その後はまた同じように体を酷使する演技が続いて、少し飽きてしまいました。この「飽き」がポイントなのかもしれないですけどね。人生は残念ながら気持ちのいいところでは終わってくれない。飽きても、嫌になっても、生きていかなければいけないから。

 体だけでなく心も動かす伊東沙保さんが良かったです。ナターシャが舞台中央奥に立ってしばらくじっとしていた時、ドキドキして目が離せませんでした。


KAAT×地点 共同制作作品第5弾
出演:安部聡子(オーリガ)、石田大(アンドレイ)、伊東沙保(ナターシャ)、小河原康二(クルイギン)、岸本昌也(トゥーゼンバフ)、窪田史恵(マーシャ)、河野早紀(イリーナ)、小林洋平(ヴェルシーニン)、田中祐気(ソリョーヌイ)
脚本:アントン・チェーホフ
翻訳:神西清
演出:三浦基
舞台美術:杉山至
衣裳デザイン:コレット・ウシャール
音響デザイン:徳久礼子
照明デザイン:山森栄治
舞台監督:小金井伸一
プロダクション・マネージャー:安田武司
技術監督:堀内真人
宣伝美術:松本久木(MATSUMOTOKOBO Ltd.)
制作|伊藤文一、小森あや、田嶋結菜
主催:KAAT神奈川芸術劇場
【休演日】3月10、11、15、19日 【発売日】2015/01/18
プレビュー公演 一般 2,000円 24歳以下 1,000円
本公演  一般 3,500円
▽U24チケット1,750円(24歳以下対象)
▽高校生以下割引1,000円(高校生以下対象)
▽シルバー割引3,000円(満65歳以上対象)
http://www.kaat.jp/d/SANNIN

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 16:46 | TrackBack

サンプル『蒲団と達磨』03/06-15神奈川芸術劇場・大スタジオ

 『蒲団と達磨』は岩松了さんの岸田国士戯曲賞受賞作です。サンプルの松井周さんは昔から岩松作品によく親しんでいらしたそうで、今回は劇団で初めて既成戯曲に取り組む公演だそうです。上演時間は約2時間。

 娘を嫁に行かせたばかりの中年男性(古舘寛治)が主人公。出てくる大人がことごとくカッコ悪すぎる…(笑)。欲を言えば、報われなくて制御不能になり屹立する性欲が、もっと無駄に満ち満ちて欲しいなと思いました(笑)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『蒲団と達磨

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
 舞台はある夫婦の寝室。祝い事のあと、いつになく他人が出入りする密閉空間。言外に潜むあやういそれぞれの秘密、我慢、爆発寸前の中年の性欲。岩松了の89年岸田國士戯曲賞受賞作品を、松井周が垂涎のキャスティングでねっちりと描く。
 ≪ここまで≫

 田舎にありそうな日本家屋が建て込まれていて、畳、床の間、廊下、柱などがリアル。布団やカラオケセットなどもあり、具象美術と言っていい空間だったと思います。ところどころ壁などが透けて見えやすくなっていて、抽象世界へもスムーズに入って行けそうでした。

 娘の結婚式を終えた夜。男(古舘寛治)は妻(安藤真理)と和室(=夫婦の寝室)で、何やら深刻そうな話をしています。でもその部屋には結婚式場までの送迎バスの運転手(古屋隆太)が寝ていて、家政婦や男の妹、妻の弟夫婦、その他の結婚式の参列者などが堂々と出入りします。突然現れたり、スっといなくなったりするのが、またいいです。

 現代口語の会話劇で、一言ひとこと、細かく演出が行き届いた演技をされていたように思います。単語のイントネーションや、咳払いなどのちょっとした仕草も、登場人物のキャラクター作りに関係しているのだろうと思いました。
 妻の弟役の奥田洋平さんが良かったです。役作りの丁寧さに加えて、客席へも意識を広く届けてくださっているように感じます。奥田さんといえば『ファーム』のクローン人間役とか『自慢の息子』の男性器役(そんな役はないんですが・笑)とか、ハンサムなのに怪演っぷりが激しくてかっこいいです。

