漫画の舞台化は定着していますが、世界的に有名なスタッフによる日本製創作ミュージカルの新作で、夏には韓国で韓国人キャスト版が上演されるのは、もしかしたら初めてのことなのでは?(本当のところは知りません、ごめんなさい)。演出の栗山民也さんは『MA』をドイツで、『スリル・ミー』を韓国で上演されていますよね。幾年もの実績があってこその、今回の世界初演なんでしょうね。
原作大好きだったけどほとんど忘れてたので(笑)、ストーリーを楽しみました。やっぱり面白いですねぇ『デスノート』!夜神月役はダブルキャストで、私が拝見したのは浦井健治さんの回です。上演時間は約3時間弱、途中休憩20分とカーテンコールを含む。
⇒CoRich舞台芸術!『デスノート The Musical』
≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
大場つぐみ原作、小畑健作画による漫画作品
『DEATHNOTE』がついにミュージカル化!
2003年から2006年にかけて集英社の雑誌『週刊少年ジャンプ』に連載された『DEATHNOTE』
死神のノートである「デスノート」を手にした
主人公・夜神月の物語を描いた作品。
2006年には映画化とアニメ化もされ、
国内外での累計発行部数は3000万部を超えている。
初となるミュージカル版では、ブロードウェイミュージカル
『ジキル&ハイド』などの代表作で知られる作曲家
フランク・ワイルドホーンが作曲を担当。
演出は2012年に紫綬褒章を受章し、
これまでに数々の演劇賞に輝いている栗山民也が手掛ける。
超豪華キャスト・スタッフ陣で贈る日本発ミュージカル!
≪ここまで≫
現代日本をまざまざと見せつけられたように思いました。パンフレットのキャスト・インタビュー等でも語られているとおり、ごく普通の高校生がデスノートという超お手軽な殺人兵器を手に入れたことで変わっていく…という側面がクローズ・アップされ、主人公の月(ライト・浦井健治)の薄っぺらい正義感と虚栄心による連続殺人(つまりテロ)に翻弄される市井の人々の恐怖、怒り、葛藤が丁寧に描かれます。ある記事に「ハートウォーミングな物語」と書かれていました。少年誌に連載されていた原作漫画は頭脳戦やトリックに驚嘆して楽しみましたが、ミュージカルは人間ドラマの部分が抽出、拡大されたようです。
↓私の本棚より原作漫画全巻。右端は英語版です。
ライトと名探偵L(エル・小池徹平)が対決するデュエットが何度かあって、スリリングで見応えがありました。死神リューク役の吉田鋼太郎さんは大きく見えました。一人で大劇場の空間を背負って、観客と劇世界を有機的につなげる役割を果たしてくださっているように思いました。
ミュージカルは門外漢なので恥ずかしながら専門的なことはよくわからないのですが、曲が終わるごとにプツプツと途切れてしまうように感じることが少なくなく、畳みかけるようなスピード感はあまり得られなかったですね。開幕して間もないので、これからより良くなっていくのかもしれません。観客の方を向いてじっと立ったまま歌う場面も多く、ちょっと物足りなかったです。後は、もう、日本では仕方がないことなのかもしれないんですが、メインキャストの中に演技や歌がそれほど上手じゃない人がいると気持ちが冷めてしまいます。こればっかりは慣れることは難しいですねぇ…。
韓国版が観たくなっちゃったなぁ~。韓国のミュージカル俳優は歌唱力も演技力もあり、創作ミュージカルも盛んです。ただ、ミュージカル俳優ではなくK-POPスターが出演する公演も多いんですよね。『デスノート』韓国キャスト版のエル役は元・東方神起のキム・ジュンスさんだそうです。
「2015 뮤지컬 '데스노트' 스팟 공개!」
ここからネタバレします。
冒頭は学校の教室の場面で、いきなり「法とは、正義とは何か」という大きな話が始まり驚きました。これがハマるのはミュージカルならではなんでしょうね。
ミュージカル「デスノート」。舞台化するならミュージカルでという方針に納得。いきなり法とは、正義とはという命題を突きつけるのは、お芝居だと難しいが歌と音楽があれば可能と。現代、だった。吉田鋼太郎さんが盛り上げてくれていた。韓国版観たい。 pic.twitter.com/YKrhYVAMxb
