母と一緒に映画館で見るのが習慣になっているナショナル・シアター・ライヴ。イギリスの最高峰の演劇を日本にいながら何作も観られて、もう、感謝感激。昨年から始まって今年も継続されて嬉しい限り。
これまでに私が見たのは『フランケンシュタイン』Aバージョン&Bバージョン、『コリオレイナス』、『ザ・オーディエンス』、『リア王』、『ハムレット』、『オセロ』。
『欲望という名の電車』は1947年初演、米国劇作家テネシー・ウィリアムズの傑作戯曲。上映時間は3時間35分(途中約15分の休憩を含む)。全く長く感じなかったです。途中休憩後にこの作品を製作したヤング・ヴィック・シアターの舞台裏を紹介する映像があります。
TOHOシネマズ 日本橋にて追加上映が決定したとのこと。3/12(木)19:20~22:55です。他の劇場は3/11(水)まで。私は3/9(月)に観たのですが満席でした。
ナショナル・シアター・ライヴの感想として必ずひとこと目に書くことなんですが、とにかく、俳優の演技がうまい。下手な人が、いない。ブランチ役のジリアン・アンダーソンさんはこの作品でローレンス・オリヴィエ賞主演女優賞にノミネートされたそうですが、納得の名演技だったと思います。
3/6から始まった英国ナショナルシアターライヴヴューイング「欲望という名の電車」を川崎の映画館で見た。場内すいている。もしも私が高校演劇部の顧問なら「先生が自腹を切るから」と、部員全員に強制鑑賞させる。演劇の教科書に指定したい舞台。若者よ、ここから演劇のセンスを学べ、いや、盗め。
— うにたもみいち (@momiichi) 2015, 3月 7
物語は原作どおりで設定は現代。全方位を客席が囲むシャープな舞台美術で、ぐるぐると回転します。具象と抽象のバランスが見事。選曲、効果音のセンスも抜群。衣装も的確、そして美しい。日本の首都圏で上演されている日本人によるストレート・プレイと比べると、洗練度は数段上だと言っていいのではないでしょうか(洗練さと面白さが比例するわけではないし、優劣や良し悪しを決めるものでもないと思っています)。ナショナル・シアター・ライヴは必見だと思います。
『欲望~』の舞台は数作観ていますが、気づいていなかったことが沢山ありました…。やはりブランチの長いセリフにヒントがあるんですよね。そして彼女の周囲の人々の、彼女に対する態度、視線などからわかることもあります。
これさっき見つけてほわっ!?てなった!欲望という名の電車、前日譚的?ショートフィルム…!
GuardianCulture: The Departure: a short film starring Gillian Anderson: https://t.co/3Zqz282QQJ
— primula87 (@primula87_tmblr) 2015, 3月 12
ここからネタバレします。
ブランチは16歳の時に出会って駆け落ちした詩人のアランが同性愛者だと知ってしまい、一緒にダンスを踊っている最中に「男同士で…汚らわしい」と囁いた。その後すぐにアランはピストル自殺をしてしまう。最愛の人に裏切られ、その人を自分のせいで死なせてしまったブランチは、見知らぬ男性と肉体関係を持つことで自尊心を保つようになる。アランとの最後のダンスの時に流れていたポルカが、彼女の耳から離れない。
両親や親せきの介護に明け暮れ、先祖代々受け継いできたベルリーブの土地も家も何もかも失い、ローレルの安ホテルを根城に売春をするようになったブランチは、教師でありながら17歳の少年と関係を持ったことがバレて、ローレル市長に「市から出ていけ」と言われ、ニューオーリンズにある妹ステラの家に転がり込んだ。そして数か月後、妹の夫スタンリーに“正体”がバレて、「ローレル行きのバスに乗って火曜日にこの家から出ていけ」と最後通告される。新しい恋人ミッチもスタンリーからブランチの過去を聞いて彼女を捨てた。スタンリーに犯されたブランチは正気を失い、精神病院から迎えが来る。
排斥の話だったんだなと初めて気づきました。同性愛者(アラン)、売春婦(ブランチ)を普通の人間として扱わず排除したり、乱暴者(スタンリー)をバカにしたり。
以前に観た『欲望~』では、最後にスタンリーの家を出ていく場面で、ブランチはとてもきれいな洋服を着ていました。でも今作では、はみ出た口紅の跡が大々的に頬に伸びて残っており、頭からシャワーを被って、きれいに巻いていたカールが全部取れてひどい髪型でした。彼女がボロボロになってしまったこと、いえ、彼女の真実の姿が最後に暴露されたようでした。
Tennessee Williams's "A Streetcar Named Desire"
作=テネシー・ウィリアムズ 演出=ベネディクト・アンドリュース
出演:ジリアン・アンダーソン/ベン・フォスター/ヴァネッサ・カービー ほか
料金/一般3,000円、学生2,500円
http://www.ntlive.jp
https://www.facebook.com/ntlivejp
http://ntlive.nationaltheatre.org.uk/productions/ntlout7-a-streetcar-named-desire
http://www.theaterguide.co.jp/theater_news/2014/12/25.php
http://www.ilaboyou.jp/text/text_desire01.html
http://enterstage.jp/column/2015/03/002119.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。