 ここからネタバレします。

 なぜ当然のごとく掛け布団の上に正座するのかなぁと不思議に感じました。そういう夫婦だと思えばいいのかな。結婚式帰りで奥さんが留袖を着っぱなしなので、着物で布団の上に正座というのもちょっと笑える構図です(笑)。全部ひっくるめてフィクションとして受け取ったらいいのかなと思います。

 妹(辻美奈子)は兄(古舘寛治)を「生物の教師で終わる人じゃない」と褒めていました。最後に抱き付いたのはきっと愛していたからなんでしょうね。2人がそのまま下手に消えて終幕だったので、色んな想像が膨らみました。おそらく30~40代の女性である妹は、血気盛んな青年コンちゃん(三浦直之)に襲われてもバシっと断って、兄の布団の下のエロ本に気づいても隠してあげて(笑)。奥さん(安藤真理)の布団の下も一応確認したのは、2人がそういう趣味なのかどうかを確認したのかな(どういう趣味なんだ・笑)。兄のエロ本を見つけて、奥さんとの仲がうまく行ってないのだろうと察しがついたのかもしれません。それで思いがあふれ出してしまって抱き付いたのかな…。だとしたら、妹の禁断の恋心が中盤からもっとわかるような演技・演出だったら、尚よかったのではないかと思いました。

 前の夫(松浦祐也)まで連れてきて、妻(安藤真理)に「なぜヤラせてくれないのか」と迫る夫(古舘寛治)。うなだれる妻の気持ち、わかるわ…と思った私、ダメな女なのかな(笑)。男と女の決定的な違いなのかもしれませんよね。

 ポツドール作品に似てるというご感想をネット上で目にして、私もそうだなと思いました。ラストは特に『愛の渦』を思い起こさせるものがあり、しみじみしました。狂った夜が朝の太陽によって、文字通り白日に下にさらされました。
 ※『蒲団と達磨』は1989年岸田國士戯曲賞受賞作ですので、『愛の渦』より先に書かれています。

出演:古舘寛治、古屋隆太、辻美奈子、奥田洋平、野津あおい、安藤真理、大石将弘(ままごと|ナイロン100℃)、田中美希恵(範宙遊泳)、新名基浩、松浦祐也、松澤匠、三浦直之(ロロ)
脚本:岩松了 
演出:松井周
舞台監督:谷澤拓巳
舞台美術:杉山至(+鴉屋)
照明:木藤歩
音響アドバイザー:牛川紀政
衣裳:小松陽佳留
WEBデザイン:斎藤拓
宣伝イラスト:いがらしみきお
宣伝美術:岡部正裕(voids)
制作:三好佐智子、冨永直子、富田明日香(以上、quinada)
制作協力:野村政之
企画:松井周、三好佐智子(quinada)
主催:サンプル、quinada
提携:KAAT神奈川芸術劇場
【発売日】2015/01/31(全席指定)
一般 (前半割3/6-8)[前売] 3,500円 [当日] 3,800円
一般  [前売] 3,700円 [当日] 4,000円
学生    [全日共通] 2,500円 *公演当日、受付にて要学生証提示
高校生以下 [前売のみ] 1,000円 *公演当日、受付にて要学生証提示 *チケットかながわにて取扱
http://samplenet.org/2014/12/24/futontodaruma/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 15:24 | TrackBack

2015年03月13日

【オーディション】切実プロデュース「2015年8月公演『山内ケンジ・ふじきみつ彦 傑作短篇集』出演女優1名募集」※3/31〆切(郵送のみ)