— 高野しのぶ (@shinorev) 2015, 4月 8
「凶悪犯罪者なら殺してもいい」「僕が新世界の神だ」とか言いだす奴ってマジで寒いですよね…。ライトはそれを実際にやってしまうから怖い。頭脳明晰、スポーツ万能でも頭はおかしい、というか馬鹿で愚かです。漫画ではライトをそういう風には見ていなかったので、このミュージカルによって気づかされたように思います。名声という甘い蜜に酔い、負けず嫌いで幼稚ゆえに蛮行を重ねていく東京の高校生。この浅はかさはよく知っている。すなわち私たちだよねと思いました。現代服でじっと立ってるだけの何人もの俳優が、そのまま日本人を表しているように見えて、姿のか弱さ、か細さもまた都会の脆弱さ、薄っぺらさと重なりました。
ライトの犯行は徐々にエスカレートしていき、FBIの捜査官10人を殺した時に、ある飽和点を超えたのだと思います。その時の浦井さんの演技が良かったです。ダイジェスト動画にも映ってます。最後は原作通り、ライトがものすごく無様に死に絶えました。みっともなく叫んで醜態をさらす演技も印象に残りました。あれぐらい振り幅広く心も体も動かす演技が、他のキャストでも観られたらなぁと思いました。
結末としてはいわば反対かもしれないけれど、浦沢直樹さんの漫画「MONSTER」を思い出しました。
そうだ、ライトとエルのプチ“テニミュ”場面が楽しかった!(笑)
I think Ryuk is going to love this musical! After all, the entire show was written on an apple! Just sayin'! pic.twitter.com/PCuRNfDYjt
— ivan menchell (@ivanmenchell) 2015, 4月 4
↓(2015/12/20加筆)
アメリカの演劇大手サイトbroadway worldで韓国版ミュージカル『デスノート』のホン・グァンホさんの夜神月のミュージックビデオが紹介されてました。浦井さん柿澤さんの月とは同じ曲でも歌い方が違ってて驚きました。 https://t.co/x4atBoZyzJ
— 大原 薫 Kaoru Ohara (@theresonlyhere) 2015, 6月 1
≪東京、大阪、愛知≫
【出演】夜神月:浦井健治(Wキャスト) 夜神月:柿澤勇人(Wキャスト) Lエル:小池徹平 弥海砂:唯月ふうか 夜神粧裕:前島亜美(SUPER★GiRLS) 死神レム:濱田めぐみ 死神リューク:吉田鋼太郎 夜神総一郎:鹿賀丈史 安崎求、松原剛志、麻田キョウヤ、上野聖太、岡田誠、木内健人、坂元宏旬、辰巳智秋、俵和也、遠山裕介、西野誠、安福毅、井上陽子、今泉ゆか、大月さゆ、小此木まり、河合篤子、樺島麻美、栗山絵美、森実友紀、吉田玲菜
原作:「DEATH NOTE」(集英社・ジャンプコミックス) 作曲:フランク・ワイルドホーン 歌詞:ジャック・マーフィー 脚本:アイヴァン・メンチェル 翻訳:徐加世子 訳詞:高橋亜子 演出:栗山民也 音楽監督:ジェイソン・ホーランド 音楽監督・指揮:塩田明弘 美術:二村周作 照明:勝柴次朗 音響:山本浩一 衣裳:有村淳 ヘアメイク:鎌田直樹 映像:上田大樹 振付:田井中智子 歌唱指導:ちあきしん 演出助手:豊田めぐみ 舞台監督:加藤高 主催:日本テレビ ホリプロ (c)大場つぐみ・小畑健/集英社
【休演日】4/9,16,23【発売日】2014/12/13 S席 13,000円 A席 9,000円 B席 4,000円
http://deathnotethemusical.com/
https://www.facebook.com/deathnotethemusicaljp.official
https://tixee.tv/cp/deathnotethemusical/
http://hpot.jp/stage/deathnote
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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