4/26まで上演中の『ウィンズロウ・ボーイ』の舞台上で実施された演劇講座です。講師は早稲田大学講師で英米演劇/映画研究家の広川治さん。朗読をする俳優2名(山下カオリ、野坂弘)も出演する超~~~スペシャルな内容でした!!全体で約1時間30分。ちょうど大学の講義の時間でしょうか。
マンスリープロジェクトは毎月新国立劇場で開かれる無料(要申込)のイベントです。これが無料…!すごい!ヤバイ!素晴らしい企画をありがとうございました!
広川治さんの論文⇒「ラティガンを見る― テレンス・ラティガン主要 3 作品の映画化に探る<孤立>から<自立>までの道のり ―」
≪概要≫ 公式サイトより
20世紀のイギリス演劇を代表する劇作家の一人、テレンス・ラティガン(1911-77)。舞台も映画もテレビも、コメディもシリアスなドラマも、縦横無尽に活躍したラティガンの作風をスライドやショート・リーディングを交えて紹介します。
ショート・リーディングには演劇研修所修了生が出演!
≪ここまで≫
プロジェクターで白い大きなスクリーンにPCの画面を映写し、スライド・ショーを見せてくださいます。いわゆるPowerPointのプレゼンの拡張版でしょうか。音楽と朗読を挿入し、時事ユーモアも交えて飽きさせない、すごく面白い講座でした。昔の舞台写真や映画の一場面の画像を次々と見せながら、ラティガン作品の特徴、魅力を教えてくださいます。彼の人生の幸福と不幸についても、情感たっぷりに伝えてくださって、まるで1つの演劇作品のような、濃厚な1時間半でした。だから一切メモを取る気になれず…没頭しました。内容充実の資料もいただけたので嬉しい限りです。
過去に日本で上演されたラティガン作品もじゃんじゃか紹介してくださって、懐かしく、ありがたく思い出しました。最後にショート・リーディングされた『深く青い海』(The Deep Blue Sea, 1952)、観たいな~。昔観た『愛を称えて(In Praise of Love, 1973)』も観たい~。カンバーバッチさんが2010年に出演して好評だったという『ダンスの後で(After the Dance, 1939)』も観たい!誰か上演してくださいっ!!!
ここからネタバレします。
冒頭でタバコ片手に写真に写っている優雅な30代のラティガンを紹介し、同じくタバコ愛好家らしいノエル・カワード、テネシー・ウィリアムズ、オスカー・ワイルドのモノクロ写真も、タバコつながりで紹介。後半で、彼らが皆、同性愛者であると明かします。ほわ~お見事!ラティガン戯曲でよく描かれるバルコニーの場面をいくつか紹介した後、1956年に現れたジョン・オズボーン作『怒りを込めて振り返れ』の舞台が屋根裏であることを示し、英国の時代の変化ゆえ彼の作品が支持されなくなった経緯を説明。胸の内を明かせない孤独なラティガンが、自身の思いを戯曲に託していたことも、あらすじやセリフを詳しく紹介してくださるおかげで噛みしめることができました。
ウィットに富んだジョークもとっても面白かったです♪
広川:NINAGAWAシェイクスピアという言葉がありますが、SUZUKIラティガンもありますよね。
広川:この女性の画像は私による捏造ですが、STAP細胞じゃないですから!エドナおばさんは存在します!
※「エドナおばさん」とはラティガンが観客として想定した架空の人物だそうです。
朗読をされた山下カオリさん、野坂弘さんは2人とも新国立劇場演劇研修所の7期修了生。奇をてらうことなく登場人物を素直に表現するのが修了生の良いところだと私は思います。今回も登場人物であることを最優先する演技で、物語を自然に立ち上げてくださいました。山下さんは落ち着いていらして、しっとりとした色香が漂う大人の女性になられたように思いました。野坂さんは常に掴みバッチリ。遠慮して引け腰にならず、堂々と前に出ていく、勇気を持って飛び込んでいく演技にリアリティを感じ、引き込まれます。
講師:広川治(英米演劇/映画研究家・早稲田大学講師)
出演:山下カオリ 野坂弘(2人とも新国立劇場演劇研修所7期修了生)
ショート・リーディング『深く青い海』」
エルトン夫人/ヘスター:山下カオリ
フィリップ/エルトン夫人/サー・ウィリアム・コリヤー/ミラー氏:野坂弘
参加費:無料 (要申込)
http://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/150310_006411.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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