 岸田國士戯曲賞を受賞された城山羊の会の山内ケンジさんと、作家のふじきみつ彦さんが「切実」というユニットに短篇戯曲を書き下ろし、今年8月に上演があります(過去作品の上演もあり)。演出は城山羊の会によく出演されている俳優の岡部たかしさんです。⇒まねきねこさんによる過去公演の感想

 出演者オーディションが実施されます。対象は18歳~23歳位に見える女性。詳細は公式サイトでご確認ください。「いろいろな意味で、容姿・演技力に自信のある方」、挑戦してみてください。

 ●切実プロデュース『山内ケンジ・ふじきみつ彦 傑作短篇集』
  公演日程:2015年8月25日(火)~8月30日(日)
  劇場:小劇場B1(下北沢)
  演出:岡部たかし
  脚本:山内ケンジ、ふじきみつ彦
  出演:岩谷健司、本村壮平、島田桃依、松村翔子、岡部たかし、他

 ・オーディション
  対象:18歳~23歳位に見える女性
  日程:4月15日(水)を予定(会場:都内/書類選考で合格した方のみ)
  オーディション料:1,000円(当日支払い)
  〆切:3月31日(火)必着(郵送のみ)

Posted by shinobu at 18:13 | TrackBack

2015年03月10日

ナショナル・シアター・ライヴ2015『欲望という名の電車』03/06-12 TOHOシネマズ日本橋

 母と一緒に映画館で見るのが習慣になっているナショナル・シアター・ライヴ。イギリスの最高峰の演劇を日本にいながら何作も観られて、もう、感謝感激。昨年から始まって今年も継続されて嬉しい限り。
 これまでに私が見たのは『フランケンシュタイン』Aバージョン&Bバージョン、『コリオレイナス』、『ザ・オーディエンス』、『リア王』、『ハムレット』、『オセロ』。
 『欲望という名の電車』は1947年初演、米国劇作家テネシー・ウィリアムズの傑作戯曲。上映時間は3時間35分(途中約15分の休憩を含む)。全く長く感じなかったです。途中休憩後にこの作品を製作したヤング・ヴィック・シアターの舞台裏を紹介する映像があります。

 TOHOシネマズ 日本橋にて追加上映が決定したとのこと。3/12(木)19:20~22:55です。他の劇場は3/11(水)まで。私は3/9(月)に観たのですが満席でした。

 ナショナル・シアター・ライヴの感想として必ずひとこと目に書くことなんですが、とにかく、俳優の演技がうまい。下手な人が、いない。ブランチ役のジリアン・アンダーソンさんはこの作品でローレンス・オリヴィエ賞主演女優賞にノミネートされたそうですが、納得の名演技だったと思います。

 物語は原作どおりで設定は現代。全方位を客席が囲むシャープな舞台美術で、ぐるぐると回転します。具象と抽象のバランスが見事。選曲、効果音のセンスも抜群。衣装も的確、そして美しい。日本の首都圏で上演されている日本人によるストレート・プレイと比べると、洗練度は数段上だと言っていいのではないでしょうか(洗練さと面白さが比例するわけではないし、優劣や良し悪しを決めるものでもないと思っています)。ナショナル・シアター・ライヴは必見だと思います。

 『欲望~』の舞台は数作観ていますが、気づいていなかったことが沢山ありました…。やはりブランチの長いセリフにヒントがあるんですよね。そして彼女の周囲の人々の、彼女に対する態度、視線などからわかることもあります。

