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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2015年04月21日

Bunkamura『禁断の裸体-Toda Nudez Será Castigada-』04/04-25 Bunkamuraシアターコクーン 

 三浦大輔さん(ポツドール)がシアターコクーンで内野聖陽さんと寺島しのぶさんと演出、というだけでヒリヒリ。さらにこの宣伝ビジュアルですからね~。メルマガでもご紹介した通り「観るっきゃない!」と思っておりました。そして千秋楽間際になってようやく劇場へ。

 真っ昼間(平日マチネ)に見るもんじゃないのかも…という不安は杞憂でした。エッチ過ぎる、でも、面白すぎる!!

 『禁断の裸体』は1973年に映画化もされているブラジル戯曲なんですね(その映画はベルリン映画祭銀の熊賞などを受賞)。性欲に焦点を当てて人間の生態を露わにしてきた三浦さんと、戯曲との相性がぴったり。大劇場の娯楽作としても大成功していると思いました。抽象と具象がうまくミックスされた舞台美術も見事。俳優の“体を張った演技”にも感謝!皆さん、とっても魅力的でした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『禁断の裸体

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
帰宅したエルクラーノは、ジェニーが残したカセットテープを聞き始める。
その告白から物語は遡っていく…。

エルクラーノは妻の死後、息子であるセルジーニョと彼を溺愛する3人のおばたちと共に暮らしていた。おばたちはエルクラーノが妻の死を乗り越えられていないことを心配し、彼の弟であるパトリーシオに神父に相談するように勧めるが、彼は神父さまのところへは行かず、馴染みの娼婦、ジェニーのところへ行き、エルクラーノと関係を持つよう持ちかけ、彼女の裸の写真を持って帰る。
弟の言うことに憤怒するエルクラーノだったが、写真を見て心を乱し、泥酔状態でジェニーを訪ね、そこで3日間ともに過ごしてしまうが、彼に心を奪われたジェニーを振り払って、自分の日常へと帰ろうとする。
その後、エルクラーノはジェニーにだんだんと想いを寄せるが、彼女が売春婦であることや、妻の死後に息子のセルジーニョに「二度と女性と関係を持たない」と約束したことで、もう一歩を踏み出すことができない。
パトリーシオはエルクラーノへの憎悪から、ジェニーに「私ともう一度関係を持ちたいのなら結婚して」と言うようにと助言するが―。
母親の死によって歪んだ父子関係、売春婦と結婚するための嘘と計画 、そして家族を襲う悲劇とは―。
 ≪ここまで≫

 大人の男女(内野聖陽、寺島しのぶ)の性愛が生々しく描かれますが、兄弟(内野聖陽、池内博之)の確執、父(内野聖陽)と息子(野村周平)のすれ違いなどの家族の問題をはじめ、差別、宗教、禁忌(タブー)、排外主義といった、現代にも通じる大きなテーマもめいっぱい盛り込まれていて、すごく面白い戯曲でした。これを娯楽作として大劇場に立ち上がらせた三浦さんは、すごい演出家だと思いました。

 もっと詳しく感想を書きたいのですが、余裕がありません。残念。

 ここからネタバレします。

 土の匂いを想像させる壁や階段でできた3階建ての舞台美術は、全体としては抽象だけれど出てくる部屋や家具は具象。そして衣装が現代風です。寺島しのぶさんの衣装は特に、ジェニーの立場、環境、そして役割や心情も表していて素晴らしいと思いました。もちろん彼女のお姿も!上手からはジェニーのサロン(売春宿)、下手からはエルクラーノとジェニーの新居が出てくるという、大がかりな場面転換にうっとり。10,000円のチケットが高くないと思いました。プロジェクション・マッピングもやり過ぎにならず効果的。特に最後、ジェニーの声が録音されたテープの機械が宙に浮かび、舞台全体に彼女(?)の裸体が映し出された時は、少し興奮。機械が右の乳房のあたりで止まり、青紫色にじんわりと光るのも乳がんを連想させてくれました。音楽は南米ムードを保ちながら、色んな音を混ぜる工夫を凝らしたものも多く、鳴る度に楽しかったです。

 どんでん返しは息子がゲイだったこと(留置所で犯されて自分がゲイだったことに目覚めた/インポテンツの理由も判明)。子ども、恐るべし。

≪東京、大阪≫
シアターコクーン・オンレパートリー2015
出演:内野聖陽、寺島しのぶ、池内博之、野村周平、米村亮太朗、古澤裕介、榊原毅、宍戸美和公、池谷のぶえ、木野花
作:ネルソン・ロドリゲス 上演台本・演出:三浦大輔 翻訳・ドラマターグ:広田敦郎 美術:田中敏恵 照明:大島祐夫 音響:中村嘉宏 衣裳:原まさみ ヘアメイク:佐藤裕子 映像:&fiction 演出助手:西祐子 舞台監督:足立充章 翻訳協力:林田富美 宣伝広報:ディップス・プラネット 協力:ブラジル大使館 [主催/企画・製作]Bunkamura
【休演日】4/6,13,20【発売日】2015/02/21 S・\10,000 A・\8,000 コクーンシート・\5,000(税込) ※未就学児童のご入場はご遠慮いただいております。
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/15_kindan/index.html
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/15_kindan.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2015年04月21日 22:27 | TrackBack (0)