 ここからネタバレします。

 ブランチは16歳の時に出会って駆け落ちした詩人のアランが同性愛者だと知ってしまい、一緒にダンスを踊っている最中に「男同士で…汚らわしい」と囁いた。その後すぐにアランはピストル自殺をしてしまう。最愛の人に裏切られ、その人を自分のせいで死なせてしまったブランチは、見知らぬ男性と肉体関係を持つことで自尊心を保つようになる。アランとの最後のダンスの時に流れていたポルカが、彼女の耳から離れない。
 両親や親せきの介護に明け暮れ、先祖代々受け継いできたベルリーブの土地も家も何もかも失い、ローレルの安ホテルを根城に売春をするようになったブランチは、教師でありながら17歳の少年と関係を持ったことがバレて、ローレル市長に「市から出ていけ」と言われ、ニューオーリンズにある妹ステラの家に転がり込んだ。そして数か月後、妹の夫スタンリーに“正体”がバレて、「ローレル行きのバスに乗って火曜日にこの家から出ていけ」と最後通告される。新しい恋人ミッチもスタンリーからブランチの過去を聞いて彼女を捨てた。スタンリーに犯されたブランチは正気を失い、精神病院から迎えが来る。
 排斥の話だったんだなと初めて気づきました。同性愛者(アラン)、売春婦(ブランチ)を普通の人間として扱わず排除したり、乱暴者(スタンリー)をバカにしたり。

 以前に観た『欲望~』では、最後にスタンリーの家を出ていく場面で、ブランチはとてもきれいな洋服を着ていました。でも今作では、はみ出た口紅の跡が大々的に頬に伸びて残っており、頭からシャワーを被って、きれいに巻いていたカールが全部取れてひどい髪型でした。彼女がボロボロになってしまったこと、いえ、彼女の真実の姿が最後に暴露されたようでした。

Tennessee Williams's "A Streetcar Named Desire"
作=テネシー・ウィリアムズ 演出=ベネディクト・アンドリュース
出演:ジリアン・アンダーソン/ベン・フォスター/ヴァネッサ・カービー ほか
料金/一般3,000円、学生2,500円
http://www.ntlive.jp
https://www.facebook.com/ntlivejp
http://ntlive.nationaltheatre.org.uk/productions/ntlout7-a-streetcar-named-desire
http://www.theaterguide.co.jp/theater_news/2014/12/25.php
http://www.ilaboyou.jp/text/text_desire01.html
http://enterstage.jp/column/2015/03/002119.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 13:50 | TrackBack

2015年03月07日

【オーディション】 静岡県舞台芸術センターSPAC「SPAC作品『夜叉ヶ池』『室内』『真夏の夜の夢』の出演俳優募集」4/4オ ーディション実施※3/23〆切(郵送、メール、持参)

 2014年夏のアヴィニョン演劇祭で『マハーバーラタ~ナラ王の冒険』が絶賛された静岡県舞台芸術センターSPACが、2015年度に上演される3作品の出演者を募集します。

 ⇒『マハーバーラタ』日本凱旋公演スペシャルトークのレポート

 お稽古は静岡で昼夜・毎日あり、お休みは週1回。『室内』は海外公演あり。募集対象に該当する俳優さんは飛び込んでみてください。詳細は公式サイトでご確認ください。

 ・対象舞台作品:『夜叉ヶ池』『室内』『真夏の夜の夢
 ・応募締切(郵送・Eメール・持参とも):3月23日(月)<必着> 
 ・実技オーディション:4月4日(土)@静岡

Posted by shinobu at 16:53 | TrackBack

【ワークショップ】東京芸術劇場「池田扶美代氏による<ドラミング ワークショップ>参加者募集」04/10-11実施※3/9〆切(郵送のみ・当日消印有効)

 4月に上演されるローザスの代表作『ドラミング』に先駆けて、ローザス創立メンバーの一人でベルギー在住の池田扶美代さんによる<ドラミング ワークショップ>が開催されます。詳細は公式サイトでご確認ください。

 ダンス未経験者を対象とした“ビギナーズ クラス”とダンス経験者を対象とした“マスターズ クラス”のワークショップあり。私も行ってみたい…!

 ○マスターズ クラス 2015年04月10日 (金) 18:00-21:00
 ○ビギナーズ クラス 2015年04月11日 (土) / 12日 (日) 18:00-21:00
  ※各回定員20名程度。応募多数の場合、書類選考あり。

 ・料金:2,500円(ワークショップ保険料・消費税込)
 ・締切:3月9日(月) 当日消印有効

Posted by shinobu at 16:35 | TrackBack

【オーディション】チェルフィッチュ「2016年 新作『Protection』(仮) 出演者募集@京都」※4/3〆切(郵送のみ)

 世界を舞台に活躍している岡田利規さん率いるチェルフィッチュが、新作への出演男優を1名募集します。オーディションは京都で2回実施。〆切は4月3日(金)です。詳細は公式サイトでご確認ください。

 稽古は横浜で週4~6日、公演初日は京都、その後に海外ツアーがあります。我こそはと思う男優さん、ぜひ。

 ■チェルフィッチュ「2016年 新作『Protection』(仮) 出演者募集@京都」
  募集対象:男性1名
  〆切:4月3日(金)必着(郵送のみ)

■チェルフィッチュ「2016年 新作「Protection」(仮) 出演者オーディション 京都にて開催!」公式サイトより)

2016年3月、京都にて世界初演を迎えるチェルフィッチュの新作「Protection」(仮)のオーディションを開催します。
是非、ご応募ください。

募集内容
チェルフィッチュ2016新作「Protection」(仮)
稽古期間:2015年12月~2016年3月(週 4~6 日予定) 東京・横浜にて(3月上旬は京都の可能性あり)
公演日程:2016年3月中旬 京都にて(その後、5~6月、10~11月に海外ツアー予定。変更の可能性あり。)
募集対象:男性1名

開催概要
第一次審査 書類選考4月3日(金)必着
第二次審査 オーディション(第一次審査通過者)4月17日(金)、4月18日(土)のいずれか1日
第三次審査 オーディション(第二次審査通過者)4月19日(日)
※第二次、第三次ともに審査会場は京都を予定しております。

応募条件
・男性のみ
・稽古、本番の全日程参加可能な方
・2016 年 3 月以降、国内および海外ツアーが入った場合、 最優先できる方

応募方法  ※4月 3日(金)必着
以下のものを下記住所までご郵送ください。※書式自由
プロフィール、写真 2 枚(顔/全身)、志望動機(400字以内)、氏名、年齢、住所、電話番号、メールアドレス(PC および携帯電話)
※第二次審査の日程のうち NG がある場合はお書き添えください。
※書類審査の結果は4月10日(金)までにご連絡いたします。

お申し込み・お問い合せ先
〒150-0013  東京都渋谷区恵比寿2-16-17-1F プリコグ  チェルフィッチュオーディション募集係
TEL:03-6825-1223 FAX :03-5795-2602  MAIL : info(アットマーク)precog-jp.net

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 10:45 | TrackBack

2015年03月02日

【参加者募集】文化庁/ゴーチ・ブラザーズ「「いま、アートとアートマネジメントを問う」シンポジウム ~新しい創造と公共性を担うリーダーシップ~」03/05-06青少年オリンピックセンター・センター棟

 ゴーチ・ブラザーズと文化庁が海外からのゲストを迎え、アートとアートマネジメントをテーマにしたシンポジウムとワークショップを開催されます。私が所属しているON-PAMの会員提案企画でもあります。詳細は公式サイトでご確認ください。

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 特に若い制作者、アートマネジメントや制作を志す学生にもお薦めだそうですので、お時間のある方はぜひご参加下さい。本日3/2(月)締め切りです。

 [日程]2015年3月5日(木)、6日(金) 14:00~19:00(開場13:30)
 <1日目(3月5日)シンポジウム> 定員 60人
 <2日目(3月6日)ワークショップ> 定員 30人
  パネリスト、ファシリテーター:Ben Walmsley Lorna Duguid 中山夏織 伊藤達哉

 [会場]青少年オリンピックセンター・センター棟
 [参加費]一般:1,000円/学生:500円(シンポジウム、ワークショップ共に)
 [〆切]3月2日(月)まで(メールのみ)

Posted by shinobu at 15:24 | TrackBack